第24話 七夕

 今日、八月二十二日は、旧暦の七夕です。


 平安鎌倉の人にとっては、八月の、この暑い時期が七夕だったのです。


 明治時代に、旧暦から新暦に変わって、七夕は、七月七日の梅雨の時期に移動してしまいました。

 星のイベントなのに、梅雨の時期に変わってしまったという、残念なことに(涙)


 ……でも、七夕が新旧二回に増えて、「織姫と彦星も、年二回逢えるようになった」と、ポジティブな方向に考えましょうか(笑)





 平安鎌倉時代には、たらいに張った水に、七夕の星の光を映して見る風習がありました。


 源平時代の朝廷の高級女官、建礼門院右京大夫けんれいもんいんうきょうのたいふは、こんな歌を詠んでいます。




 ~ 七月、七夕祭して、盥に水入れて 影見る



 天の河 影を宿せる 水鏡


  七夕たなばたつめの 逢ふ瀬おうせ 知らせよ



 右京大夫



(拙訳;七月、七夕祭りをして、盥に水を入れて、星の光を見る。

 天の川の、星々の光を宿した水鏡よ。

 織姫と彦星の、逢瀬の様子を、見せておくれ。

 たなばたつめ = 織姫)




 聞かばやな ふたつの星の 物語


  たらひの水に 映らましかば



 右京大夫



(拙訳;聞きたいものです。ふたつの星が、ささやきあい、語りあうのを。

 たらいの水に 映りこんだならば、きっと聞こえるでしょう)



 平安鎌倉の時代には、星の光は、現代とは比べ物にならないほど強かった、明るかったわけで、盥の水にさえ、よく映ったことでしょう。


「星を水に映したならば、ふたつの星の物語が聞こえてくる」


 という、平安女性の、繊細かつ、美しい心には、本当に感動を覚えます。





 旧暦で大切なことは、暦が、つねに空の「月」と連動しているということです。


 七日の月は、半月に近い月ですが、この七日月を、平安鎌倉の人々は、彦星が織姫のもとに通う、「舟」に見立てたのです。

 旧暦では必ず、「月」が「舟」の形になりますから、そこが大切です。


 もし今夜、空が晴れたら、星と月を見ながら、そんな平安鎌倉の人々のロマンに、思いを馳せてみてください。

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