第59話 第二都市奪還

 城での闘いに敗北したブラックフェアリーは第二都市まで撤退を強いられた。

 なんとか第二都市にたどり着いた彼等は元領主の屋敷を根城としてメンバーの治療を行なっている。幹部であるブルースが中心となって、寝る間を惜しみ傷ついた者の手当をしている。

 

「はぁ〜……」

 

 ブルースは大量のベットが並んだ部屋で溜息をこぼす。

 今回の作戦で敵の策に嵌り、多くの犠牲を出してしまった。

 ボスであるイヴィルは意識不明の重体。傷口は塞いだが身体のダメージと失った血液が多すぎて暫く動けないそうだ。

 そして自分達を逃がすために殿を務めたバウトは結局戻って来なかった。

 

「必ず戻るって言ったじゃない」

 

 付き合いの長い友を亡くし、より気分が落ち込む。

 でも今は状況がそれを許さなかった。

 

「大変です! 騎士達が屋敷を取り囲んでいます!」

「なんですって⁈」

 

 窓の外から状況を確認すると騎士達が武器を持って屋敷を取り囲んでいる。

 入り口を固めているのでまだ侵入はされてないが時間の問題だろう。

 王都での闘いで多くの犠牲者を出してしまった。

 消耗も激しく力で黙らせることもできない。

 こんな時バウトかイヴィルがいれば……

 

「おや? おやおや? お困りですかブルースさん」

「レッドアイ! 戻ってたの!?」

 

 声の主はレッドアイ。

 ブラックフェアリーの幹部だ。所用で王都での闘いに参加していなかったが、戻っていたとは知らなかった。

 背中に自身の身長より大きな縦長い箱を背負って室内に入る。

 

「そうなんですよ! ボスがさっさと所用を済ませろって言うから私、急いで終わらせて走って戻ってきたんですよ! 見てくださいこの脇汗! えっ、臭い? くんくん……うおえっ、くっさ! どうりでこの部屋臭いと思ったら、私のせいですか? どうもすんませんでした!」

「ごめんレッドアイ。貴方のお話しはユニークで私は好きだけど、今はそれどころじゃないのよ」

 

 ブルースはレッドアイに今の状況を説明した。

 

「――っと、いうわけなの。今戦力不足でピンチってわけ」

「おおっ! それはそれは。その問題なら私力になりますよ。見てくださいこの腹筋、昔はお尻のように割れてたんですけど、今はボールみたいに丸くなっちゃって……くぅ!」

「……レッドアイ、今は冗談言ってる場合じゃ――」

「ああ失礼しました。ですが力になれるのは本当です。此方をご覧ください」

 

 そういうと背中に背負っていた縦長の箱を下ろす。

 よく見るとそれは棺桶のようだった。

 レッドアイが棺桶を開ける。

 開けると中から一人の男が出てくる。

 ブルースは棺桶の中にいたソレに驚愕した。

 

「任せてください! コイツがあんな奴等すぐ追っ払いますから」

「……何これ、どうなってるの? どうしてコイツが? そもそも大丈夫なの?」

 

 棺桶から出てきたソレに疑惑の目を向ける。

 正気を失ったような空虚な瞳、あきらかに意識はないように見える。

 確かにコレならこのピンチも乗り切れるかもしれない。だが――

 

「……貴方ホント趣味悪いわ」

「いやいや、そんなことないですよ。では、いっちょやったりますか!」

 

 まるで新しいおもちゃを試したくて仕方ない子供のように声を弾ませるレッドアイ。だが、彼が持ってきたソレは玩具のような生易しいものではなかった。

 

「敵を殲滅しろ。 "光の剣聖"」

 

 救国の英雄が敵としてスイロク王国に牙を剥く。


 ♢

 

 王都から逃げたブラックフェアリーを追跡した王国軍は、潜伏先を取り囲み逃げ場を塞いだ。

王都では、あと一歩のところまで追い詰めたはいいが、何者かが門を開けたせいで逃してしまった。

 もう失敗は許されない。

 皆、ここで殲滅する覚悟でこの場にいた。

 

