第21話 熱燗2

 前回のコメントで、海石榴先生が、すんばらしい情報を寄せてくださいました!

 (海石榴先生、ありがとうございます!)


 いただいた情報に加えて、今回は、ネット上の情報を、精査していきたいと思います。



・江戸時代、酒の輸送に、杉樽が使われた。


・杉の新芽が、防腐剤として使われた。



・これらの杉材が含む、「フーゼル油」に、防腐作用があった。



・一方で、杉材から出る、「フーゼル油」が「二日酔い」の原因になった。


・杉材から出る、「フーゼル油」が「頭痛」の原因になった。



・飲酒時の、これらの不快な症状を避けるため、近世の人々は、必ずお燗をした。



・現在では、杉樽を使わないため、日本酒の「フーゼル油」は、問題にならない。





◆ フーゼル油について



・これらの杉材から出る、「フーゼル油」が「二日酔い」の原因になった。


⇒ ×


  現在では、この説は、俗説とされ、科学的には否定されているとのことです。




・これらの杉材から出る、「フーゼル油」が「頭痛」の原因になった。


⇒ ○


  「二日酔い」の原因としては否定されていますが、「頭痛」の原因には、なりうるようです。




・フーゼル油は沸点が高く、お燗をしても、それほど揮発しない。


⇒ ○




◆ 杉樽について



 そこで、この「杉樽」というものが、いったいいつから使われはじめたのかを調べてみますと――なんと、ちょうど問題の中世後期、「鎌倉時代末から室町時代初期にかけての時代」だったというんですね。


 そこで、ひとつのシナリオが浮かびます。




1、鎌倉時代の末(1300年代)に、杉樽による輸送がはじまった。


  大きな容器なので、


  大量に運べる! 保存できる! 熟成もできる!


  そしてなによりも、液体が運べる!


  まさに、『杉樽革命』!?

  


2、長期保存ができれば、それだけ、利益が余計に生まれる。


  商人たちは、長期保存の酒も、じゃんじゃん売ったことでしょう。


  商人;「いや、ちょっと味が変でも、お燗すれば、おいしく呑めますよ!」


  とすら言って、セールスしたかもしれない。


  杉材を、保存料として、大量に使ったかもしれないですね。


  (現代の合成添加物・保存料のごとく)


  ……ということは、酒内に、頭痛物質が増える、ということです。



3、飲み手の側からすると、それまで、酒の容器は、壺だった。


  今までと較べると、杉樽の安酒は、どうも、酒の味が、変に感じる。


  頭も痛くなるようだ。



4、じゃあ、お燗して、呑もう!


 (実は、お燗によっては、フーゼル油はあまり減らないが、お燗をしないよりはマシ)



5、こうして、「年中、熱燗」の、習俗が生まれる。



6、ルイス・フロイス;「日本人は一年中、酒を温めて飲んでいる」(1500年代)




 ……と、こんな感じで、年中熱燗の習俗が生まれたのでは、というのが、今回の推論です。


 更なる情報、ございましたら、お待ちしております!



 海石榴先生、貴重な情報を、ありがとうございました!!




 ……余談ながら、自分はかつては大酒飲みで、趣味はカクテル造りでしたが、ある日突然、アルコールが嫌になりまして、もう十年以上、まったく飲んでいません。飲酒量、ゼロ。


 でも、こういうお酒の話をこそ、お酒を飲みながら、みんなでわいわい議論するのって、むちゃくちゃ楽しいんですよね!


 そんな妄想をしつつ、今回はひとまず、ここまでです。

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