Vtuber family あたしの両親は有名なVtuber!?

荒音 ジャック

第1話・コラボ相手はとんでもない人だった……

・エメリオは語る

 あたしは今Vtuberをやっている……既に配信用の枠の準備が出来て、新作MMORPGのホーム画面になっているパソコンの前に座り、ヘッドセットを装着してゲームパッドを握っている。


 画面の右下に、どこかの高校の学生服を纏った銀髪ロングヘアの碧眼の美少女のあたしのアバターの上半身が表示されており、今の私と同じようにゲームパッドを握っていた。


 あたしの名前はエメリオ・ドイル……勿論、アバターの名前で本名ではない……通信会社グリモアアーカイブのVtuber部門『インデックス』の16期生のオーディションに応募して受かったあたしは、美少女高校生ライバーとして、活躍することになった。



 少し待っていると、画面にフレンドからの招待の通知が来たため、エメリオはそれを承諾すると、読み込みが始まる。


 読み込みが終わるとローディング画面から中世ファンタジーの世界の王都にありそうな噴水広場のフィールドに変わって、噴水の前にエメリオと同じ顔の白のジップパーカーを羽織ったセーラー服姿の美少女のエメリオのキャラクターがおり「エメリオ君! 今噴水広場のどこ?」とスカイプ通話で男性がエメリオに声をかけてきた。


 エメリオは男性に対して「噴水の前です! エモートで手を振りますね」と言って、エメリオのキャラクターが誰かを招くように右手を振り上げると、銀髪ショートヘアの青眼のシュッとしたクールな面持ちの黒のロングコートを纏った若い男のキャラクターがエメリオに近づいてきた。


「いたいた! じゃあそろそろ時間になるから始めようか!」


 そう言ってきた男性に対して、何かを思い出したエメリオは「すみません! 参歩(さんぽ)さんの立ち絵出すの忘れてました!」と言って慌てて、画面の左下に銀髪ショートヘアの青眼のシュッとしたクールな面持ちの茶色を基調としたチェック柄の探偵帽を被った茶色のロングコートを纏った男の立ち絵を表示した。


「慌てなくていいよ! まだあと10分はあるから!」


 参歩はそう言うと、エメリオは「すいません! コラボ配信が初めてなもので……」申し訳なさそうに謝ると、参歩は「配信開始前のツイートを忘れないようにな」と助言する。


エメリオ「よし! いつでもOKです!」


参歩「ツイートの準備はいいかな? 待機画面のチャット欄はどうなってる?」


エメリオの画面のチャット欄「開始10分前!」「インデックスの新人研修を受ける配信はここですか?」「エメリオちゃんの初コラボが楽しみで夜しか寝れなかったぜ!」


エメリオ「……凄く盛り上がってます!」


参歩の画面のチャット欄「待機! ヨシ!」「ステンバーイ! ステンドバイミー!」「ヒャッハー! 開始前についたぜ!」「新人に前作プレイヤーの年季の違いを見せつけられるのか?」「今回の新人研修も楽しみですな!」「毎年恒例の新人教育動画w」


参歩「こっちは相変わらず新人研修ネタで盛り上がってる」


エメリオ「新人研修?」


参歩「『インデックス』では新人がきたら必ず俺とコラボ配信をするのが通過儀礼みたいになってるんだ。多分君のマネージャーも社長に言われたから今日の配信のスケジュールを組んだんだろうね」


エメリオ「参歩さんって社長と仲がいいんですか?」


参歩「まあ、『インデックス』最後の1期生だからな。もう15年以上の付き合いだし……おっと時間だ」


 そして10分が経っていたこともあり、配信開始をして参歩から挨拶が始まる。


「皆さんおはこんばんにちは! インデックスの名探偵! 土手川(ひじてがわ) 参歩だ! 現在時刻PM20時! 今夜は新作MMORPG【ストライク・バッカーノ2ndImpact】をコラボ配信でやっていくぞ! それじゃあ、コラボの方は自己紹介の方をどうぞ!」