「絶対逃すなよ」

「「はい!」」

「おい!誰かでてくるぞ!」

「前衛、剣を抜け!」

 

 騎士達が警戒するなか、屋敷から出てきたのは白銀の鎧を身に纏った中年くらいの男だった。

 だが、その男の姿をスイロク王国で知らない者はいなかった。

 

「貴方は、剣聖様⁈ 無事でしたか!」

 

 屋敷から現れたのは、行方が分からず生死不明となっていた救国の英雄光の剣聖、アイディール・ホワイトその人だった。

騎士達の剣呑としていた空気が僅かに緩み、誰もが英雄の帰還に安堵する。

 

「よかった。本当によかった……生死不明と聞いた時はどうなることかと」

 

 剣聖に心酔する隊長は涙を流しながら彼を迎える。

 ゆっくり歩いてくる剣聖に構えていた剣を下げ、彼の目の前にまで行く。

すると――

 グサッ

 剣聖の持つ宝剣が隊長の身体を貫いた。

 

「えっ…………剣聖……様?」

 

 そのまま切り捨てられ隊長が崩れ落ちる。

 

「剣聖様……一体、何を………………」

 

 すると、剣聖はそのまま抜剣している騎士達に向かって剣撃を繰り出した。

 英雄の目にも止まらぬ攻撃になすすべなくやられ数人が地面に伏す。

 残っているのは戦意のかけらもない、びびって動けなかった者達だけだった。



「すげぇ! 圧倒的だ! よし俺らもやるぞ!」

 

 剣聖の加入で調子に乗った者達が騎士達を追撃しようと剣を抜き屋敷から出る。

 するとレッドアイが何やら叫びだす。

 

「ちょっと、駄目ですよ! 剣を抜いたら!」

「何で? 今が結構チャンスじゃない?」

 

 レッドアイの様子に不思議そうにするブルースが訊く。

 

「今の剣聖は敵味方の判別がつかないんです! 剣を抜いたり、敵対行動を取ると誰でも攻撃するんですよ! ほら来たあぁぁぁぁぁ!」

 

 光の剣聖が次はブラックフェアリーに牙を剥く。

 ブルース達は手に負えない剣聖を第二都市に放置して本拠地である第四都市へ去っていった。


 ♢


 ブラックフェアリーを王都から撃退してから数日後、追撃を任せていた王国軍からある知らせを受けて再び宮廷会議が開かれることになった。

 あらかじめ大まかに内容を把握していた上層部の顔色は最悪だった。

 

「皆よく集まってくれた。先日の戦いからまだ数日しか経っておらず申し訳ないが、まだ闘いが終わっていない。休むのは戦いが終わってからにしてくれ。それでは追撃隊からブラックフェアリーの動向を説明してくれ」

 

 澄んだ声でシシリアンが会議開始とともに追撃隊の帰還者に報告を促した。

 

「はい、王都から逃走したブラックフェアリーは第二都市に潜伏し領主邸に潜伏しました。我々は住民の強力を経て奴等を包囲し、物量で押し切ろうとしました。ですが………………妨害が入り……作戦は失敗しました。追撃隊は一部を除いて全滅し、ブラックフェアリーは再び逃走してしまいました」

「妨害とは何があった?」

「………………」

「もう一度聞く、何があった?」


 シシリアンは再度問うことでようやく帰還者は口を開く。だがそこから出たのは信じ難いものだった。

 

「剣聖様が………裏切りました」


 口から出たのはスイロク王国の英雄アイディール・ホワイトの謀反という報告だった。

 

「馬鹿なっ! あり得ん!」

「何かの間違いではないのか?」

 

 これは嘘だと言わんばかりに会議の場が騒然する。

 救国の英雄である彼が敵に寝返るわけがないと。

 これは何かの間違いだと。

口々に報告された内容を真実だと受け取ることができなかった。

その騒然としたなか、末席に座り帰還兵からの報告を聞いてアブソリュートは静かに考えていた。

 

(色々と策を巡らせたが結局は最悪のイベントを迎えてしまった。光の剣聖にイヴィルの情報を渡せば初見殺しを回避して勝てると思ったが、どうやらイヴィルの方が上手だったようだ)

