第4話 激闘!グレータースネーク

 

「こんにちは。今回は違うクエストで来たんですけど、場所がどこか分からなくて」


 場所は町の西にある森。

 ついさっきお母さんボアの依頼を受けたギルドの報告員であるお兄さんに話しかけている。


「ああ、マールさん。さっきはどうも」


 お、お嬢ちゃん呼びじゃなくなった。

 前回別れる時は認められたもののお嬢ちゃん扱いだったのに。

 なんでだろう?


「はい。それで案内の方を頼みたいんですが」


「拝見しよう」


「これです」


「これは!」


 報告員のお兄さんは青ざめた顔でこちらを見据えてきました。


「どうされましたか?」


「ああ、いや。森のヌシ様と相対するには経験不足だと思ってね。今レベルはいくつほどある?」


「10です!」


「なら14くらいまで上げてからいくと良い。マールさんは一人で立ち回るのだろう? 6人のフルパーティでだったらそのレベルでも申し分ないんだけど、ソロだと些か厳しい相手だ」


「なるほど。参考にさせていただきます!」


「そして場所はボアの生息地からまっすぐ行った場所に湖がある。そこにヌシ様は居られる。無理に倒そうとはせずに、正気に戻すだけのダメージを与えてくれ。今回はそれだけで良いよ。討伐証明も必要ない」


「それで正気に戻ったかどうかわかるんですか?」


「うん。森のヌシ様のご機嫌が悪い時は森一帯に雷雲が集まっているんだけど、正気に戻れば空が晴れ渡るからね。それを確認できたら終了だ」


「分かりました! 無理せず、道中でレベルを上げてから向かいますね」


 大手を振ってお兄さんと別れる。

 道中はやっぱりうさちゃんに絡まれた。

 今回はお肉だけにしてミニボアモフリに専念する予定。

 普段は怖がられて近寄ってもらえない分、堪能する所存である。

 そこでやってきたお母さんボアを倒してれば自然にレベルは上がるよね? これぞ完璧な計画! ふっふっふ。


 そこで私は気付く。

 これ以上本を痛めては本好きとしてどうなのかと。

 だから装備から外し、手に入れた称号を検証する事にした。

 お父さんは言ってた。これからは女の子も強くなくちゃいけないって。伝手で習った護身術を私の体が覚えている。

 こればかりは叩き込まれたものだけど、案外覚えているものだと実感する。


 深呼吸をして精神を統一。正中線に構えて、ビッグボアと相対す。すると相手の行動が手に取るようにわかった。

 足元の土を掘る動きは力を貯める時。

 一瞬屈むときは突進攻撃の前兆だ。

 だから私は突進攻撃だと予測して、どんなに硬い骨で覆われていようと、揺さぶれば軽い失神を狙える顎に向かって正拳突きの構えを取る。


 |ビッグボアが現れた。

 |ビッグボアは力を溜めている。

 |マールは様子を見ている。

 |ビッグボアの突進攻撃!

 |マールの超直感! 

 |ミス! マールは華麗に身を躱した。

 |マールのジャストカウンター!

 |ビッグボアに30ポイントのダメージ!

 |ビッグボアは勢いのまま宙に浮き上がる!

 |マールの超直感!

 |マールは朧車の構え!

 |ビッグボアは背中から地面に叩きつけられ、転倒した

 |ビッグボアは起き上がれない。

 |マールの正拳突き!

 |会心の一撃!

 |ビッグボアに36ポイントのダメージ。

 |ビッグボアをやっつけた!

 |ビッグボアのお肉を手に入れた。

 |ビッグボアの毛皮を手に入れた。

 |マールはレベルが上がった!

 |生命が10UPした。

 |魔力が10UPした。


 おぉ、良い感じだね。

 嫌々習った合気道がこんなところで役に立つとは。

 お父さんに感謝しなくちゃいけないね。

 お肉と毛皮もゲット!

 ガンガン行くよー!


 ~~ひたすら流れ作業なのでカット~~


 はい!

 と、言うわけで私のレベルはようやく14になりました。

 わーパチパチ。


 途中でお肉が尽きてうさちゃんの生息地に引き返したりしたけど、概ね順調と言えるね。

 鞄の中はボアの毛皮とお肉がたくさん詰まってる。

 受付のお姉さんも言ってた。レアな少数の素材よりも、通常素材を大量に持っていく方がお金になるって。


 それに今回は正気に戻すのであって討伐はしない。

 だからお肉と毛皮のみになってる。

 我ながらガメツイなと思うけど、もし図書室に入るのにお金が必要だったりしたら困るからね!

 だからお金はあっても困らない。

 お父さんもよく私に言い聞かせてたし。


 さて、奥に行けば泉があると言ってましたがこれかな?

