二度目は
その後の勉強会もちょくちょく気まずくなったものの、初日と比べれば冷静だったと……思う。
——時刻は7時。
「お待ちかねのー、炊き込みご飯の登場でーす」
「うひょー!! うまそう!!」
夕飯でも食べていくかという依子の誘いに勉強疲れで空腹だった俺は即答で「食べたい!」と言った。
依子が土鍋の蓋をとると、かぐわしい匂いがふわっと舞い上がった。バター香る鮭としめじの炊き込みごはん。
ぐぅぅぅ、とお腹が鳴るのは当然だ。
「ん。うまくできたっぽい。よかった」
「一か八かだったんかい」
「ちゃんと味が染み込むか心配でさ。うん、色合いからしていいね」
他にも料理が並べられる。
向かい合って座わり、いただきますを言ってから食べ始める。
「ん! うまっ!」
「そりゃ良かった。今日は勉強はかどった。ありがとう」
依子はそう言って柔らかい笑みを浮かべる。
……そうだよな。依子は終始真面目に取り組んでいた。対して俺は……申し分ないっ!!!
「お、俺の方こそだよ。飯まで作ってもらって悪いな」
「別にいいよ。1人で食べるより2人で食べた方がいいし」
依子は1人暮らし余計そう思うだろう。俺の両親も出張中で家では妹と過ごしている。そういや
「ねぇ透矢」
「ん? どした」
視線を向けると、依子は何やら頬を少し染め、ソワソワ。本当にどうしたのだろう。
「あのさ……」
「おう」
「今日……泊まっていく?」
「………」
依子からの思わぬ発言に食べる箸が止まった。
またフラッシュバックする。依子の身体が体温が息づかいが先ほど起こったことのように鮮明の思い出される。胸が熱くなって、頬も熱くなる。
「……もし今日泊まったら俺は、止まらないかもしれない」
「止まら!? え、え?」
依子はますます顔を赤らめた。そりゃこんな発言すればだよな。でも俺は告白の返事を待たせている分、正直に自分の気持ちを伝えるって決めたんだ。
「まぁ……その……あの時はヤっちまったとかの罪悪感の方がデカかったけど……依子の告白聞いたり、周りからカップルだとか勘違いされて、そんな罪悪感は薄々なくなって……。も、もちろん3回ヤった事実は変わらないし、それなりの責任は取るつもりだぞ!! でもその……悪い気がしないというか……」
「っ、透矢……」
あー……恥ずかしい。けど、言葉を続ける。
「今の俺は揺れているんだ。この感情は一体どちらか……それが決まるまでは半端な答えは出せないと思っている。つまりはその、気持ちが整理するまでお泊まりは……遠慮と言うことで」
「ふ、ふーん……そう。それなら仕方ない……」
またお互いに黙る。けれど気まずいというよりは……互いに嬉しいといった感情の方が強いだろう。
中間テストが終わった放課後。時刻は1時過ぎ。
早く終わったので何をしようかと考えながら校門を出ようとした時、誰かが隣にきた。
「置いていくなし」
依子だ。
「いや、クラスメイトと話してたから邪魔かなーと」
教室を覗いたら何やら女子に囲まれたし。
「あ、あれはクラスでカラオケでお疲れ様会をしよってことで誘われて……」
「なるほどな。で、今ここにいるってことは断ってきたのか?」
「そういうことになる。だってアタシ歌歌うのとか苦手だし」
「楽器弾くのは上手いだろ?」
「いやいや。アンタはカラオケ屋をなんだと思って……」
今日も今日とて2人で校門を出る。
それからどこかに寄る? みたいな話題はなると思ったが——今回はそうはならなかった。
「ちょっといいですか?」
待ち伏せしていたかのように声を掛けてくる女の子がいた。
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