第56話 もし…





以前、夢を見た。


りゅうちゃんとみほが2人でいて、りゅうちゃんとまゆがあの日…出会わなかった時の夢を……


夢の中でりゅうちゃんとみほはすごく幸せそうだった。すごくお似合いの2人だと思った。まゆとりゅうちゃんは……どうなのだろう。


あの日の夢を見た。すごく久しぶりにりゅうちゃんと出会った日の夢を……


もし、この日がなければまゆはりゅうちゃんと今みたいな関係には絶対になっていなかったと思う。もし、この日がなければまゆじゃなくてみほが…まゆ以外の女の子がりゅうちゃんと一緒にいたと思う。


りゅうちゃんとの出会いはちょっとしたハプニングだった。ハプニングから少しだけ話して、お互いに似た趣味があって、趣味の話をして、りゅうちゃんをまゆが入っていたサークルに誘って、しばらく毎日のようにりゅうちゃんと一緒にいて、そしてずっと一緒にいたい。りゅうちゃんと一緒にいられる時間が幸せだから。まゆはりゅうちゃんと付き合った。


過程はある。でも、本当は…一目惚れだと思う。りゅうちゃんはまゆに一目惚れした。とよく言ってくれる。きっとまゆもそうだった。りゅうちゃんに出会って、りゅうちゃんと初めて目を合わせた瞬間、何かを感じてしまった。運命のようなものを……


きっと一生に一度の出来事だと思う。お互いに何かを感じてお互いを好きになったのだから。あの一瞬がなければ…そう考えると本当に怖い。


だって想像できないから。隣にりゅうちゃんがいない日々を…りゅうちゃんと一緒に笑って幸せに過ごした時間が別の時間になっていたかもしれないことなんて想像できない。


もし、りゅうちゃんに好き。って言ってもらえてなかったら…もし、まゆがりゅうちゃんを好きになっていなかったら……


そんな世界は存在しない。まゆの中にはしっかりりゅうちゃんと過ごした幸せな時間の記憶が残っている。だから、大丈夫。とまゆは自分に言い聞かせる。


そして、思い出す。まゆとりゅうちゃんが出会った日のことを…始まりの日のことを……


そうすれば、もし、なんて世界が存在しない。って思えるから。不安な気持ちを掻き消すことができるから。


「ご、ごめんなさい」


土砂降りの雨の日にまゆはりゅうちゃんと出会った。まゆがりゅうちゃんに最初にかけた言葉がごめんなさい。だった。今思い返すとよくりゅうちゃんに好きになってもらえたな。って思うくらいひどい出会いだったと思う。


でも、りゅうちゃんはまゆを受け入れてくれた。






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