 

「話が進まないな……アーク卿はどう思われる?」

「とりあえず現地に行かないことには話が進まない。第二都市は経済の要、早急に取り戻す必要がある」

 

 ここまでは皆同じ見解なはずだ。

 第二都市が一日稼働しないだけで数億近くの損害が出るのだから。

 問題はここからだ。

 

「その上で剣聖が立ち塞がるようであるなら排除せねばなるまい」

「「「……………」」」

 

 アブソリュートの言葉に皆押し黙り、辛そうな表情を見せる。

 光の剣聖とは民衆、そして貴族や王族にとってもそれだけ偉大で換えの効かない人物なのだ。

 

「私が行って確かめてこよう。腕には自信がある、剣聖にも引けを取らないはずだ」

 

 アブソリュートの提案に異議を唱える者はいない。

 彼の武勇は先日の戦いで証明されたからだ。

 だがここで一人声を上げる者がいた。

 

「私も行きます。光の剣聖は……先生は、私の師ですから」

 

 レオーネ王女だ。

 剣聖を師と仰ぐ者として、いざという時は自らけじめを取るつもりなのだろう。

 自らの選択が破滅へと続くと知らずに――

 

「分かった。今回は二人に任せよう。どうか剣聖の問題を解決し、第二都市を取り戻してくれ」

 

 こうして第二都市奪還作戦が始動した。


 ♢


 アブソリュートとレオーネは第二都市を奪還するために百名程の隊を編成し、第二都市へ向かった。

 今回の相手はブラックフェアリーの手に堕ちた光の剣聖。アブソリュート達はその真否を確かめ解決へと導き、第二都市を奪還せねばならないのだ。

 城から出発して半日、第二都市へと到着した。

 第二都市は世界一大きな漁港と貿易港を持ち、港町として有名だ。普段は漁師たちの活気と他国から来る人達で街は盛えているのだが今はその面影もなく静まりかえっていた。

 

 まるで街に誰もいないような錯覚に陥りそうになるが、気配を探るとどうやら家の中に閉じこもっているだけのようだ。

 光の剣聖が第二都市にいることで無闇に動けず、家から出れないようだ。

警戒と不安、僅かに期待のこもった視線がアブソリュート達に注がれている。

 到着し、馬から降りると追撃隊の生き残り数名がレオーネ達を迎えた。

 膝をつき礼を尽くす騎士達。

 

「お待ちしておりました、王女様」

「ありがとうございます。街の様子はどうですか?」

「今は民衆は家から出ないように言っています。剣聖様がどう動くか分かりませんから……。ブラックフェアリーはこの街から居なくなったのでなんとか食糧を集め残った騎士達で配り回っていることでなんとかやっていけています」

「ご苦労様です。それで先生はどこにいるのですか?」

 

 レオーネは民の様子を聞いた後、剣聖の所在を確認する。

 

 (早く……早く先生の無事をこの目で確かめたい)

 

 その思いでいっぱいだった。

 

「それが……街をずっと徘徊しております」

「街を徘徊?」

「一度見ていただけたら早いと思います。どうか此方へ」



 騎士達に連れられ街を歩く。すると向かいから人影が確認できた。

 青白い肌をした中年の男。白銀の鎧を身に纏っていることから彼が光の剣聖だと推察できる。

 白銀の鎧は返り血で染まり、歩く度に血が滴っている。

 光の剣聖は定まらない足取りでフラフラとコチラへ歩いてくる。

 

「剣を抜かない限り攻撃はしませんが、攻撃しようとしたりすると敵と認識されます。ご注意を」

 

 向かいから歩いてくる光の剣聖に向かってレオーネは叫んだ。

 

「先生……先生私です。レオーネです!」

「…………………」

 

 光の剣聖に反応はない。

 まるで機械のようで、個として意志を感じられない。

 それに僅かに香る死臭がレオーネをより不安にさせた。

 

「先生――――」

「やめておけ、レオーネ王女」

 

 アブソリュートが剣聖の元へ駆け寄ろうとするレオーネの手を掴み静止させる。

 

