第39話 骨川刑務所襲撃〜前編〜

黒戸 白の復帰の日、別の所でも黒戸 白の為に動いている者がいた。


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〜暗黒白虎組〜


「すいまへんな皆はんこんな朝早くに、今日集まって頂いたのはある舐め腐った男をるにあたりまして手を貸して頂きたく……私事わたくしごとではありますがよろしゅうお願いいたします」

茜は組事務所前に集まる黒いスーツの強面こわもてな男衆の組員を前に深々と頭を下げ挨拶をする、頭を下げてからしばらくして茜の携帯電話から着信音が鳴り響いた。


茜はゆっくりした動作で周りに一礼すると、鞄から携帯を取り出し電話にでる。


『あっ!? もしもし茜? いま家を出たわ、これから白愛会は東桜台高校周辺の守備に着くから、あんたにも渡した情報通りに久須 竜也のお兄ちゃん殺害計画の阻止をしてちょうだい……いい、失敗は許さないわよ! 私が独断であんたに情報を横流ししてるんだからそれに見合うだけの活躍してもらうから』

電話の相手は白愛会会長、黒戸 紅であり、今回は白愛会と暗黒白虎組は同盟を組んでおり、今の電話は作戦決行の合図の連絡だった。


「うっふっふっふっ、分かっております紅はん、あんたから貰った情報には感謝しておりますよて、白ちゃんをやった久須とか言う糞餓鬼には地獄を見せさせて頂きますから安心してそちらも白ちゃんをよろしゅうお願いしますフッフッフッ」

茜は紅の覇気をまとった様な声色とは正反対に落ち着き、力が抜ける様な口調で応える。


『ふん! 本当にあんたは掴み所が無いと言うか、あんたと話してるとこっちが気が抜けるわ……まぁいい、茜の強さだけは信用してるから、ここからは一切の連絡しないからね、後は任せたわよ』

紅は確認の連絡を終えると直ぐに電話を切った。 


「すいまへん大変お待たせして、では移動しまひょか」

通話を終えた茜はまずは集まった組員に電話に出た非礼を詫び、作戦決行の号令を隣の側近の若頭、もん 半蔵はんぞうへと呟くと。


「おし、お前ら! 今回は茜組長直々に出張でばるからな、みんな気合い入れて行けよ!!」

半蔵は集まったみんなに聞こえる大声で鼓舞こぶする様に叫んだ。


それに同調する様に大勢の組員も気合いの入った声で「「おぉ!!」」と叫び返すと、茜は半蔵のスーツのすそを少し引っ張り。


「半蔵はん……うるさい」

茜は耳を塞ぐ仕草で半蔵に対して意地悪そうな笑顔を浮かべ一言注意して、黒塗りの乗用車の後部座席へと乗り込んだ。


「す、すいやせん組長……組長直々の久々の喧嘩につい興奮してしまい」

半蔵は頭を掻きながら申し訳なさそうに謝る。


「よきよき、それよりさっさと行きますよてフッフッフッ」

茜は口に手を当てて小さく笑った。


茜が車に乗るとそれを確認した他の組員も全員車に乗り込み数十台の車が一斉に骨川刑務所に向かい走り出した。


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暗黒白虎組の車両が骨川刑務所に着くと車は建物周辺を囲むように駐車し組員は車から降りた、そして最後の車両が刑務所入口に停車すると直ぐに半蔵が助手席から飛び出し、周りを警戒しながら後部座席のドアを開けた。


「組長、到着しやした」

半蔵が深く頭を下げ報告。


刑務所からも何事かと玄関入り口から職員が覗き込む。


「半蔵はんおおきに、でわ私は行きますけども今からする事はあくまでも私事ゆえ、援護も加勢もいらんよて、みんなにもしっかりそう伝えておいて下さいませよ」

茜はゆったりとした口調で周りの組員の殺気だった雰囲気とは真逆にまるで散歩にでも行くような足取りで刑務所入り口へと進んでいく。


「いいんですかい若頭? 組長一人で行かせてしまって……」

組員の一人、安が茜の後ろ姿を見送りながら半蔵若頭に問う。


「良いも悪いもしょうがねーだろ、茜組長自身が私用だって言うんだからよ、俺だって最初は護衛に着くって言ったが断られて、譲歩して周辺の警護だけさせてもらう様に頼んだからよ、もうこれ以上は俺らが組長のプライベートに首を突っ込むのは野暮ってもんだろ」

半蔵も茜を見送りながら安に答えた。

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