第44話 白愛会と巨大組織の亀裂

桜野中学校は桜島市の北側の山岳地を所在地とする私立の学校であり、昔は全国の問題児や不良が集まる事で有名で、日本の危険地域にも指定され、表向きは男女共学を掲げていたが生徒はほぼ男子が占め、学校内も各派閥が学校の覇権を狙い、常に争いが絶えない状態であった。


そんな学校にある二人の少女が入学した。


それが黒戸くろと くれない緑山みどりやま しずくの二人であり、二人は入学してすぐに紅が学校を制覇して覇権を手にし、一年にして生徒会長就任、元々いた学生の問題児や不良を退学に追い込み、現状を放置していた教師、理事会を全員解雇、その為学校は運営不能に陥った……しかし次の年に紅の噂が瞬く間に全国に響き渡り、次の年から入学希望者が殺到、優秀な教師も集まる様になり、学校経営が直ぐに回復した。


この桜野中学校の現在の生徒はほぼ白愛会に在籍しており、都市伝説でここが白愛会の総本山とも呼ばれていた。


ちなみに白愛会はくあかいとは、それは世界的秘密結社の一つであり、構成員一万人、準構成だけで十万人と噂される巨大な組織だ、基本は黒戸 白を愛する者共ものどもが集まって作られたとされ、日本政府にも一目置かれる秘密結社組織である。


会長に桜野中学校生徒会長の黒戸くろと くれないき、副会長に緑山みどりやま しずく、その他に書記や財務、防衛などなど独立国家の様な組織図で構成された幹部達が並び、それとは別に隠密おんみつ部隊や諜報ちょうほう部隊、相談役などの紅直属の部隊も存在する。


隠密部隊は桜野中学校二年の綺麗なコバルトブルーの髪で、後ろ髪をお団子で束ね、片目を前髪で隠し、もう片方の目は鋭い眼光した、Bカップでちょっと貧乳なスレンダーな渋谷しぶや りんが率い、白愛会一番の武闘派部隊である。


ーー

ーー

ーー


〜桜野中学校生徒会室〜


黒戸 白逮捕から一時間が経った頃ぐらいに、緑山 雫と隠密部隊の面々が紅の指示の元集結していた。


「雫さん! どう言う事ですか、白様逮捕とは?」

隠密部隊のリーダーである渋谷 凛が雫に詰め寄る。


「ごめんなさい、私達が想像する以上の予想外な事が起こってしまったの」

雫は隠密部隊のメンバーに簡略に説明する。


「諜報部隊の話では、白様は逮捕された上に病院に搬送されたと……もう何がなんだか……」

凛は意味が分からないと、イラだちを隠せずにいる。


「私も今起こってる事に戸惑っていて……整理がついてないの、ただ会長は一度学校に戻り待機していてと言ってたわ」

雫も現状何をすればいいか分からず混乱していた。


「そもそも会長は何してるんですか? こんな大事な時にみすみす白様を逮捕させて、その上また白様を傷つけ放置するなんて、そもそもこの前のショッピングモールの久須って屑野郎の件だって未だに報復命令をお出しにならないし……私は、私は白様を傷つけた奴を許せない! 会長がやらないのならば私単独でもそいつらを片付けさせてもらいます」

凛は大好きな黒戸 白が傷つけられた事で怒りをあらわにしていた。


「凛……あなたの気持ちは痛いほど分かるは……私だって、私だって……白くんを傷つけた奴らを、白くんに手を出した事を後悔するくらいの痛みと恐怖を味あわせてやりたいくらいよ……あのクソ骨川や久須、白くんの生活を脅かす全ての者共に……」

雫は凛ですら恐怖する形相で語り出した。


「だ、だったら……だったら私達だけでも行動を起こしましょうよ? 雫さんだけでも立ち上がってくれるなら私達隠密部隊はいつでも緑山 雫と共に戦います! 私達だけじゃない、諜報部隊も白様を想う者達はきっと雫さんを支持し戦いますよ!」

凛は雫の手を取り、雫に懇願する。


「で、でも、会長が……」

雫は困った顔をした。


「雫さん、知ってますか? 白愛会の内部では紅会長に不信感を持っている者が少しずつ出ている事を……もし今回の事が他の白愛会メンバーに知れ渡れば内部崩壊だってありうるんです……だから今立ち上がれば、まだこの不信感を払拭ふっしょく出来る可能性が残っているんです、雫さんお願いです許可を、共に白様の報復をしましょう!」

凛は純粋な目で雫を見つめ、白の事を想う気持ちが強いばかりに、今回の白に起こった事にいきどおりを感じていた。


「そ、そうよね、私ですら今回の会長の決断は納得できない事もあったし……他の何も知らされてない白愛会のみんながこの事を知ったら不信に思ってしまうわよね……ねぇ凛……私は会長ほどの強さはないけど共に一緒に戦ってくれるかしら?」

雫は自問自答しながらも、瞳に強い気持ちを宿し、凛に不安ながら自分に着いて来てくれるか問いかけた。


「もちろんです! 私達は紅さん、雫さんに憧れ尊敬して、白様を愛して白愛会に入ったのですから、その雫さんとならどこへでも着いて行きますよ!」

凛はさっきまでとは打って変わり、とても嬉しそうな笑顔で雫に笑顔を返した。


「……分かったわ、私達で今回の白くんに対しての報復を、後悔をさせてあげましょう」

雫も腹をくくり、声をあげるとそれに答えるように渋谷 凛率いる隠密部隊も腹を括った表情を浮かべ。


「「はい!」」

部屋には闘志みなぎる声が響き渡った。



その後、雫の下に諜報部隊も加わり、計二十一人の白愛会の精鋭部隊が集まり、骨川財閥の報復へと向かった。


この行動がのちに最悪な結果を生む事を知らずに……


ーー

ーー

ーー


〜桜台中央病院〜


時は変わって桜台中央病院の一室。


「至急この子の治療にあたってほしいの、身元はまだ分かってないけど後ほど調べて教えるは」

火野ひの 京子きょうこは病院の受付で手続きをしていた。


「え〜と、この子ですか……ん!? あ〜大丈夫ですよこの子の身元は分かってるので、ちょうど前にほらショッピングモール事件の子でしょ? 確か黒戸 白君ですね、また怪我したんですか……見た目は大人しいのに意外にやんちゃなんですね」

受付の女性は運ばれた患者を見るなり患者の顔を覚えており、手続きはスムーズに進んだ。


「く、黒戸 白!? こ、この子があの時の……」

火野は名前を聞かされ驚いた……


「いったい今この街で何が起こっているの、裏で何者が暗躍し、誰が敵で誰が味方なのか……」

火野はらずらずのうちに自分もまたその裏の世界の境界線に足を踏み入れている事にいま気付かされたのだった。


そう、この黒戸 白と言う一人の少年を中心に……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る