第7話 北東の窓辺で待ちわびる

壁際に並んだ本たち。

そこからお気に入りの一冊を抜き出す。

離れゆく朝に持ち出したそれは、

またこうして仲間の元へ帰ってきた。


留守番の午後、北東に張り出した窓辺に腰掛ける。

クッションを背に、小さな二人なら座れた場所。

手に馴染んだページを無意識に繰る。

ここからは、丘をくる人がよく見えるのだ。


眠れぬ夜、大切な本を手に、

私は記憶の中のこの場所にいた。

大好きな人は、何度も何度も道をやってきた。

けれど、私の部屋の扉が開くことはなかった。


今、同じように歩いてきた彼は、ふと顔を上げた。

窓辺の私を見て、それはそれは嬉しそうに笑った。


本を置き、一呼吸のちに私は駆け出す。

もう夢なんかではない。

開かれる扉、待ちわびていた時間。

ただいまの声を聞くより先に、

温かいその胸に飛び込んだ。

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