 先ほどまでのどこか長閑な雰囲気は消え失せ、風に吹かれて木々がざわめき、空に暗雲が漂い始める。


 ギルドの報告員さんは、ヌシ様と言っていた。

 でも湖の中から頭を出したのはおっきな蛇さん。


「ジュァアアアアアアアア!!」


 凄い威圧がビリビリ来る。

 でも、こんなもの兄貴の本気のメンチに比べるまでもない。

 お父さんの裏の顔を知ってる私からしたら可愛いもの。

 さぁ、行くよ!


 |グレータースネイクが現れた!

 |グレータースネイクの威圧睨み!

 |ミス! マールには効果がない!

 |マールはビッグボアのお肉を差し出した。

 |グレータースネイクはビッグボアのお肉に夢中になっている

 |マールはビッグボアのお肉を差し出した

 |グレータースネイクはビッグボアのお肉に興味はないようだ。

 |マールは集中している

 |グレータースネイクの巻きつき攻撃!

 |マールに15ポイントのダメージ

 |マールは身動きが取れない!

 |グレータースネイクの噛みつき攻撃!

 |マールの超直感!

 |ミス、マールはひらりと身をかわした

 |マールのジャストカウンター!

 |グレータースネイクに30ポイントのダメージ!

 |グレータースネイクは力を溜めている

 |マールはビッグボアのお肉を差し出した

 |グレータースネイクはビッグボアのお肉に興味はないようだ

 |グレータースネイクの放電攻撃!

 |マールに50ポイントのダメージ!

 |マールは感電して身動きが取れない

 |グレータースネイクはビッグボアのお肉に夢中になっている


 ふぅ。確かに強敵だ。

 でも意外とお肉作戦が効いている。

 放電攻撃は強力な分、連発はできないみたい。

 お肉作戦は続行で良いかな?

 お肉は帰りにでも持って帰れば良いし、消費もやむなしだ。

 バッグからお肉を取り出して差し出しつつ、勝機を見出す。


 |マールはビッグボアのお肉を差し出した

 |グレータースネイクはビッグボアのお肉に興味は無いようだ

 |グレータースネイクの猛毒噛みつき!

 |ミス、マールはひらりと身をかわした!

 |マールのジャストカウンター!

 |グレータースネイクに30ポイントのダメージ!

 |マールは集気法を使って生命を25ポイント回復した

 |グレータースネイクはビッグボアのお肉に夢中になっている

 |マールはビッグボアのお肉を差し出した

 |グレータースネイクはビッグボアのお肉に夢中になっている

 |マールの正拳突き!

 |会心の一撃!

 |グレータースネイクに45ポイントのダメージ!

 |グレータースネイクは正気を取り戻した


 あー、もう疲れたー。

 今回は随分とダメージを貰ってしまった。

 でもオットーさんの装備や、報告員のお兄さんからの助言を聞いていたからなんとかなった。あとはお肉かな?

 あんなに大きな体してるもん。うさちゃんのお肉じゃお腹すいちゃうよね。


『よくぞ我の正気を戻してくれた、小さき者よ』


「え、誰?」


 急にかけられた声にあたりを見渡す。が、近くには誰もいない。


『こっちだ、小さき者よ。先ほどお前と相対した存在よ』


「え、ヘビさん喋れたんだ!? 早く言ってよー」


『フム。こうして話が通じたのは数年ぶりじゃがの。普通は我の言葉に耳を傾けずに立ち去るものが多かったのじゃが、お主はきちんと耳を傾けてくれた。だからこうして語り合う機会が出来た。感謝するぞ』


「そっかー。こんなところにずっと一人ぼっちじゃ寂しいよね。お友達はいないの?」


『我が生まれたのはここよりもずっと北にある、海を渡った先にある大陸じゃ。兄弟とは散り散りになってな。それ以来はずっとここに隠れ住んでおるのよ』


「そっかー。じゃあ、たまに私がお話相手になってあげるよ」


『良いのか?』


「全然オッケー。ついでにお母さんボアのお肉も持ってくるね? 凄い食いつきっぷりだからきっと好物なんだろうなって」


『ふふふ。バレてしまったか。そうじゃのお、ちと空腹であったからな。それとお主、名は何という?』


「マールだけど?」


『ではマール。今日から我はお主の召喚獣じゃ。困ったときはいつでも呼ぶが良い』


「はい?」


『その銀の濡れ髪に褐色の肌。お主はダークエルフの魔導士であろう?』


「えーと、まぁ、はい。一応は」


『で、あればだ。オーブに我を封じ込める事によって契約は完了する』


「えーと、ごめんなさい。オーブは今持ってないんです」


『そうか、では契約は次回に持ち越しじゃな。次に会う時を楽しみに待っているぞ』


 言いたいことだけ言って、ヌシ様は湖の中に潜っちゃった。

 契約って言ってたけど、したほうがいいのかなー?

 私はただ本が読みたかっただけなんだけど。取り敢えずはクエストの完了サインだけもらいに行こう。

 天気は晴れてるし、お兄さんはわかってくれるよね?


 ──────────────────

 プレイヤーネーム:マール

 種族:ダークエルフ

 種族適性:魔法攻撃力+10%、水泳補正+10%


 冒険者ランク:E

 LV:14/20

 依頼達成回数:2回

 称号:『蛮族』

 資金:3320G


 生命:100/140

 魔力:140/140

 

 筋力:100

 耐久:0+[+15]

 知力:3+[+1]

 精神:0+[+11]

 器用:0

 敏捷:0

 幸運:0

 割り振り可能ステータスポイント:26


 武器:初心者の本★[知力、精神+1]

 体上:タランチュラベスト[耐久+15、精神+10]

 体下:初心者のスカート

 頭部:なし

 装飾:なし

 装飾:なし


 ◼️戦闘スタイル【ダークエルフ】

 <物理:素手>苦手:威力20%ダウン

 気合の咆哮

 ジャストカウンター

 飛び蹴り

 正拳突き

 羽交い締め

 超直感

 朧車

 集気法


 <魔法:杖>得意:威力10%アップ

 なし


 <補助:本>

 なし


 <召喚:オーブ>

 グレータースネイク(予約)

 ──────────────────

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