第7話 夢の世界の綻び

タニラの発言にシーラが驚き、困惑していることを勘違いしたのか、二人はニヤニヤと悪い顔で笑っている。


「あら、あら。可哀想なシーラちゃんね。どうせ、この屋敷は自分のものだと叫べば誰かに信じてもらえると思っていたのかもしれないけど、それほど社会は甘くないのよ。世の中は貴族がすべてなの、つまり、あなたは生まれた時から負け犬なのよ。残念でした~。」


「ダメじゃないか、そんなことを言っては。僕たちはこいつらが収めた金で暮らしているんだぞ。せめて上辺だけくらいは感謝しているようにしておかないと自分たちが搾り取られている側だと気が付いてしまうよ。こいつらは学が無くてバカなんだから黙っていれば勝手に働いて僕たちのために金を収めるんだよ。」


「あら、アルフレイ様こそ、そこまですべて話してしまえば気が付いてしまいますよ?」


「おっと、それは失敗したな。」


「「あはははっ、ははっ。」」


全くひどい話だ。自分たちは何も働いていなく、人の金で好き勝手生きているというのに感謝の一つも感じていないなんて。いくらシーラと言えどもそろそろ我慢の限界が来るというときに、先ほど、タニラから命じられて役所へと調べ物をしに行った兵士が帰ってきた。


「さぁ!この屋敷の正当な所有者が一体誰なのかをそこにいるあなた達のリーダーに話しなさい。そして、リーダーはそいつを連行するんです。不法滞在は立派な犯罪なんですから。


部屋の中にいる全員がその兵士へと注目する。


「えっと、その・・・。」


しかし、いつまで経っても何も話そうとしない彼にリーダーはしびれを切らす。


「おい、何をしている。早くこの屋敷の所有者は誰なのかを説明しろ!」


「はっ、はい。役所で確認したところ、この屋敷の所有者はシーラとなっています。それどころか、この屋敷にある財産、庭から土地まですべての名義がシーラとなっています。」


そんな兵士の言葉に全員が固まる。あれだけ自信満々にタニラが発言していたのだからてっきり、所有者の名前はタニラというと思っていたからだ。しかし、兵士の口から語られたのはシーラだった。


リーダーでさえも自分の部下の発言を信じられず、再度確認を行う。しかし、兵士から放たれた発言はさらにみんなを驚かせるものだったのだ。


「お、おい、何かの間違えというわけではないのか?だって貴族様があそこまで自信満々に自分のものだと言っていたんだから流石にありえないだろう?」


「私もおかしいと思いタニラ様の財産を調べましたところ先代の伯爵から相続された遺産が見つかりました。」


そんな言葉に動き出したのはタニラ自身だ。先ほどの発言によって凍り付いていたものの、遺産という声が聞こえ、再び動き出すのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る