第37話 黒戸 白と虚空の心

黒戸くろと しろの目の前で倒れうずくまる屑ゴミ、骨川ほねかわ 糞夫くそおは、肋骨ろっこつを何本も折られてもなお白に対して吠えていた。


「いいか黒戸! この俺様にこんな事してただで済むと思ってんじゃねーぞ、俺の親父はここいらじゃ顔も効くし、政財界、経済界にもパイプを持ってる、お前を必ず社会的に抹殺してやるからな!! それに久須君が来たらお前は終わりだクックックッ」

糞夫は少しずつ立ち上がり横っ腹を抑えながら、薄ら笑いを浮かべて脅しにかかる。


「久須? 誰かしらねーが、で……糞夫? お前自身は僕に対して何をするって言うんだ? お前の父親がどんな権力を持ってようが、その久須って奴がが来るとかそんな事は知った事かよ、今この場でお前は俺に何をするんだ? 言ってみろよ」

白は少しずつ糞夫との距離を詰める。


「お、おいお前ら、呆然と突っ立って見てんじゃねー! 久須君が来るまでにこの糞野郎をボコボコにしろや!!」

骨川は後ろにいる骨川グループの舎弟連中に怒鳴りちらし命令する。


「えっ!? あ、あぁ……コラァ黒戸! 調子こいてんじゃねーぞ」

骨川グループの一人が動くと、他の数十人の舎弟連中も白に向かい襲いかかり、連中は素手で殴ってくる奴、鉄パイプを振りかざしてくる奴、スタンガンを持ってる奴と色々といた。


最初に白に襲いかかってきた骨川グループの男は白の頭部目掛けて鉄パイプを振りかざし、白はそれを腕で防ぐが、そのすきに横から殴られ、後ろからスタンガンを打ち込まれ動けなくなる、すると再び鉄パイプを振りかざされ頭部にヒットし、白はその場に倒れ骨川グループ集団リンチにあった。


白の倒れた床には、先ほどハサミが刺さった傷口と鉄パイプで殴られた時に頭部に開いた傷で大量の血が水溜りの様に広がった。


「クックックッ、オラ! どうしたさっきまでの威勢は、骨川さんに逆らったらどうなるか分かったか?」

骨川グループの一人が白を蹴りながら吠えた。


「いい様だぜ黒戸、これで済んだと思うなよ、これからはお前の守ろうとしてる物全て壊してやるからな」

糞夫は倒れる白を見下みおろ嘲笑あざわらいながら白に罵声を浴びせる。


すると白の動きが止まり一瞬、周辺の空気がピリッと変わる、骨川グループの連中もそれを感じ取ったのか白への攻撃を一時止めると、再び白が少しずつ体を動かし始める、そして白に対して蹴りを入れていた男の足首を掴む。


「離せよコラァ! 殺す……ゔぅ!?」

骨川グループの一人が怒りと恐怖で吠えると、教室に骨が折れる音が響き渡り、それと同時に足首を掴まれた男の悲痛の叫び声が響き渡った。


「うぎゃぁぁぁ!!!」


白は血だらけになった身体をゆっくり起こし、立ち上がりながら骨川 糞夫と骨川グループに対して語りかける。


「さぁ……お前達のルールにのっとってやったんだ、当然骨川グループの奴らも正当防衛の範疇はんちゅうに入ったわけだよな?」

白は立ち上がると、近くにいた骨川グループ数十人に怪我をしてるとは思えない速さで素早く近づき、プロレスの前蹴りを繰り出し、先ほど白を攻撃してきた連中全員の足を砕く、教室には男の悲鳴が響き渡った。


