きらびやかな世界じゃないけれど。子供達がつかみ取るそれぞれの未来へ。

  • ★★★ Excellent!!!

 他であまり見かけないアジアンファンタジー。アジアをモチーフにしたファンタジーというと、中華風の後宮の話のようなきらびやかななものが思い出されますが、こちらは東南アジアの方面で、現実世界で言うなら世界大戦前後の植民地支配が当たり前だった時代の頃を異世界ファンタジーに仕立てている感じでしょうか。

 前作が存在し、そちらは二十四の瞳を彷彿とさせるような小さな農村の学校における先生と生徒の触れあいでしたが、今作は主人公マルが成長し思春期を迎えてからの物語になっていて、これまでの友人知人から引き離され、全寮制の学校に入れられてしまうお話がメインで、国家間のごたごたや、選民意識、差別意識を見せ付けられ、指導という名の暴力に怯えながらも、ライバルに勝とうと奮闘したり、かつて村で自分を指導してくれたヒサリ先生へのモヤモヤを抱えたり、同室のシンとの友情を育んでいく成長物語となっています。
 ヒサリ先生によって広げられた視野は、子供達の選択肢を広げていきますが、皆が皆、良い道を選ぶとは限らないというのが哀しいほどにリアル。

 かつての子供達が不条理な世界で、どのような未来を作り上げていくのか、目が離せない物語です。

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