4、初デートと待ち合わせ


 あれから五日が経ち、姉ちゃんとのデート当日。俺は待ち合わせの場所に来ていた。

 本当は一緒に出るつもりだったんだけど、姉ちゃんが、


 『デートってのは、待ち合わせの場所で合流が基本なのよ』

 

 とか言ってたので、こうしてひとり立ってるというわけ。

 ちなみに今日着てくる服も見せてもらえなかった。サプライズの方がいいでしょとのことで。

 そう考えるとなんかドキドキするな。

 一緒にお出かけとか数えきれないぐらいしてたけど、今日はそういうのとは違う気がする。デートの魔力がそうさせるんだろうか。

 

 そわそわしながら待っていると、背後から肩を叩かれる。この感じ、もしや……。

 振り返った瞬間、俺の回りから雑音が消えた。


 「おまたせ」

 「あ、あぁ……」


 かすれた声で返事を返すのがやっとだった。触れ合った瞳越しの俺は、真っ赤な顔をしている。

 それはきっと、夢中になってたから。

 姉ちゃんのオシャレした姿に、心臓がバクバクさせられてたからだろう。


 ひらひらした生地のトップスに、太ももぐらいまでが隠れたスカート。小っちゃいバッグを肩から下げ、整った顔にはバッチリとメイクをしてた。耳にイヤリングまでつけてドレスアップしてる。

 この人、ほんとに俺の姉ちゃんなのか。血が繋がってるとは思えない。

 あまりの変貌ぶりに、疑いたくなってくる。でもなにを疑えばいいのかも分かんないから、この気持ちを胸の奥底にしまい込むしかない。


 二の句が継げないでいたら、頬っぺたをつんつんされる。


 「なんとか言いなさいよ。せっかくオシャレしてきたってのに、ぼーっと突っ立って」

 「ええっと、その……いつもと違い過ぎてビックリしたというか」

 「それだけ?」

 「……すげー綺麗、です」

 「ふふ、ありがと」


 姉ちゃんが満足げにはにかむ。たったそれだけのことなのに、テンションが上がってきた。

 俺は勢いそのままに、姉ちゃんの手を掴む。


 「朱莉っ、あのさ!」

 「な、なによ。はしゃいだりして」

 「手繋いでもいいかな? ほら、一応付き合ってるわけだし、っていうか俺がただ繋ぎたいっていうか……」

 「なに尻すぼみになってんの。そんなの、」


 俺の握った手を振り払いながら、姉ちゃんが言う。

 やっぱダメなのか……落ち込みそうになっていたら、耳元で声がした。


 「いいに決まってるじゃない」

 「え?」

 「恋人なんだから、指ぐらい絡ませるのは普通のことよ」


 諭すような感じで言った姉ちゃんが、振り払ったはずの手に指を絡めてくる。これってもしかして……。

 

 「朱莉の手、温かい。それに、すげードキドキさせられる」

 「ふふ、今度は優介があたしをドキドキさせる番だからね」

 「あぁっ! エスコートは任せてくれ」

 「楽しみにしてるわ」


 俺は姉ちゃんの手を引きながら、意気揚々と歩き出す。

 練りに練ったプランを披露して、姉ちゃんをたくさんドキドキさせてやるのだ。

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