第28話 原動力





「ど、どうやったらこんなことに……」


悲惨なことになった台所を見てまゆが驚きながら言う。自分でもよくわからない。普通にまゆが大好きなオムライスとか作ろうとしていただけなのに…


「ごめんなさい…」

「いいよ。まゆのためを思ってやってくれたんでしょ?まゆ、嬉しいよ。とりあえず片付けてまゆが夜ご飯作るから片付け手伝ってもらっていい?」

「うん……」


まゆに楽させてあげようとしたのに結局手間をかけさせてしまい申し訳ない…


「本当に気にしなくていいからね。まゆ、本当に嬉しいんだから。お部屋のお片付けとかもしてくれてて本当に助かる。りゅうちゃんが料理苦手なの知ってるしりゅうちゃんが苦手なことはまゆがやるから大丈夫だよ」


台所の片付けをテキパキとこなしながらそう言ってまゆは笑顔で僕を慰めてくれる。


「まゆ、今度料理教えて…」

「うん。いいよ。じゃあ、今日からまゆと一緒に料理しよっか」


まゆは嫌な顔をしないでいいよ。と笑顔で答えてくれた。


台所の片付けを終えて、まゆと一緒に料理をした。まゆは僕に丁寧に教えてくれた。この1週間、まゆが毎日料理をしてくれて美味しいごはんを食べさせてくれていたことがどれだけありがたいことかが改めてよくわかる。お味噌汁を飽きないように具材を変えたり、何かして疲れた日はちょっと味付けを変えてくれたり、栄養のバランスを考えてくれたり、毎日毎日、いろいろな工夫をまゆはしてくれていた。


「まゆ、いつも本当にありがとう…」

「なぁに?改まって…」

「いや、料理ってすごく大変だなって…」

「まゆ、料理好きだから全然大丈夫だよ。りゅうちゃん、毎日美味しい。って言ってくれるからまゆ、頑張って美味しいごはん作りたいなぁ。って思えるの」


そう言って笑顔で微笑んでくれるまゆが愛おしくてたまらない。こんな素敵な彼女を持つことができて僕はすごく幸せだと思う。


「りゅうちゃんに料理のコツを教えてあげる。料理に一番大切なものは愛情だよ。まゆは毎日、りゅうちゃんが笑顔でごはんを食べてる姿を想像して料理してるの。まゆが料理を頑張ろう。って思える原動力はりゅうちゃんなんだよ。りゅうちゃんがまゆのために料理に挑戦してくれたみたいにさ。だから、今日はありがとう。本当に嬉しかったよ」


まゆは優しく僕にそう言ってくれる。いつか、ちゃんと料理をできるようになってまゆが疲れている時くらい楽させてあげられるようになりたい。まゆに美味しい。って言ってもらえる料理を作れるようになりたい。そのために今日から少しずつ料理を覚えていこうと思えた。





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