「よく見ろ……お前も気づいた筈はずだ」

「…………分かりません……何を言っているのか」

 

 嫌だ。

 ――これ以上は言わないで欲しい。

 ――そうすればまだ僅かな希望に縋っていられるから。

 しかし、アブソリュート・アークはそんな甘えは許さないと言わんばかりにはっきりと現実を突きつけた。

 

「アレはもう死んでいる」

「あ、ああああぁぁぁぁぁ――!!!!!」

 

 アブソリュートの言葉がレオーネの心に重くのしかかる。理解したくなかった。

 だが目の前にいる尊敬した師には明らかに生気がない。

 傷ついた身体からは赤黒い血を垂れ流し、顔色は戦場で戦死した騎士達を彷彿とさせるほど青白い。そして彼の目は何も映さず虚空を見ていた。

 光の剣聖はレオーネ王女達になんの反応も示さず彼等を通り過ぎさる。

 

「先生…………どうしてそんな姿に」

「関係あるかは分からないが、人間をアンデッドに変える固有魔法を使う人物がいる。思えばアンデッドが自然に発生するには早すぎるし、あんな綺礼なアンデッドは見たことがない。もしかしたら其奴が関係しているのかもない」

 

 聞いたことがある。

 確か帝国の貴族で、アーク家にも劣らない巨大な闇組織ノワール家を束ねる女当主。

 その人物は遥か昔に勇者に倒されたネクロマンサーの血を引いているらしい。

 その人物の名前は――

 

 【死を司る魔女カラミティ・ノワール】

 

(彼女が関係している? 一体何故? 先生が一体何をしたって言うの?)

 

 変わり果てた師を見てショックを受けたレオーネは、涙を流しながら剣聖の後ろ姿を見えなくなるまで追っていた。


 ◇

 

 レオーネ王女達は、第二都市を守護する騎士達が使っていた宿舎を拠点にして対策を練ることにした。

 広い会議室の中にはアブソリュートを含めた主要の関係者数人を集めて会議を行う。


 重苦しい空気の中、アブソリュートが口火を切った。

 

「全員分かっているとは思うが、アレは完全にアンデッド化している」

 

 原作と同じだ。

 原作でも光の剣聖はアンデッド化し、勇者達の前に現れた。聖魔法を使える勇者と聖女の二人はアンデットと相性がよく、レベル差を覆して勝利を収めたのだ。

 実際に見るまでは確証はなかったが、青白い血の気を失った肌の色に加え、何度も嗅いできた鼻につく死臭。

 間違いなく死んでいる。

 幸い街の住民には剣聖は敵に操られていることになっているため、剣聖の死による混乱は避けることができた。

街の住民が剣聖を心配そうに家の窓から見ていた理由が分かった。


 だがレオーネはいまだ希望が捨て切れずにいた。

 

「……………本当にそうなのでしょうか? 敵に操られているという線もまだあるのでは?」 

「信じたくないのは理解できる。だが現実を見ろ……お前もわかっているだろうレオーネ王女。逃げるな」

「――――っ⁈」

「アーク卿! 王女様になんてことをっ! もう少し言い方を考えて頂きたい!」

「私は協力はすると言ったが優しくするとは言っていない。それに本当に剣聖のことを思うならこれ以上晩年を汚さないようにしてやるべきではないのか?」

 

(どうするレオーネ王女? お前がどうしようと構わないがあまり時間はないぞ……。第二都市の奪還に時間をかけている暇はない。早く奪還してブラックフェアリーを討伐に向かわないと最悪奴等が国外へ逃亡する恐れがある。反乱の芽は早めに摘むべきだ)

 

 アブソリュートは黙り込んだレオーネに言葉を重ねることなく見る。

 レオーネは暫し考え込んだあと、顔をあげて決意した目でアブソリュートを見た。

 

「……すみません。貴方の言う通りですね。一応覚悟はしていたつもりですが、揺らいでしまいました。先生の名誉をこれ以上汚す訳にはいきません。街の住民を守るため、先生の誇りを守る為にどうか私に力を貸してくださいアブソリュート・アーク」

