第6話 逸る気持ち

「みっくん、おはよう。」

「体調は大丈夫そうか?」

「2人とも、来てくれてありがとな!」

次の日には月夜の体調もよくなり、陽太が彼女と談話室で話をしていた。

すると彼のバイト仲間達がお見舞いにやって来たのだ。


「あれ、横の子は?」

「病院で仲良くなった月ちゃんって言うんだ。」

「えっと…黒瀬月夜です、はじめまして。」

彼らは横に座る女性を見ては不思議そうに訊ねる。

月夜は紹介されると少し恥ずかしそうに挨拶をした。


「一人だと心細いかと思ったけど、黒瀬さんがいるなら大丈夫そうだね!」

「皆待ってるから、ゆっくり治して戻ってこいよ!」

「おう!」

2人は彼女に挨拶を返して、彼の様子を見ればホッとしたように微笑む。

そして学校であったことやバイト先でのことを陽太と談笑する。

月夜も話の輪に交じろうとするも、自身の知らないことばかりでただ聞いていることしか出来なかった。

それに心なしか少し寂しそうだ。


「あ、いたいた!三倉くん、リハビリ始めるよ。」

「もうそんな時間か。」

「じゃあうちらはそろそろ帰るね。」

「リハビリ頑張れよ!」

3人が楽しそうに話をしていると看護師がやってきてリハビリの時間を告げる。

彼らは邪魔になってはいけないと思ったのか、それぞれ陽太へ声をかけると病院を去っていった。


「邪魔しちゃってごめんなさいね。」

「いえ、俺も頑張らないと!」

「あの…私も暇だからついて行っていい?」

「えぇ、いいわよ。」

看護師は立ち去る2人を見て申し訳なさそうに話す。

彼女の言葉に陽太は首をふると、彼らの話に感化されたのかやる気がみなぎっている様子だ。

月夜はリハビリに行くことを知り、自身も行きたいと看護師に申し出た。

陽太のことを心配してのことだろうか?


3人はリハビリステーションへ向かうと、歩行練習用の平行棒の前まできた。

看護師は作業療法士に陽太をお願いをして、また仕事へ戻っていく。

「さっそく始めようか。」

「はい!」

「まずはゆっくり立ち上がってみて。」

言われたように立ち上がろうとするも、うまく行かず少しお尻を浮かせることはできるが、また車椅子へ座ってしまう。


「三倉くん、最初は無理しないでいいからね。」

療法士が声をかけるが、陽太は立ち上がることに必死のようだ。

少しでも早く学校やバイト先に復帰したいのだろう。

しかし、気持ちは前向きでも体がついていかなければ意味がない。

彼はそのことに気づいていないようだった。






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