第57話 出会い。






雨は嫌いだ。雨の日はなんか憂鬱になる。


あの日も憂鬱な気分で大学の講義を受けて大学から自宅に帰るために車に乗り、大学を出た。


大学を出て少し車を走らせると大学の最寄りの駅がある。大学の講義後は学生がいっぱいいて車で通るのは大変だけど、あの日は講義が少し早く終わっていつもよりスピードが出せた。


「あっ……」


田舎の大学なので道に猫がいたりする。雨にも関わらず、急に走って猫を避ける為にハンドルを動かすと車のタイヤが水溜りにダイブして……


「ご、ごめんなさい……」


道を歩いていた人に勢いよく水溜りの水を吹きかけてしまった。


「だ、大丈夫ですか?」

「う、うん。まあ、うん。大丈夫……」


絶対大丈夫じゃない。めちゃくちゃ濡れてる。ど、どうしよう。


「え、えっと…いきなり聞くの失礼ですけど家近いですか?」

「うーん……」


どう答えようか迷ってる優しそうな男の人を見ながらまゆは慌てていた。たぶん、駅に向かってるから今から電車乗るんだよね…こんな濡れた状態で電車に乗せられないよ……


「え、えっと…まゆの家近いから…えっと、シャワーと…お父さんのでよければ代わりの服貸せるから……えっと、乗って!」

「え、いや、でも…初対面の子の家にいきなりは…そ、それに車汚したら申し訳ないし……本当に気にしなくて大丈夫だよ」


優しい人だと思った。こんな優しい人に風邪をひかせたりしたら本当にいけない。とまゆは思ってちょっと強引に車に乗せて大学から10分くらいの場所にあるまゆの家に急いで向かう。


誰もいない家に帰ってとりあえずお風呂場に案内してシャワーを浴びてもらってる間にお父さんの服を借りておく。


シャワー借りたり服を借りたりするのをすごく申し訳なさそうにしていたが風邪をひかれたりすると大変なので強引に貸した。


水溜りの水をかけた後、車で移動した時間、まゆの家でシャワーを浴びてから元々着ていた服を洗濯している時間、話をしたりしていて、まゆはこの人のことを気になってしまった。


「え、えっと…まだ、時間かかりそうだし、雨で乾かないだろうからよかったら今度大学で返す形でいいですか?えっと、改めてお詫びもしたいし…」

「お、お詫びって…気にしなくていいから。本当に大丈夫だから」


もちろん、お詫びしたい。って気持ちもあった。でも、それは口実で本当は…もっと一緒にいたい。いっぱいお話したりしてもっとあなたのことを知りたい。そう思っていた。


こうしてまゆはりゅうちゃんと出会った。それから何回かお茶をしたりデートをしたり、同じサークルで活動したりするようになって付き合うことになって今に至る。


りゅうちゃんと出会った日の夢を何度見たことだろう。まゆの人生の中で、すごく大切な日の記憶を……





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