「ああ、わかった」


 こうして今回2人は協力関係を結べた。

 ♢


 アンデッドとは、かつて生き物であったものが死んでいるにもかかわらず、活動しだし、生者を襲う魔物の一種だ。

 厄介なのが奴等の固有スキル『自己再生』。どんなに傷を負っても再生する回復力が奴等の強みだ。

 その反面、聖魔法には極端に弱く、レベル差があったとしても有効な場合が多い。原作の時もレオーネ王女が最終的に倒したが勇者と聖女の二人のアシストによる結果が大きかった。

 

 ――だが今回二人はいない。

 

 聖魔法は千人に一人と使い手が少なく、しかも剣聖レベルのアンデッドを祓うとなるとかなり限られてくるのだ。

 スイロク王国には今の剣聖を祓えるほどの力を持った者はいないらしい。

 アブソリュート・アークも唯一聖魔法だけは適性がない。故に別の方法で倒すしかないのだ。

 もっともポピュラーな倒し方は成仏だ。

 原作の光の剣聖も最終的には成仏という形で敗北した。

 勇者達の聖魔法を浴びて心が人間に戻りかけていた部分はあるが、最終的には弟子であるレオーネ王女の成長を目の当たりにしたことで成仏した。

 

(他にも重りをつけて海に捨てる、バラバラにして山に埋めるなどあるがレオーネの理解は得られないだろう。死体とはいえ立場のある者を相手にするのは面倒だ)

 

 倒す方法を皆で模索しているとレオーネ王女から提案があった。

 

「生前、私と手合わせの約束をしていました。恐らく私と闘えば先生は成仏する可能性があります。少なくともそれほどの絆はあるつもりです」

「王女様、それは危険すぎます!」

 

 次々と反対する声が上がる。

 アブソリュートも内心反対だ。

 彼女が1人で戦えば原作のように心が壊れてしまう可能性があるからだ。

 だが、彼女の決意は固いようだ。

 

「お願いします。弟子として、剣士として先生の最後の相手になりたいんです。私に戦わせてください」

 彼女は決して折れないだろう。

 

 だからアブソリュートが折れることにした。

 

「好きにすればいい。だが、危なくなったら介入するぞ?」

 

 アブソリュートからまさかの承諾を得れると思っていなかったのか、レオーネは力強く感謝の言葉を返した。

 

「――っ! ありがとうございます!」

 

(いい感じのところで介入してから後のことを考えよう)

 

 こうして剣聖の対策を終えた。

 後は戦いの日である明日を待つだけである。


 ♢


 いざ決戦当日。

 

 レオーネは第二都市の中心にある大広場で光の剣聖を待った。

 周囲に騎士達を配置して、民衆への被害を抑えると同時に、いざとなれば後ろにいるアブソリュートが割って入る算段だ。

 少しして光の剣聖が現れた。

 フラフラとおぼつかない足取りで歩いている。

 

「先生……最後に手合わせ願います」

 

 レオーネが抜剣し構える。

 すると光の剣聖の足取りが止まった。

 虚空を見ていた瞳に僅かに意志を感じた。

 すると鋭い剣気がその場にいる全員に降り注いだ。

 光の剣聖が本気になった証拠だ。

 

「ああ……待っていた…………」

「えっ?」

 

 唐突に光の剣聖が喋った。どうやら僅かに意識が残っているようだ。

 

「お前と戦えるのを……待ち侘びていた」

「先生……死してなお私との試合を待ち侘びてくださっていたなんて」

 

 レオーネは感激の涙を拭いながら改めて剣を構えた。

 剣聖も宝剣を抜き、両者が睨み合う。

 

「さあ…………戦おう」

「はい!」

 

 その言葉を合図に両者共に動いた。

 二人の陰が重なりあった時、両者の刃が衝突――――しなかった。

 

「えっ?」

 

 光の剣聖はレオーネ王女の剣をかわして、別の人物に斬りかかろうとしていた。

 

「さあ、戦おう! ヴィラン・アーク!」

「何故?」

 

 その人物はアブソリュート・アークだった。





――――――――――――――――――――

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