第31話 白間 美希と繰り返される悪夢

黒戸くろと しろに手を繋がれ白間しろま 美希みき沢村さわむら 礼子れいこはお互い目を見合うと、なぜかその姿に微笑んでしまっていた。


「美希! なんか楽しいね」

礼子は普段は見せないような笑顔で話しかけ。


「うん、そうだね! なんでだろね、ただ学校に向かって登校してるだけなのに楽しくて仕方ない……白はどう?」

美希は礼子の問いかけに頷き応え、手を握ってる白にも美希が問いかける。


「えっ!? う〜ん……そうだね、長いこと誰かと登校とかって久しく無かったから……楽しいかな? そ、それに……美希や礼子さんと一緒だから尚更なおさらだよ」

白は照れながら笑顔で振り向き、二人を握った手を更に強めた。


「礼子さん楽しいって言ってくれてるよ! れ・い・こ・さ・ん」

美希は礼子に笑いながら『礼子さん』を強調するように伝達した。


「う、うるさい、美希! 言われなくても聞こえてるから……それと白、一言いい?」


「んっ!? な、なに?」


「『さん』要らないから『さん』は……それに『美希や礼子』じゃなくて『礼子や美希』だから、それか美希を抜いて『礼子』だけでも良いと思うよさっきの言い方は」


「えっ!? あ、あぁ……ごめん……つい癖で」

白は困った顔で謝る。


「わぁ〜酷い礼子、いちいち呼ばれた順番の事を気にするとか細かいし、そんな事ばかり言ってると嫌われちゃうよ礼子……さん、ブッ」

美希は更に楽しそうに礼子に言うと。


「この口か、この口が悪いのか」

礼子は左手で美希のほほを軽く笑いながらつねった。


「アタタタタ! も、も、もう何すんのよ礼子、痛いじゃない!!」

美希は怒る素ぶり見せ、心の中でなんだか不思議と、この関係が楽しいな〜と思いながら白と礼子を見つめる。


「ほらもう、学校に着くから馬鹿やってないで行くよ」

白は学校に近くなったからなのか、美希と礼子を握っていた手を離し先を歩いていく。


美希も礼子もなんだかその瞬間とても寂しい表情を浮かべ、握ってもらっていた手を見つめ、ただ手を握られているだけでこんなに嬉しく思える人に出会えた事に感謝する。


「私ね、白が好き」

礼子は美希の方を向かず、先を歩く白を見つめげる


「私だって白が大好き……だから礼子……いや、礼子さんには……プッ! ハハハハハ、ごめん、ごめん礼子……さん、笑いがこらえられない」

美希は真面目に礼子の言葉に返そうとしたが、『礼子さん』が壺に入り笑いを堪えられなかった。


「こ、こいつ……胸だけ大きいが取り柄のくせに」

怒った礼子は美希を羽交はがい締めにすると、美希の胸をもみほぐしてくすぐってきた。


「ちょ、ちょっと! くすぐったい、や、やめてよ礼子、ごめん」

美希はさっきの『礼子さん』で笑った上に、このくすぐりで笑い死にしそうになり、そんなバカな事をしながらようやく三人は学校に着く。


こんな楽しく学校を登校したのはいつの頃だろう、心を打ち明けあった美希も礼子も前よりも更に仲良くなったそんな気がした。


「一緒に行こう? 白!」

美希はそれも全部が目の前を歩く白のおかげなんだと白に駆け寄り左腕にしがみ付き、美希は照れながらもとても嬉しそうな笑顔で白に微笑む。


「あっ!? ずるい美希、なら私も」

礼子も白の空いてる右腕にしがみ付く。


「えっ!? でも、もうすぐ学校だし、他の人たちにも見られちゃうよ……僕なんかといたら変な誤解されて……」

白は慌てて二人の手を離そうとする、過去の過ちもあり。


「やだ! 白と学校行くの」

「私も別に他の人に見られても構わないよ」

美希と礼子はお互いより強く白の腕にしがみ付き離さなかった。


そのまま、美希も礼子も白にしがみ付いたまま教室に向かい、二人は白をはさみながら雑談し教室のドアを開けた。


「あっ、美希、礼子おはよ……ど、どうしたの二人とも黒戸くんと一緒なんて!?」

教室に入るなり咲は美希と礼子に気づき挨拶をしようとするが、二人が白と一緒にいる事に驚いた反応を見せていた。


美希はそんな咲の様子にはお構いなしにいつも通り咲に挨拶を返そうとした。


その時である……


咲の横からもう一人の男子が美希に対して挨拶をする。


「おう、美希! おはー」

「えっ? あっ、お、おはよう……骨川くん」

美希は横から突然挨拶され少し驚き、条件反射的に骨川 糞夫にも挨拶を返す、すると美希の声が聞こえてるのか聞こえてないのか、骨川は美希よりも、美希と礼子が腕を掴んでいる隣の男子、黒戸 白に目を向け、みるみる形相ぎょうそうを変え睨み。


その瞬間、糞夫のこぶしこうえがく様に白の顔面をとらえ、白はもろにそれを顔面に受けると、白は机や椅子を薙ぎ倒す様に後ろに倒れ、白にしがみ付いていた美希と礼子の二人もその勢いで床に尻をつく。


美希は突然の事に驚き顔を上げると骨川ほねかわ 糞夫くそお が仁王立ちで立ち。


「おい、黒戸! なにまた美希に手を出してんだ、調子に乗るなよ……」

そう言うと骨川は最後に強調するような言い方で、クラス皆んなに聞こえるように叫んだ。


「この ″ストーカー″ 野郎が」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る