前のエピソード――誘うがわからない（世間路　ズレ麻呂）

　仲良くなりたい。知り合いとかじゃなくて、もっと深い仲。友達、親友、恋人。でも怖い。

　仲良くなるにはどうしたらいいだろう。周りに人が集まってくる人を思い浮かべたらいいかも。やっぱり魅力がある人かな。面白いことが言えたり、楽器が演奏できたり、語学に堪能だったり、機械に強かったり、頭の回転が速かったり、物知りだったり、みんなでやる趣味を持っていたり。特に笑顔で明るくて元気な人。こういう人は友達たくさんいる気がする。新しい場所に行っても知らない人とすぐに打ち解けてしまう。

　自分にそんな魅力があるか自信ない。だから他の人に本当の自分を受け入れられるかどうかが怖い。こちらが笑顔でも向こうは笑ってくれないかも、だから無表情でいる。自分の話題、趣味興味ないかもしれない。こちらが話しかけても相手は冷たい反応を返すかもしれない。だから話しかけない。こちらが仲よくしようとしても向こうはそう思わないかもしれない。だからそのままでいる。

　でも、受け入れられなかったら、でも恐れて出さないと受け入れられるかどうかはわからないまま、表層的な、浅いその場限りの関係で終わってしまうかも。

　無表情で緊張して何も言わなければ、向こうこそ「私と一緒にいて楽しくないのかな」と思って緊張して無表情になったり遠慮して話しかけてこなくなったりするのかも。もしそうだとしたらどれだけ魅力のある人でも何もしなかったら友達できないということになる。

　ということは自分が仲よくなりたいという姿勢を見せることが一番大事なのかも。

　もしかしたら。実は向こうも人と関わるの平気そうな顔して怖がっているのかも、その怖さとともに進んでいくか諦めていくかという違いなのかも。

　あと、そういえば彼らって自分を大事にしている人が多いかも。

　自分を大切にしようとするから嫌なことや疲れたことがあっても、自分を労わる、ゆっくり休む。そして元気になった余力でいろんな人に話しかけていろんな話をする。どこかに出かけたり、趣味に没頭したりする。そしたらいろんな経験をして人と会話するときのネタがたくさんできる。さらにそのネタを話してまた誰かとつながることができるかも。

　結局根本は自分を大切にすることなのかも。まずは自分と仲良くなることなのかも。