第36話 何でも出来そう

「ほー! あったけぇなっ!!」


 サーナを助け出してから1週間後。


 スキンヘッドの男、ヴァロンはアジトの中で腰を手に当て嬉しそうに笑っていた。


 俺はアジトへと暖房(大)を2つ設置していた。


 DPは溜まりに溜まり、全部で2450 P。そっから食糧分の210 Pを引き、2240 P。それから100 Pの暖房(大)の2つ分を引いて、2040 P。


 まぁ、普通に考えれば増え幅が可笑しいとなるだろう。


 何故そんなにDPが増えたのか、その理由がこれだ。



 **********


 名  ダンジョン-アイスフェイスのアジト

 位階 1-0

 主  アノム

 領域 半径2メートル以内-霊王の洞窟-アジト内全域

 月日 約1ヶ月-7日


 モンスター数 

 ・ワーム

 ・ホワイトラビット×17

 罠数     0

 施設数    2

 ・暖房(大)


 侵入者 35


 Dスキル 移動


 DP  2040P


 **********



 いやー…まさか此処も俺のダンジョンと認識されるとは思わなかったな…。


 そう、実はこのアジト。俺のダンジョンへとなったのだ。位階が上がった所為なのか、それとも何らかの条件があったのか分からないが、侵入者が増え、DPの増加率も上がった。ハッキリ言って嬉しい。

 まぁ、2つのダンジョンが合わさって見にくい表示にはなっているが。


「アノム! ありがとよ! こりゃすげーぜ!!」

「「「アノムさん! あざーす!!」」」

「どういたしまして。でも気にしないでくれ。これで貸し借りはなしだろ?」


 そう。これでアジトの中へと攻め入った事や、見逃した事を許してくれる約束だ。

 アジトが俺のダンジョンへとなった事を含めれば、俺が礼を言いたいぐらいだけど。


「まぁ、そうなんだが…なぁ?」

「ん? 何だ?」


 ヴァロンがこめかみから汗を流しながら、ポリポリと頬を掻く。


 そんな申し訳ないと言いたげな…何だ?


「そ、それがよ〜…」


 ヴァロンは背後に居る手下達へと目を向ける。


「アノムさんとは仲良くした方が良いと思います…!」

「お、俺も!! 俺もそう思う…!!」

「アノムさんには不思議な力があるし…何より俺達と同じ意志を持つ魔物というのは貴重な存在ですよ…!!」

「…まぁ、丸聞こえだとは思うが、そう言う事だ」


 ヴァロンの背後に居る手下達が、小さな声っぽい声で叫ぶ。それに対し、ヴァロンは恥ずかしそうに頭を抱えている。


 あー…なるほどな。まぁ、確かに。俺たちにとっても、それはありがたいかもしれない。


 俺達にはサーナが居る。同族の知り合いというのは居た方が良いだろう。


「まぁ、良いけどさ」


 もしかしたらこっちも発展させれば、位階が上がりやすくなるかもしれないしな。


 俺がそう呟くと、ヴァロンと手下達は高く手を上げて喜んでいる。

 さっきまでヴァロンは嬉しくない風だった癖に……ったく…オヤジのツンデレは可愛くないんだが。


 俺はこの光景に冷や汗を流しながら、これからの事を考えるのだった。


 まずはこっちも人間がまともに暮らせる環境を整えて位階を上げて…ふふっ! こんなにDPがあれば色々できる事が多過ぎるな!!



 ダンジョン主たまんねぇっ!!



 俺はそんな事を思いながら天井を見上げ、明るい未来を想像するのだった。

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