第9話 結婚の形
平安~鎌倉時代、結婚は、「ムコ入り婚」から「ヨメ入り婚」への過渡期でした。
「ムコ入り婚」は、妻の家に、夫が外から入る形です。
「ヨメ入り婚」は、現代の結婚の形で、夫の家に、妻が入ります。
鎌倉幕府の公式文書『吾妻鏡』で、「妻」という言葉の使い方をすべて調べてみましたが、「ムコ入り婚」と見られたのは二件だけで、あとはすべて、「ヨメ入り婚」でした。
つまり、すでにこの時期、鎌倉武者たちは現代と変わらぬ「ヨメ入り婚」だったということです。
この時代の男女は、結婚の時点で、「ムコ入り婚」にするか、「ヨメ入り婚」にするかを選択したのだと思います。
なにによって選択するのかといえば、つまり、収入と財産です。
夫の収入や財産が、妻を養えるほど、しっかりしていない場合は、「ムコ入り婚」。妻はそのまま父の家にいて、夫がそこに婿入りするか、外から通うかします。
逆に、夫の収入や財産が、妻を養えるほど、しっかりしている場合は、夫が妻を引き取り、「ヨメ入り婚」というわけです。
武士の収入が大きくなるにつれ、現代式の「ヨメ入り婚」が増えていったものと考えられます。
しかし、その時代でも、『吾妻鏡』に出てくるような武士よりも身分が低い人たち、低所得層のあいだには、昔と変わらず、「ムコ入り婚」や「通い婚」が存続していたものと思われます。
「通い婚」は、「多夫多妻制」で、妻は実家で暮らしていますが、そこに夫が外から通ってきます。夫はひとりとは限りません。
また夫が通う女性も、ひとりとは限りません。
こうなると、果たしてそれは「結婚」と言えるのか……(笑)
現代とは異なる習俗に、ふしぎさを感じます。
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