KAC20228 “私だけのヒーロー”

 -財界天皇- 猫田 啓三けいぞう 享年89歳


父親が、日野啓三の愛読者であったことから、その名を付けられたという


その政治的手腕は、とう小平しょうへいを『唐辛子風味のナポレオン』とヤジり、

こう沢民 たくとう錦濤きんとう政権の影の立役者として、名をせたほどの “差し手”だった


 その大国から甘い汁をみ、日本の経済成長を増長させ、

黒い繋がりを巧みに操り、歴代総理や天皇家を思い道理に動かせたという



 そんな猫田が、吾人と知り合ったのは、意外な場所でした



『吉夫家1号店』 すき焼き丼のチェーン店 (吉楽きらく 芳夫よしお 創業)


「日本人なら、『すき焼き』を食べよう!

 苦しいときも、悲しい時も、楽しい時も、嬉しいときも!」


という、フレーズで御馴染みの『吉夫家1号店』 (大事なので、2度も言いました)



 その店は、猫田さんのお気に入りのひとつ―――



 あぶない取引に、よく使っていた場所だったそうです



 猫田が『すき焼き丼』に紅ショウガを添えようとしたときに、

吾人が相席で「それは 何か? 」と訊ねたのが、切っ掛けでしたね


「おぉ、これか? 関西で有名な ショウガの梅酢漬けぜよ

 関東では、まんだ、あまり知られてないからのぉ」


 猫田は、豪快な笑顔を吾人に向けてきましたな


「食欲をそそられる色ですな」


「おッ! 分かってくれるか?

 ここの店主に置くように勧めたんは、なんせ、おいぜよ!」


 そう言って、握手を求めてきましたな……


あの日が、まるで昨日の事のように思い起こせますよ


このときより、猫田さんは “私だけの英雄ヒーロー” になりました―――



 まさか――


こんな老いぼれた2人が、あのような事件に巻き込まれてしまうとは……


苦労なんぞ、したくはなかったのですがねぇ……



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