第13話 おとぎ話を超える夢の続き

かつて屋根裏部屋は物置だった。

しかしそう呼ぶには物が少なすぎて、

いつか二人だけの新しい部屋にしたいと

幼い私たちは胸を膨らませた。


ギシギシとはしご段をきしませながら上がる。

そこは記憶の中そのものだった。

けれど全てが白い布を被って黙ったままだ。


時が止まっているの……?

いいえ、うっすらと積もった埃に気づけば、

二人して重ねるはずだった時間、

それを失った重さによろめきそうになる。


あの日のままだなんて、残酷ね。

なんだか怖いわ。

私の肩を抱き寄せた兄が囁く。

大丈夫だよ。

じっと待っていてくれたんだ。

僕らが置いてきぼりにされないようにね。


それから兄は大きく窓を開けた。

清々しい春の風が吹き込んでくる。

途端、埃が白い光になって舞い上がった。

私はエプロンで急いで顔を覆う。


ひどいわ。

これじゃあシンデレラも真っ青じゃない。

口を尖らせば兄が楽しそうに笑った。

いいじゃないか。

それだと、このあと幸せになるって決まってる。


肩をすくめた私は窓際の兄の隣に並び、

額と合わせてクスクスと笑いあった。


星を仰ごうか、花を見渡そうか。

新しい部屋に想いを馳せたあの日の

夢の続きをそっと、

けれど今度こそしっかり手繰り寄せれば、

あふれにあふれた喜びが

春の風の中にきらめくようだった。





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