家に帰ると、妹が怪物になって人を食べていた……。冒頭からショッキングなシーンで幕を開けるダークファンタジーです。
敵は誰なのか。そもそも自分とは何なのか。実存と本質についての命題を突きつけられているようで、ワクワクしました。
作者様は、哲学や人間の思考の傾向について、深い理解がおありなのだろうなと感じます。
非常に高度な内容なのに、軽快な表現や親近感の持てる登場人物たちのおかげで、サクサク読むことができました。そして、表題の意味が分かったとき、そのセンスに脱帽しました。
また、作中に登場するアナグラムによって伏線が見事に回収される部分があるのですが、凄くテンションが上がりました。細部に渡って作り込まれている感が凄いです。
頭の中に鮮やかな映像が浮かんでくるシーンが多くて、中盤からノンストップで楽しく読了しました。
作者様のもう一つの物語『N/A』も併せて読むと、さらに興味が深まります。
ご縁がありこの物語に出会いました。読み終えましたので、レビューさせていただきます。
本作は謎のプロローグから始まり、そして家に帰った主人公の妹が化け物になっていたところから始まるダークファンタジーです。その化け物の名前は蛇蝎(だかつ)。人類の敵。そしてそれに立ち向かうのが討伐隊(レジスタンス)に属した主人公が仲間と共に蛇蝎と戦っていくという、ストーリーが示されます。
しかし、それだけでは終わりません。物語が進むと、倒すべき敵とされていた蛇蝎についての違和感を覚え始めます。その違和感は徐々に大きくなり、やがて物語は、私の予想から外れていきました。二転三転する展開。信じることが真実になってしまう現実。主人公とはなんだ。夢とは、現実とは、物語とは。
各所に散りばめられたアナグラムから、やがて世界の「真実」が浮き彫りになっていきます。彼は一体、どんな世界に生きていたというのか。蛇蝎とは。そして本当の敵とは――それを知るのはもちろん、本編の中で。
未だ醒めぬ夢にも、夜明けが訪れる物語。他の皆様も是非読んでみてください。