NATO輸送部隊

 三月一日午前一一時、英軍の指揮官が率いるNATOの輸送部隊六千人がウクライナ支援のためにスロバキア国境からウクライナに入った。この作戦に対応するためロシア軍はベラルーシに展開していたMi-28攻撃ヘリコプター三十六機を発進させ、NATOが輸送してきていたドイツ製自走対空砲ゲパルトや多くの国が供与した兵器の破壊を試みた。それを迎え撃つのは、ウクライナ空軍のMiG-29十六機とSu-35六機である。

「全機、かかれ!」

 メルニク中佐がそう言うと、ウクライナ空軍の全機はMi-28に襲いかかった。たちまち空中戦が始まり、Mi-28は機動力の高いMiG-29を積極的には狙わず、Su-35のみを狙って機関砲を撃つ。しかし、MiG-29が放った機関砲弾にメインローターやテイルブームを折られ、なすすべなく墜落していく。

「Su-35中隊、ミサイル用意!」

 マトヴェイ小佐がそう号令したのと同時に、ロシア軍のMiG-29一二機が接近しているという報告が飛んだ。

「敵戦闘機にミサイルをロックしろ!」

 Mi-28を攻撃していた「キエフの亡霊」も上昇を始める。そして、Su-35がミサイルを放った。しばらくして、二キロほどの距離で爆発が起きる。ミサイルがロシア軍のMiG-29に命中したのだ。

「残る敵機は六機、交戦に入る。Su-35中隊は援護を頼む」

 トカーチ少佐がそう言って、接近するロシア軍のMiG-29に機関砲を放った。一発がロシア軍のMiG-29の主翼を貫き、二秒ほどして機体が燃え上がる。残るロシア軍のMiG-29五機がミサイルをロックするような動作をしたとき、ボーンダル大尉機がミサイルを発射した。ミサイルはすぐに命中し、ロシア軍のMiG-29は落ちていく。同数になった両軍のMiG-29は格闘戦に移行した。と、トカーチ少佐が通常無線回線を開く。

「『キエフの亡霊』よりロシア軍機へ、『キエフの亡霊』よりロシア軍機へ。『キエフの亡霊』は獲物を逃さない。生存したければ速やかに降伏せよ」

「断る。我々はロシア航空宇宙軍精鋭部隊だ。死の覚悟はできているな?」

 その声と同時に、ロシア軍のMiG-29はミサイルを放った。電波妨害装置を起動してそれを避けた「キエフの亡霊」は、すぐに機関砲で反撃に移る。機銃弾を受けたロシア軍のMiG-29は、相次いで炎上した。落ちていくロシア軍機の主翼には、確かに精鋭部隊の名が書かれていた。Mi-28の攻撃ヘリコプター中隊は壊滅し、撤退していく。

「NATO輸送部隊へ、こちらウクライナ空軍第一中隊。ロシア軍攻撃ヘリコプターは撤退せり。繰り返す、ロシア軍攻撃ヘリコプターは撤退せり」

 無線の向こうからは、安堵のため息が聞こえた。

「基地へ帰投し、補給を開始する。全機、基地へ帰るぞ」

 メルニク中佐の命令で、ウクライナ空軍機は回頭して基地を目指した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る