第18話 ツンデレ?

「さて、次はお前だ。お前は女だから貴族にでも売り渡して世話でもさせようかと思ったが何しろ顔がな。正直大したこともないから売れないんだよ。」


「な、なんですって!この私が大したことないですって、あんた許さないわよ!」


自身の顔が大したことないと言われてしまい、彼女は許すことが出来なかった。それくらい彼女はプライドが高いのだ。ちなみに、彼女の顔はどこにでもいるような顔でボスの言うこともまっとうなのである。


「別に許してもらわなくても結構だ、金さえ回収できればそれでいい。さて、そんなお前にも仕事はある。喜べ、お前は美しくなれるぞ!」


先ほどまで大したことがないと言われ、怒っていたが、美しくなると言われてしまったのだ。そんなことを言われてしまえば誰だってその話に期待してしまう。


「ほ、本当なの?私、これ以上にきれいになれるの?」


しかし、そんなことがあるはずはない。彼女は借金のかたに売られるのだ。本当にきれいになるのであれば研究者が金を支払うはずがない。


「あぁ、そうさ。お前はこれから研究所に行って美しくなる薬を試すんだよ。研究者の話では綺麗になるらしいぞ。まぁ、今までどの被検体も失敗で逆に醜くなってしまったんだけどな。あれはひどかったぜ、顔がただれて、皮膚なんか人間の色をしていない。まるで化け物だな。」


「ちょっと、まって。それじゃまるで。」


「あぁ、ただの実験体だ。だが、もしかすれば美しくなるかもしれないだろ?良いじゃないかそれで。女は美しさを求めるもんだろ?」


彼女はようやく自分の未来を悟ってしまい、泣き出してしまう。


「い、や、いやよ。実験体なんて嫌。お願い、他のことなら何でもするから、お願い!それだけはやめて!」


「むりだ、お前にはそれくらいしか利用価値がないんだよ。安心しろよ、そいつみたいに死ぬ可能性があるわけじゃないんだから。おい、こいつらを客の元に連れていけ!」


ボスは手下たちに命令すると二人を連れて行かせる。


「いやー!助けて、助けてよ!あ゛ーっ!」


タニラは抵抗するが、そんなものは全く意味をなさない。そこにはタニラの叫び声だけが響いたのだった。


「それにしても珍しいですね、ボス。普段ならあんな方法は一切取られなかったのに、今回はえらく暴力的な取り立てですね。」


「はぁ?そんなの当り前だぞ、あいつらシーラを追い出そうとしたんだぞ!今までさんざん親が大変な時に自分は帰りもせず、シーラに任せておいて、いまさらお役御免だと。まったく反吐が出るぜ。そういう奴らにはあれくらいがちょうどいいんだよ。」


そんなボスを見て彼はニヤニヤとしだす。


「ボス、もしかして姉さんの為に無理してこんなことをしたんですか?それなら自分の気持ちを直接伝えればいいのに、素直になって下さいよ。」


「は、はっ、お前何を言っているんだ!俺がそんなことをするわけがないだろ、大体なんだその顔は気持ち悪い顔をしやがって。お前みたいな頭がお花畑な奴はとっとと金の取り立てでもしてこい!」


「え~っ、だって皆言っていますよ。姉さんのことが気に入っているのなら自分の気持ちを伝えたほうがいいって。早くしないと他の奴に取られてしまいます、へぷっ。」


先ほどまで話していた男は突然ボスからのゲンコツを受け、黙り込んでしまう。


「おい、俺は金を取り立てて来いって言ってるんだ!お前、仕事ができないなら俺がとっておきの仕事を紹介してやろうか?ちょっと船で魚を取ってこいや!」


「ひっ、す、すみません。調子に乗りました、すぐに仕事に行きます。」


こうして、ボスをからかいすぎた男は逃げるように去っていくのだった。


「はぁ、くそっ。俺がヘタレなのは自分でも分かっているんだよ。次はいつ遊びに来てくれるかな?あぁ~、早く来ねーか、シーラの奴。」


ボスの片思いはもしかしたら日の目を見る日が来るのかもしれない。もちろん、シーラ自身は彼のことを何とも思っていない為、この恋が実るかは彼次第であるが。


こうして、シーラのことを陥れようとした二人は借金返済のために働き始めるのであった。シーラは3か月前の生活に戻り、使用人たちと何気ない日常に幸せを感じ、暮らしていく。


彼女にとって3カ月前と違うことはかなりの頻度でボスとの食事に招待されることであった。彼らの恋路が実るのかはまだ誰も知らない。

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義姉から引きこもりは出て行けと言われましたけど、出ていくのはあなたですよ?でも、私はやさしいので3カ月の間だけ出て行ってあげます。 創造執筆者 @souzousixtupitusya

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