第11話

昼間は全くいなかった客がこの時だけ沢山集まってきた。

「ここでやるの?」

「はい、ここ以外にステージはありませんから」

モーブはそういっているが、あのボロボロのダンサーはステージから

降りる気配が全くない。

あの人たちはずっと休めていない様子だったから、休むいいタイミングかもしれない

「熊田玲様が出てきましたよ」

熊田玲はやはり、ムル君の事務所のお偉いさんだ。

瓜二つのレベルではない、張本人だ。

主役が出てきても、ダンサーたちは降りる様子はない。

すると、熊田玲がダンサーの足を引っかけ、ステージから突き落とした。

「みなさん、ずっとこの日を待っていたでしょう」

私はとにかくダンサーが心配だった。

あの高さから落ちたら大層痛いだろう。

それでも、ダンサーは呪いにかけられたように踊り続ける。

「そこの、小娘、私の話を聞きなさい」

玲は雷を落としたが、私はそれどころじゃない。

「るみか様、あなたの事ですよ」

「えっ、私?」

ふと玲を見ると、モーブの言う通り私を見ている。

「あなたは、この遊園地の跡継ぎの娘ね、

初めまして、跡継ぎちゃん」

その一言で、私の思考回路が停止した。

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