視線から始まる恋

katsumi

1話

「ちょっと嫌だな」


それが私の第1印象だった。決して悪い人には見えないのだけれどもいつも視線を感じる。でも、お話をすると面白い人だなって思うところもある。なんというか笑える。


 昔流行った言葉なんかを使っては私を笑わそうとしている。彼の名前は秋山君、同じ会社の部署にいる人だ。秋山君はときどきチラチラと私に視線を送る。正直そういうのが嫌だなって思うところはある。


「大丈夫?顔色悪くない?」


そう言って声をかけてくれたのは同じ部署の鈴木さん。彼にはいつも仕事で助けては貰ってはいるが私には何も恋愛的な感情はなさそうです。そしていつも通り仕事を終えると、秋山君から私に声をかけてきて食事に誘ってきた。


「もし良かったら来週、近くの喫茶店で良いので帰り道一緒にどう?」

どういうつもりだろう?私は少し考え、鈴木さんと一緒だったらという条件で承諾した。


そしてその日がやってきて喫茶店に入店した。

「今日はもういっぱい業務があって、疲れた~どう山口さんは?」


「私も疲れたかな」


「だよね、だいたいあの量の業務なんだよ本当わけわかめだよな!」


私は少し笑う。いつの時代の言葉だ?と思ってしまい、思わず吹いてしまいました普通の人と変わっている。


「おいおい、何だよそれ」


そう鈴木さんが言い、3人で笑い話も兼ねて終わった。私は全面的秋山君の事が嫌いというわけじゃない。ただある一定の距離は置いている感じかな。そして1時間後に店を出た。


しばらく経ったある日の事1つの事件が起きた。私が会社帰りに歩いていたら知らない男に声をかけられた。


「おっ!姉さん綺麗だね!なぁ少しでいいからどう?」


とんでもない男から声をかけられた。もちろん私は無視した。


「冷たいなぁ」


「すみません急ぎの予定があるので」


そう言って断った。でも続けてその男が言う。


「何時から?」


「いえ、本当にすみません」


私がそういうと、諦めずに男は話しかけてくる。

すると後ろから男性の声がした秋山君だ!


「何してるの?嫌がってるじゃないか」


「何だテメェ、関係ないだろ?」


「そういう訳にもいかねぇんだ知ってる人なんでな」


そう秋山君が言い返した。何かいつも私が知ってる秋山君じゃないみたい。私はすかさず後ろに下がった。

すると秋山君は私を守るように片手を横に伸ばしこう言った。


「とりあえずこの場はいいからここから離れて」


そう一瞬秋山君が相手から目をそらし、私に視線を向けた瞬間男はいきなり殴りかかってきた。


「バカが!」


そう言ってきて勢いよく秋山君に殴りかかってきた。しかし、その男は突然転んでうつ伏せになり手を地につけたのだ。なにがその間起きたのか私にはわからなかった。


「早く!」


そう秋山君に言われ、私はその場から走って去った。

しばらく走っていると私は息を切らし交番があったのでそこに行き、先程あった出来事を話した。すると警察官も一緒に現場へかけつけくれた。ところが現場にはその男と秋山君がいない。


そう誰もいなかったのだ。まさか場所を変えたの?でも周辺を見てもその様子はなくまたそう言った声も聞こえない。その後、私は交番に行き少しお話したあと帰った。いったい何が‥秋山君に怪我はなかったのだろうか。私は心配して不安ながらも明日聞いてみることにした。


次の日会社ではいつも通りの時間に秋山君が出勤してきた。私はすぐさま駆けつけた。


「昨日はありがとうございました怪我は?」


すると秋山君はこう言った。


「怪我?ないよ。ほら顔にも体にも傷ないだろ?大丈夫!大丈夫!そんなことより山口さんは?」


「私はないよでもなんで?」


「いーのいーのそんなの気にしなくて、とりあえずお互い怪我がなかったからそれだけで良かったじゃん!」


「あっ‥うん‥」


でも、私は気になった。いったい何が起こったのか‥あの状況なら殴り合いの喧嘩になるはずなのに。そして定時刻になり私は秋山君に訪ねた。


「えーっ、いいよそんなこと知らなくてもだってお互い怪我なかったわけだし」


と、言いそれ以上は何も語ろうとはしなかった。私もまたそれ以上は聞かなかった。その後は二人で一緒に行動する日が続いた。話しているうちになぜ視線を送ったかという話にもなった。


どうやら私の事をずっと気になっていたという事が分かった。食事に誘ったのも私と一緒にいたかったからみたいだ。でもずっと視線を送るというその行為はやっぱり嫌なので直すように言いました。


しかし私はあの日の事が気になっていた。事の事情を秋山君から語られない以上鈴木さんが、もしかして何か知っているのではないかと思い聞いてみた。そうしたら鈴木さんの口から驚愕の事実を知ることになる。


実はあの後、私に話しかけてきた男が転んだ理由は秋山君が避けてとっさに足をかけて転ばせたらしい。そして男と秋山君が二人きりになった時、その男に対して秋山君はこう言ったそうだ。


「まだやる?」


と、一言い男は慄然りつぜんとし、無言のまま立ち去ったらしい。それを聞いてからというものの私は見る目が変わるようになり、何度か食事を重ねていくうちにいつの間にか恋をしてしまった。視線から始まる恋はここからがスタートのようだ。

               ー完ー

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

視線から始まる恋 katsumi @katsumi2003

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