第10話 2人での初ベッドイン

 部屋に着くとランプに魔力を込めて明かりを灯した。


 部屋には小さな机と椅子、それとWベッドが1つだけあった。


 取り敢えず着替えを持って湯浴み場にて湯浴みをする事にしたが、晃司は考え事をしていて、ベッドの事に気が回らなかった。


 この宿にはというより、殆どの宿には風呂がない。

 沐浴や湯浴みしかしないのが普通で、風呂屋は有るのにはあるのだが、かなり高いので財布が潤っている時しか行かないとの事だ。


 ラミィは晃司に魔石を渡すのを忘れていた。

 宿に泊まるのが初めての事と言っていたのと、ギルドにて検査したら魔力を持たないとの結果だたから渡さないとだったのだ。


 ラミィも僅かに魔力が有るが、魔法を自力では使えない。

 魔道具に魔力を込め、魔導具による魔法を1日に1、2発放つ程度の魔力量しかない。


 湯浴み場には魔道具があり、自前の魔石からの魔力か、本人の魔力のどちらかを使ってお湯を出す事になる。


 男女に別れており、また後で!となり各々脱衣場に入る。


 ラミィは桶に3回満たすのが精1杯で、半杯でまず体を流し、それから体を洗い、半杯を頭にかぶる。

 そして頭を洗い1杯を頭から掛け、残りをゆっくり体に掛けて終わる。


 晃司は沐浴場に入ったが、困った。

 お湯の出し方が分からないのだ。


 おっさんが1人入っていて体を洗っていたので教えてもらった。

 魔力持ちなら魔道具に手を触れると反応があると言われ、手を翳すと反応があった。

 あれっ?と思うが、教えてくれたおっちゃんも驚いていた。


「兄ちゃん凄いな。かなりの魔力持ちだな。こんなに持っているやつは初めて見たよ。少し貰ってもよいか?」


 お湯がダダ流れだったので、蛇口を閉めた。


「あっはい。どうぞ」


 1回の魔力チャージで最大お湯が10杯出るそうだが、余力がありそうだったのでおっちゃんとお互いにお湯を掛け合ったり、背中を洗い合っていた。


「いやぁ!こんなに沢山お湯を使ったのは初めてだな。兄ちゃんだったら風呂も行けるんじゃないか?」


「こちらこそ教えて頂きありがとうございました。ギルドで魔力無しって言われたんですけどね」


「どうせ壊れていたんだろうさ。それじゃあお先に」  


 その後晃司も出たが、入り口にはラミィが待っていた。


「遅かったですね?」


「魔道具の使い方を先に入っていた人に教えてもらって、沢山出せたからお湯を掛け合っていたんだ」

 

「魔法使いの方がいらしたんですね」


「いや、そのおっちゃんは魔石を使っていたよ」


「あっ!私、魔石を渡していなかったですね。その方にお湯を分けてもらったんですか?」


「どうやら俺にも魔力が有るらしくて、取り敢えず3回チャージしたな」


「えっ?私は3杯が限界ですよ?チャージを3回って、30杯分ですよ?」


「使った湯は確かにそれ位有ったかな」


「ひぇ~!す、凄いです」


 そんな話をしていたら部屋に着いた。


「あのう、ギルドでの検査結果って確か魔力無しでしたよね?」


「だね。なんだったんだろう?でも魔力の実感も使い方も分からないんだよね。おっちゃんもどうせ壊れていたんだろうって言っていたから、よくある事なのかもね。今度ギルドに行ったらエリーさんに聞いてみようか?」 


「私は魔道具に魔力を込める位しか使えないですけどね。攻撃魔法の魔道具は高いので…」


「僕が異世界人だからかな?」


「どういう事ですか?」

 

 晃司は掻い摘んで話していった。

 ただ、それ絡みでどうやら手配書が回っていて、ギルドにて見せられた手配書はまず間違いなく自分だと告げた。

 死に掛けたからか、黒髪だったのが真っ白に変わったと。

 それで手配書の人物とは違うと思われたと伝えた。


 ただ、晃司はあくびをしており、かなり疲れていた。


「疲れたからソロソロ寝たいな。ベッドが1つか。俺は床で寝るからラミィは布団で寝てね」


「駄目!命の恩人の晃司にそんな事をさせられない!私が床で寝るから!」


 お互い譲らなかった。だが、ラミィが別の提案をしてきた。


「晃司は私の事を襲ったりしないよね?」


「襲うならとうにしているさ。誓うよ!それに仲間を襲ったりしないって」


「うん。信じる。じゃあ襲わないのなら、一緒の布団で問題ないよね!」


 ラミィは真っ赤になりながら先に布団に入ると背中を向けた。


 晃司は頭がぐちゃぐちゃだった。しかも疲れが酷く、考えもまとまらない。女の子と一緒の布団に入るなんてど、ど、うしよう?やっちゃう?いや駄目だ!襲わないって約束したし!とオロオロしているとラミィが声を掛けてきた。


「どうかしたの?これから冒険者としてやっていくのならテントで1枚の毛布にくるまるとか有るんですよ。明日も何かしないと宿代もないんだから明日に備えて寝ましょう」


 そういうラミィもドキドキだった。約束してくれたけど、本当に大丈夫かな?と。背も高いし鍛えた体をしているようなので、本気で来られたらどうにもならないからだ。

 万が一の時は責任を取ってもらおうと開き直っていた。

 自分よりも遥かに強いし、良い人そうだ。それに晃司の強さなら、ちゃんと冒険者としてやっていれば女の1人や2人を養う位は余裕だろうと。


 晃司はラミィが堂々としているのでこの世界では普通の事なのか?エッチな事をするのには所作でもいるのかな?等と思いつつも眠くて仕方がなかった。


 そっと布団に入り背中を向けたが、同じ布団に入るのだから自分の背中が彼女の背中に触れる。

 気の所為かラミィの心臓がバクバクしている。

 勿論晃司もだ。


 やはり自分のだけじゃないと分かった。

 彼女もドキドキしているんだなと。


「おやすみ、ラミィ」 


 そのひと言を発すると、直に寝息を立てた為にラミィが唖然としていた。


「私も女の子なんですよ。お馬鹿さん」


 呟くとそっと晃司のおでこにキスをしてから寝るのであった。


・・・・

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