第6章 4
「響子が有給休暇を取ったの、知ってる」
妙が、ダージリンのティーバッグを、ティーカップに入れ、お湯を注ぎながら言った。
「ええ、知ってるわよ。何処かへ行ったのかしらね」
友梨が、カモミールのティーバッグを、ティーカップに入れ、お湯を注ぎながら言った。
「友梨、知っているんじゃなかったの」
「ええ、何も聞いてないわ。ただゆっくりと一日を過ごしたいだけなんじゃない」
「響子、大変なこと経験しちゃったからね。私だったら何日も会社に出てこられなかったかも知れないわ。響子って強いと思うわ」
「そう、あの事件の後、普通に会社に出てきていたから精神的に強いんだなと思ったわ。それにあの後、ストーカーの被害にあったみたいだから」
「えー立て続けに大変な目にあったのね」
「ストーカーといっても列車の同じ車両に乗り込んで、響子のことをずっと見ているだけみたいだけどね」
「でもそれだけでも、されている方は気持ち悪いよね。見ず知らずの人がずっとみているんでしょう」
「響子は学生の時、同じようなストーカー被害にあったみたいだけど、今度の加害者は同じ人みたいなの」
「えーそれほど顔を覚えていたわけね。でも、気持ち悪いわね。響子、本当に大変だったわね」
「響子は水源島公園の沼地での事件の被害者として、事情聴取を受けたんだけど、二回目の事情聴取が終わった後、そのことを話したようなの」
「よく聞いてくれたわね。ただ見ているだけの行為では、被害届けを出しにくいでしょうから」
「事情聴取に3人の担当の人がいたようだけど、その3人は、事件現場で、事件を予知して、待機していたようですけど、現行犯逮捕は彼らがしたんですって」
「その3人が響子の被害者としての調書を取ってくれた人たちね」
「その3人の中に奥さんが病気が原因で亡くなった人がいて・・・その奥さんが響子にとても似てる人みたいだったわよ。それが瓜二つというか・・・生き写しというか・・・」
「それって双子みたいに似ているってこと」
「それ以上みたい」
「現実世界でも、不思議なことがあるのね」
「それで、その人は、響子のストーカー被害の話を真剣に聞いてくれて、対処してくれたの。他の二人も協力してくれてみたい」
「どんなことをしたの」
「響子が乗った列車の車両に、そのストーカー加害者が乗り込んだとき、一緒に乗り込み、そのストーカー加害者をずっと見ていること。ただそれだけを3人で交代にしただけみたいよ」
「つまり、響子がされたことをしたというわけね。それくらいのことで効果があったのかしら」
「それが、そのストーカー加害者は、地は真面目みたいよ。ストーカーというより、どちらかと言うと、追っかけだったりしてね」
「ストーカーだったら、家までついていくわ。でも警察のひとよくそこまでしてくれたわね」
「そう非番の時間を使って三人で割り振ったみたい。亡くなった奥さんが響子に似ているという警官が一番動いてくれたみたいだわよ」
「その警官はそれだけ奥さんを愛していたということかしら。でもそういうのって、響子からしてみると嫌じゃないかしら」
「でも、そんな感じはしなかったわね」
「その警官いい人なのでしょうね」
「響子の口ぶりからするとそんな感じね」
「響子最近雰囲気変わったと思わない」
「そうね、あんな事件があった後なのに、生き生きしているね」
「商品部情報課がなくなって、新しい部に配属されたからかしら」
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