乙女ゲームのラスボス悪役令嬢の兄に転生した俺ですが、聖女と悪役令嬢の妹達に付き纏われるようになりました!
FuMIZucAt
プロローグ
「シャーロット。貴様を帝国から追放する!」
豪奢な装飾がされた王族の所有するパーティー会場の一つで、煌びやかな衣装を身に纏う貴族達の中心に女———シャーロットはいた。
冬の雪原の如く真っ白な銀髪は、数日洗っていないのか茶色く濁り、兎を思わせる深紅に染まった綺麗な瞳は涙を流しながら大きく見開かれている。
首元に付けられた鉄の首輪やボロ布から見える腕や脚の露出された部分には生々しい拷問の傷痕が見て取れる。
告げられた言葉に混乱する中、見渡した周囲の視線が、まだ若い女の肌に付いた傷跡を不躾にも見ている事にシャーロットも気付いたのだろう。
足りないボロ布の裾で必死に身体を隠そうとする彼女の行動に情欲含んだ中傷の笑いが起きる。
華奢な身体に反して魔力封じの腕輪を付けられてもなお感じ取れる魔力の本流は、いつの間にか
「この疫病神が!」
「暴れるな! 殿下の御前だぞッ!!」
傷だらけの素肌を隠そうとしただけの行動がシャーロットが暴れたと自然に曲解され、屈強な帝国騎士団の騎士二人に床へ強く押し付けられた。
ゴリッと骨が擦れる音が何とも痛ましい。
「穢らわしい」と誰かが述べた口から次々と罵詈雑言が溢れてもなお、シャーロットには微かな希望のような物が瞳から見えた。
視線の先には私の婚約者であり、シャーロットの元婚約者でもある彼。
だが、そんな彼も彼女へ鋭い目線を向ける。
「貴様は以前から数々の虐めを行ってきたようだな! 暴行の数は優に十は降らんと聞く! 何か弁明があるなら言ってみろッ!」
その言葉に続けと言わんばかりに、シャーロットを囲うようにして形成された貴族達の冷たい壁から漏れる陰口や真相の分からない噂話の数々。
目の前の彼女はそれに狼狽し、彼女の家族へと弁明を求める視線を向けては声を上げたが、兄姉や両親でさえ、彼女に冷酷な拒絶の視線を向けては、
「家族? 私は一度たりともお前を家の者だと認めた覚えは無い。書類にも、記載されている。つまりは、お前は我が家紋の人間でも無ければ、ただの他人。お前が何処で死のうと、私にはなんの関係も無い話だ」
一つの紙がシャーロットの目の前に捨てられ、それを見て彼女は遂に動きを止めた。
あまりに慈悲も何もなく。ただ時間だけが無常にも過ぎては更に孤立していく。
『シャーロット・アクアリウス』
数々の事件の黒幕とされ、自分の気に入らない相手は有り余る魔力と金で何でも潰してきた稀代の魔女。
第一皇太子であるレオン・グレーシス殿下はシャーロットが何も言い返せない事が証拠と取ったのだろう。
彼は「この罪人を地下牢に連れて行け! 二度と俺の目の前に姿を見せるなッ!!」と嫌悪すら込めた強い言葉で、微かに残った彼女の希望すら残酷にも木っ端微塵に叩き折ったのだった。
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