第4話 虹色の誘惑
通り雨の後の虹。
誘われるように丘へと出かける。
年老いたドルイドの背のように
大きく曲がった木の影には
チロチロと音を立てる小さな泉があって、
私と兄は冷たい水に足を浸した。
気をつけないと。
柔らかくなった足の裏は切れやすいから。
兄が私を抱き上げて岩の上を歩き出す。
小さい頃にはできなかったこと。
くすぐったくて嬉しくてその首に腕を絡める。
ねえ、虹の麓まで行ってみる?
さあ、どうだろう。
気の無い返事に、
私は小さい頃のようなわがままを言う。
あの虹が欲しかったのに。
ニヤリと笑った兄が、
片手で器用に私を抱いたまま、
もう一方の手でポケットから取り出した何かを
私の唇に押し付けた。
懐かしい甘さが口いっぱいに広がった。
レインボーキャンディーは
フルーツミックスの
ジャーの中から目をつぶって引き当てると
その日は一日ラッキー続き。
失敗しては口をへの字に曲げる私に
いつだって兄は
キラキラしたその虹を取ってくれた。
今日はきっと素敵なことばかりね。
遠い日のように瞳を輝かせた私に、
兄がほんのりと笑いかけた。
そうだね、虹の麓まで行けるかもしれないな。
ベルガモットの香る首筋に、
私は膨らむ頬をそっと押し当てた。
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