 参歩の挨拶から振られたエメリオはすうっと、息を吸って自己紹介を始めた。


「初めましての方は初めまして! インデックスの16期生! 新人美少女高校生ライバーの……エメリオ・ドイルです!」


 挨拶が済んで参歩は今回の動画の内容を口に出した。


「今回は討伐クエストとレイドでエメリオ君のレベルを10まで上げていくので張り切っていこう!」


 エメリオは「オー!」と気合を入れると参歩が「ところでエメリオ君はストライク・バッカーノシリーズはコレが初めてでいいんだったけ?」と確認するように尋ねる。


エメリオ「はい、ただ、前作の勉強をしているのでレベル10になってからのキャラクターのビルドとかも既に決まってます!」


 それを聞いた参歩は「よし、じゃあさっさとレベルと装備を整えようか!」と言って、エメリオと共にクエストへ向かった。


 クエストに関しては前作経験者である参歩のサポートもあって、初心者であるエメリオも苦戦する場面はあったものの、途中で倒れるということもなく。順調にレベル10になった。


「ヨシ! レベル10になったのでスキル獲得します!」


 開始時の噴水広場でエメリオはステータス画面を開いてスキルポイントを割り振ろうとすると、ビルド内容が気になった参歩が「ちなみに最終的にはどんなビルドにするんだい?」と尋ねる。


エメリオ「あたしのキャラクターのジョブが強化系スキルに特化した【レインフォーサー】なので最初は[スキル・ヘルスショット]によるHPオーバーチャージのゴリ押し戦法を主体にしてサブのジョブを獲得できるレベルになったら参歩さんのメインジョブである近接系スキルに特化した【ジャガーノート】を取ろうと思ってます」


 それを聞いた参歩は「……【ジャガーノート】取ったら[スキル・アンストッパブル]取る?」と尋ねると、エメリオは驚いた様子で「え? どうしてわかったんですか?」と質問で返すと参歩は「これでもサブのジョブをつけることが出来なかった前作から【ジャガーノート】を使ってるからね。ダメージ軽減と最大強化でスタンを無効にできる[スキル・アンストッパブル]は【レインフォーサー】の強化系スキルとシナジーがあるから、前作でもスキルを駆使した連携を使われると、このゲームで一番の火力を出せる【デモリッシャー】ですら止められない戦車と化すからな」と自身の経験を話す。


 そして、無事に収録が終わり「それでは今日はここまで! まったなぁ!」と参歩の締めで配信を切った。


 エメリオは配信を切ったのを確認すると参歩が「ちゃんと配信切った?」と尋ねてきたため、エメリオは「大丈夫です! 確認してあります」と答えると、参歩はこんなことを聞いてきた。


「ところで、かなり私的な話になるんだけどさ……エメリオ君のお母さんって『ランページ』で活躍してる人?」


・エメリオは語る。

 この時、私は驚きを隠せなかった……参歩さんの言う通り、あたしのお母さんは通信会社『パイプラインアクション』のVtuber部門『ランページ』で活躍しているライバーなんだけど、このことを知っている人はあたしとお母さんだけで、面接の時にも自分の力で受かりたかったあたしは、お母さんのことを出さなかった。



 配信が終わった翌日の朝……母子家庭で、母親とアパートで2人暮らししているエメリオは、母親と向かい合うようにリビングの食卓について、朝食を食べながら昨晩のことを思い切って聞いてみることにした。


エメリオは「ねえ、お母さん……」とギクシャクしながらも声をかけると母親は「なあに?」と優しく返してくる。


「昨夜、コラボ配信で土手川 参歩って人とコラボしたんだけど……お母さんの知り合いだったりするの?」


 母親はエメリオの質問を聞いて特に驚いた様子もなく「あら、アナタもう『お父さん』に会ったのね」と答えた。


エメリオは母親のとんでもない発言にエメリオは「はあ!?」と驚きの声を上げた。

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