「これで逃げる事はないだろう」

白は骨川グループの男共の倒れ動けなくなった事を確認すると、冷静沈着に何の感情も無い様な表情を浮かべ、単調な作業を行ったかの様に次の標的へと歩みを進めた。


「待たせたね、次はお前達だよな?」

白は教室の奥で姫野さん達が襲われそうになっていた時に楽しそうに騒いでいた骨川グループの女子達の方を睨む。


「当然あんた達もあの連中の仲間なわけだよな?」

白は睨み付けながら低い声でたずねる


「えっ!? えっ……わ、私達はただ……た、助けて、お願い、私達はただ、一緒にいただけで……」

骨川グループの女子達数人はあまりの恐怖にビクビクと体を震わせて、腰から落ちるように座り込み、その場で失禁しまっていた。


「なぁ? お前達がいじめてきた奴が『助けて』と言ってきた時にお前達はどんな対応をしてきたんだ? 見逃してやったのか?」

白は一切の感情を持たない低い声で骨川グループの女子を追い込む。


「そ、それは……ご、ごめんなさい、もうもうしませんから……お願い……た、助けて」

骨川グループの女子達は泣きじゃくり、彼女達周辺は糞尿の臭いが立ち込めていた。


「俺に謝ったてしょうがねんだよなぁ」

白は髪を掻きむしりイラ立ちを見せる。


「ご、ごめんなさい!」

彼女達はガクガク震え、涙、汗、唾液、尿とあらゆる水分を身体中から垂れ流し恐怖に硬直していた、そんな彼女達に白は拳を振りかざした。


ボコ! と教室に大きな音が鳴り響く。


骨川グループの一人の女性の顔の横を白の腕が通り過ぎて、壁に拳大こぶしだいの穴が開く。


「いいか謝るなら、白間 美希、沢村 礼子、姫野 咲に直接目の前で謝れ、約束が守れないならどうなるか分かってんだろうな?」

白は骨川グループでも女子のリーダー格ぽい、黒髪ロングの目尻がつり上がった青木あおき 稲穂いなほに耳元でつぶやいた。


青木は無言で震えながら首だけ動かしてうなずいた。


「だったらもうお前達に用はない……消えろ!」

白は骨川グループの女子達に背中を見せると、手でシッシッとあしらいながら軽く怒鳴った。


「く、黒戸……あ、ありがとう……三人には必ず謝りに行くから、約束するから……ごめん」

彼女達は震えながら、涙や鼻水を流し、糞尿を漏らし謝りながら教室を去っていった。


彼女達が去ってから、白は再び地べたに這いつくばる骨川グループの連中に近づき。


「悪いな待たせたか? どうだ楽しかったか今の彼女達の光景は?」

白は感情を一切捨てた声で屑達に問いかける。


「待ってくれ黒戸、俺たちはただ、糞夫に命令されてやっただけなんだよ、だから俺たちも見逃してくれよな」

骨川グループの雑魚どもは半笑いで、女子達が見逃された事で自分たちも助かるチャンスがあると思い、今まで散々骨川と一緒になって誰かを傷つけてきた責任を他人に押し付けて助かろうとしていた、白は骨川グループ男子達に笑顔で近づき言ってやった。


「見逃すわけねーだろ屑どもが、何のために足を折ったと思ってんだバーカ、これからがもっと楽しくなる時だろ? もっと笑えよ」

彼らは絶望に青ざめ、泣きながら命乞いのちごいをするが、俺は数十人の彼らの腕を一本一本折っていく。


そのかん、教室は彼らの叫びで地獄絵図と化し、傍観者の中にはゲロをを吐いたり、あまりの怖さに失神する生徒も現れた。


骨川グループ達の男達は手足を折られ、徐々に意識を失いさっきまで悲鳴と泣き叫び声で響き渡っていた教室は一瞬で静寂し沈黙に包まれ、「ふぅ〜」と白が一息つくと糞夫へと振り返る。


「ごめんな骨川、待たせて」

白は笑顔で骨川 糞夫に言う。


「ま、待て、分かった謝る、謝るから、頼むから見逃して……」

糞夫が最後まで言葉を発する前に白の拳が骨川の口に叩き込まれ、歯が何本か宙を舞った。


「これは美希の分だ……」

白は拳に付いた血を払い、倒れもがき苦しみながら口を抑える糞夫に向かい言い捨て。


「なぁ骨川、謝るのは大いに結構だ、人には間違いもあるし、ミスもある……ただよ、お前のやった行動は間違った上での行動なのか? お前のミスでいじめが起こったのか? 違うよな? お前が楽しくて、泣き叫んで苦しんでる人を見るのが楽しくてやった行動なんだろ? だったら謝る事はないじゃないか、目の前でお前の自称友達が泣き叫び苦しんでるんだ、笑えよ……楽しめよ!」

白は震え涙目になり、口や鼻から血を流し倒れてる糞夫の髪を掴み耳元で淡々と語りかける。


「もう、勘弁してください、助けてくだ……ぐわぁ!!」

糞夫は涙を流し助けを求めるが。


「これは礼子の分だ……」

白は口から血を垂らしながら、命乞いらしき言葉を吐く糞夫を無視して、糞夫の腕を掴むと、躊躇ちゅうちょなく腕の骨を折った。


教室には骨の折れる音がだけが響きわたり静まり返っている。


「なぁ骨川、楽しめよ、これがお前の大好きな世界なんだろ?」

白は糞夫の髪の毛を掴み、糞夫の頭を床に叩きつける。


「なぁ骨川、雫ちゃん……緑山 雫ちゃんを覚えてるか? あの子が泣きながらやめてと言った時、お前はやめてあげたのか?」


「ほ、本当に勘弁……して」

糞夫は泣きながらそれでも助けを求めてくるが、白は黙々と足を折る。


「紅、俺の大切な妹が、小学校入りたての妹が何も知らないで虐められた時、お前は……お前はどう思っていたんだ?」

白は苦しみ泣き叫ぶ骨川の髪を掴み顔を持ち上げ、骨川を睨みつけて問いかける。


「なぁ骨川、楽しいだろ? いつも今のお前の様に泣きながら助けを求めた奴をお前は嘲笑ちょうしょうしてきたんじゃないのか? だったら笑えよ!」

白はまた糞夫を床に叩きつける。


骨川 糞夫は気絶して何も言わなくなった。


「何も……何も面白くもない、何もスッキリしない……」

俺は頭を掻きむしり、気絶してる糞夫の腹を蹴り上げた。


「……」

教室は静まり返り何分が経っただろうか。


「あなた達なにしてるの!」

田中たなか 利里りり先生が教室に駆けつけ叫ぶと、続けて先生の後について来ていた赤髪の東桜台高校の制服を着た女性が何やら胸ポケットから手帳の様な物をかざし叫ぶ。


「全員その場を動かないで!」

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