気持ち良くして

高山小石

気持ちよくして

 不思議な装飾で飾られた部屋の大きなベッドの上で、若い二人が、正座で向かい合って固まっていた。


「き、緊張するね」


「そう、だね」


 うっわあぁ。

 せっかくここまできたのに、緊張で動けないとか意味わからん。

 早くシたいけど、やっぱりここはキスから、いやまずは服を……って、どうやって脱がすんだ?


 え、ちょっと、どうしたらいいの?

 これって私から動いてもいいものなの?

 でも、女子から積極的に行動したらドン引きされちゃうかもしれないし……。


 じりじりと、まるで格闘技の試合で相手との間合いをはかっているかのような緊張感が続く。


 ええい、もう、なるようになれだ!


「あっ」


 やぁん。これって壁ドン的なベッドドン?

 ベッドに押し倒されて高まるテンションに頬を染める。


 かたや、押し倒した方は冷や汗が滝のように流れていた。

 ここまではいいんだ。問題はこっからだよ。これからどうすればいいんだよ!?


 あまりの緊張に押しつぶされそうになっているところに、するりと長い腕が下から伸びてきて、ぎゅっと抱きしめられたかと思ったら、上下が反転していた。


「え」


「うふふ。もう我慢できないわ」


 目を丸くして見上げてくる可愛い鼻にちゅっと唇を落とすと、驚きで薄く開いた口内をかぶりつくように味わいだした。


 腕の中、驚いた様子でなにか話したそうに身じろいでいるけれども、今は聞いてあげられるような余裕はない。

 緊張した様子がとても可愛くて、さっきから襲いかかりたくてたまらなかったのだ。


 すっかりぐったりした相手からゆっくりと唇を離して、ペロリと赤い舌で口のまわりを舐めたところで我に返った。


「あーあ。やっちゃった。また不合格ね」


 初めての相手だからうまくできるかもって思ったんだけど。やっぱり、従順な女の子みたいなフリって難しいわぁ。

 この試験だけはどう頑張っても私には無理かも。

 まぁひとつくらい苦手なのがあってもいいわよね。試験は他にもいっぱいあるんだし。


 サキュバスの試験にはいくつもの種類があり、どの組み合わせでもいいから二刀流以上になれば合格なのだ。


「攻める系は制覇したから、今度は受ける系を極めたかったんだけどなぁ」

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気持ち良くして 高山小石 @takayama_koishi

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