悲しいですがこれが現実
──甘い楽園? いいえ、ぼっちには異世界地獄です。
ついにスイパラ当日を迎えたうすだだが、楽園への道のりはまだまだ険しいものだった。店の前で待機している女子2人も見ている中で、本当に強行突破していいのかと疑問を浮かべた。
もうすぐ予約指定した時間を迎えるが、敷地難易度の高さ故に心の準備ができていない。誰よりも気にしすぎな性質をしているうすだにとって、普段以上の警戒心で店内に足を踏み入れる。
「そうだよ俺は旅人なんだよ冒険者なんだよ挑戦者なんだよ」
こいつ1人でスイパラ来たのかよと周りからそしりを受けても、うすだには己の欲望と原神コラボというれっきとした目的がある。たとえ有名人だろうと一般人であろうと、個人的なプライベートってものは誰にでもあるでしょ。
思い切った挑戦と未知なる地に踏み入れることは1つの冒険だと捉えているし、今のうすだは原神の主人公である旅人そのものだ。ま、うすだにはゲーム本来の目的である双子のきょうだいや共に戦ってくれる仲間も存在しませんが。どこの縛りプレイだよ……。
「ああだこうだ考えるより、とりあえず楽園に入るか……コクリ」
予約した時間も過ぎそうだし、ここでじっとしてるよりも店内で改めてプランを考えよう。いくら楽園とうたわれていても、原神で例えるなら秘境に挑むような気分で一杯だ。
今回はコロナ渦の開催であるため、感染症対策は万全でないと店内に入ることができない。スイパラ当日はこの投稿日よりコロナ感染者が多く、うすだは来週に3度目のワクチンを控えているため、徹底して両手をアルコール消毒しながら店内に入る。
「うわぁぁぁあ……ぼっちまじでいない」
ざっくり店内を眺めたこの瞬間、うすだはこれ以上にない絶望を覚えてしまった。大方のデータ通りに全体の7割以上が女性客達が賑わっており、うすだのようなぼっちで来店している男性客は皆無だ。
他の来店者達は仲良く会話しながら美味しく食べているのに、あまりに場違いすぎたこの中で本当にチョコケーキ食べ放題するのうすださんは? もう店内に入ったわけだし、ここはもう店員に話しかける以外他にない。
「あのーすいません、14時10分の時間帯で原神コラボで予約したうすだと申します」
正直な話、店員をヒルチャール(※)である覚悟で今回予約したことを説明する。最悪なことに、14時台の予約者リストを眺めたら見事に1人で予約登録されていたのはうすだだけであった。
え、まじでうすだと同じ原神目的のぼっちいないの? 時間が悪かったからか、それともやっぱり無理して誰かと誘って行くのがセオリーだったのか?
「原神コラボですね。外の方でメニューを決めて、再度私にお声掛けください」
「わかりました……怖いわ(心の中の叫び)」
コラボメニューを決めるために一旦店の外に出たうすだだが、これバイキングと肝試しを同時にやる感覚だ。まじで帰りたいよぉ……──
※原神に登場する敵キャラ。作品通りうすだはぼっち来店なため、仲間などいないような感覚なため、この表現にしました。
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