第5話  叔父さんのごあいさつ? ~ホラーな話し①~

 あれはいつのことだったでしょう。


 妹が小学生で小烏が中学に上がった頃のことだったと思います。

住み慣れていた街中まちなかの古い家が道路の拡張で立ち退きになり、郊外の方に家を建てて引っ越したころのことです。


 母は兄、姉、本人、妹、弟の5人兄弟で、高校進学で東京に出てしまった兄以外とは仲が良く家族ぐるみの付き合いがありました。

お互いの家もたびたび行き来していたので、小烏姉妹は年代の違う従兄弟たちとよく遊んでいました。


 母方の叔父さん(母の姉の夫)はお酒が好きな人でした。

悪い酒ではないのですが、酔っぱらうと変に行動的になってしまうようでした。

叔父さんはうちの家のことをとても心配してくれていました。


 小烏の祖母は婿取りをしたお嬢様で姑の苦労もなく、体も弱かったので家事は人を雇ってしてもらっていました。

早くに亡くした娘をとても可愛がっていたようです。

嫁に来た(小烏の)母を、何かと亡くした娘と比べていたようです。

祖母に介護が必要なわけではなかったのですがとにかく家事をしなかったので、母は実家に泊りがけで帰ったことはありませんでした。


 叔父はそのあたりのことを叔母経由で聞いていて、それで我が家のとこを気にかけてくれていたのだと思います。

酔うとたまに我が家にやってきて、玄関先でやたらと心配をして帰って行きました。

ある日、一升瓶を下げてやってきたことがあります。

かなり千鳥足でした。


「勲君(小烏の父)とチョッとしゃべらんといけん。

これでも飲みながら、話そう!」


 その日叔父は、父と話をしたいと玄関先でふらふらしながら言いました。

残念ながら、その時父は留守でした。

しかも実家がみんな下戸。


 「お義兄さん、うちの人は飲めんし、仕事だわ。」

「いや、飲みながら話そう。」

「飲めないし、今留守。」

というやり取りが何回か繰り返されました。


母と叔父のやり取りを、母と一緒に玄関に出てきていた小烏は見ていました。

うちではお酒を飲む人がいなかったので、「酔っ払い」が珍しかったです。


 そのうち叔父さんが下げていた一升瓶がドアにカコンと当たって、パリンと割れてしましました。

玄関に散らばる茶緑色のガラス。

どんどん広がる酒。

叔父さんの手に残る一升瓶の首のところ。 


 叔父さんは本当に残念そうに、


「あー。いい酒だったのに!」

そう言って、肩を落としてとぼとぼ帰って行きました。

片手には割れた酒の瓶の口のところを持ったままだったと思います。

母は大急ぎで散らばるガラスを拾い、新聞とタオルでこぼれた酒をふき取り、叔母のところに電話をしていました。


 その数日後。


 折しもクリスマスのことです。

居間にはこじんまりしたツリーが飾られ、電飾がキラキラしていました。

その日は父は仕事が休みで、両親とも家にいました。

妹と小烏は二階の自室にいたような気がします。


 ダダダダン!

昼過ぎ、突然何かが上から落ちてくるような、大きな音がしました。


 驚いた両親は小烏たちを呼んで、居間にいるように言いつけました。

妹と小烏はなんとなく恐ろしくて二人くっついていました。


「泥棒かも!」

母が心配して、家中を確認しました。

父は窓から外を確認していました。

しかし、特に変わったことは何もありません。

「あの音」は何だったのだろうと不思議でしたが、家族みんなが聞いたので空耳ではなかったと思います。

気のせいにしては、大きな音でした。


 両親があちこち確認している最中、電話のベルが鳴りました。

当時は黒電話。

今から思うとちょっと脅迫的な大きな音です。


 それは、叔母さんから電話でした。

叔父さんが亡くなったというのです。


 職場の階段を踏み外して三段ほど落ち、頭を打って病院に運ばれたが意識が戻らないまま先ほどあの世に旅立ったのだそうです。


 あの落ちるような音は、もしかすると叔父が落ちた時の音だったのでしょうか。

家族でそんな話をしました。


 階段を落ちて、頭を打って亡くなる。

ドラマではたまに見かけますが、本当にそれで亡くなることもあるんだと思った出来事でした。


(相互さんのお話しを呼んで、思い出したエピソードです)


*********************


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