第7章 2

 潤沢な資金を手に入れた旬一はしばらくの間ホテルで暮らすことにした。食堂から出たときに旬一の手元に残っていた現金は僅かであったので、多額の現金を隠しておいた山林まではほとんどの道のりを歩いて行かなければならなかった。食堂で食事をしていなかったならば目的地までたどり着くことができたかどうか疑わしい。

 ホテルの部屋のベッドに横になるやいなや旬一は死んだように眠りに陥った。刑務所にいた間に蓄積したストレスと、山林まで歩いていったことからくる疲労によって、旬一の体も精神も限界に達していたのだ。

 目が冷めてホテル内の日付表示がある時計を見て、まる二日間眠り続けていたことを知った。このようなことは生まれて初めての体験であった。ホテルには長期滞在の予定でチェックインしていたし、部屋のドアノブに掛けてある札は室内掃除無用の方を見えるようにしておいた。そういうわけでその間睡眠を妨げられることはなかった。

 極度の空腹を覚えたので真っ先に頭に浮かんだのは食事をどうするかだ。いろいろな意味でホテルのレストランに足を運ぶ気にはなれなかった。ルームサービスの冊子がすぐに目に入ったので手にとってみた。食事のメニューのページをすぐに開くことができた。レストランで食べるよりも割高であるが、潤沢な資金を手にしている今金に糸目をつけない心境である。メニューの中でも特に値のはるものを3セット分注文した。

 極度の空腹のゆえだったのでしょう。豊潤な料理はまたたくまに平らげてしまった。シャワーを浴びて部屋着に着替えたあと、心地よい眠気を感じた。ベッドに横になるいなや深い眠りに陥った。

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