第3話 週末のファイブオクロック

しゅうしゅうとケトルが騒ぎ出す。


呼ばれているよ、

読みかけの本から兄が顔を上げた。

刺繍する手を止めて立ち上がる。


兄と私と働き者のポットのために。

お気に入りの茶葉を白磁の奥へと忍ばせる。

たっぷりと熱湯を満たせば舞踏会の始まりだ。


もう少し、ダンスが終わるまでもうしばらくよ。

そうそう、

おどる12人のお姫さまが大好きだったね。

あら、そうだった? 私はいつだっていばら姫よ。

へえ、王子さまのキスがご所望かい?

いいえ、棘に抱かれたお城にゾクゾクするの。

それはまた、素敵な嗜好だね、

喉の奥で兄が笑った。


華やかなカシスの香りが鼻腔をくすぐる。

兄の選んでくれたカップに

湯気の上がる紅茶を注ぐ。


美味しい?

ああ、とっても。


窓の外、午後の陽はまだ沈まない。

お茶を飲んだら二人で散歩に出かけよう。

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