第25話 ルイエの魔法系統

 ガギルとジャルデが魔法工学の勉強をしている中、あっという間にワームの散歩兼食事時間になり、俺はワームと外に出た。


 後ろからはホワイトラビットが雪原での散歩に。


「キュッ!!」

「「キュキュッ!」」


 ホワイトラビットリーダー(ルイエにぶたれた奴)が2人のホワイトラビットを連れている。


「…」


 そしてその後ろから、不機嫌そうに眉を顰めているルイエがついて来ていた。


 凄く怖い。


 だが何故ルイエが来ているのか、これは俺がルイエに3日に1回は運動をしろと言ったからである。


 魔王城にいる時は基本訓練、演習、戦闘と休みがほぼなかった。その為俺やガギル、ルイエも適正な体重を保っていた。


 今の俺は散歩、ガギルは食事も忘れ魔法工学の勉強、ルイエは睡眠…。


 詳細を聞くまでもなくルイエは太ってきている。


「ほら、ルイエ。少しは運動した方が健康に良いんだから頑張れ」


 まぁ、決して太って来ているとは言わないが。

 ルイエはそれに深く眉間に皺を寄せながら、俺の隣へとやって来る。


 そこまで機嫌を悪くしないで欲しいが…ほら、ホワイトラビット達が怖がっているだろう? よく見ればワームも食事中に関わらず震えてるだろ? やめてやってくれ。


「気持ちいいなー」

「……まぁ、悪くはない」

「だろ? これからは3日1度は散歩して貰うからな」

「…うん」


 寝起きだから素直なのか。いい返事である。


「アノムって、何か好きなものとかあるの?」


 突然ルイエが聞いてくる。

 俺が散歩に連れ出すから、何か好きな物でも俺にあげて逃れようって気だな?


 そう思った俺は、少し悩んだ後答える。


「ないな」

「…そう」


 シーンと静寂が訪れる。


 不意に俺は思う。


 …俺ってルイエと毎日なに話してたっけ?

 俺らは普段4人で生活している。ガギルにルイエ、今はそれにジャルデやサーナもだ。


 皆んなそれぞれ特徴があり、よく話しかけてくれるのだが、寝起きのルイエとは中々話さないし話が続かない。


「逆にルイエは何が好きなんだよ」


 いつも話すとしたら男であるガギルと多い俺、そして子供っぽい一面を見せるエンペルの遊び相手になる俺って言うのが多い。


 ルイエは基本寝てるから何を話せばいいのかも分からなくなってくるーー


「アノム」


「ん?」


 ちょっとテキトーに話していたからか? 聞き間違ったかもしれない。


 前を向いて話していた俺は、横にいるルイエに視線を向ける。


 すると、ルイエと視線が重なる。


 ルイエは笑ってーーー


「うそ」

「は?」

「だから、うそ。本当だと思った?」


 ルイエは小首を傾げる。


 こう言う冗談も言えたのか…と、ルイエの新たな面を見て驚く。


「はぁ、何と言うか…」

「ん?」

「すげービックリした」

「でしょ? また言うからね」


 ルイエはそう言うと、俺の前を歩いていった。


 ルイエは俺が思ってるよりも曲者かもしれない。




「ただいまー」

「ただいま」


 ワームの食事、ホワイトラビット達の散歩が終わり、俺達は洞窟へと戻ってきた。


『お、帰って来たな』


 それにジャルデが反応する。


「何だ? 何か用か?」


 ジャルデなら空中でフヨフヨと浮かんでいるか、ガギルに勉強を教えているかだ。


 珍しい。


『アノムのことではない。私が用があるのはルイエの方だ』


 ジャルデがルイエを指差す。


「私に何か用? 私、もう寝たいんだけど?」


 目が覚めたのか、ルイエの口調が滑らかだ。


『少し調べさせて貰うぞ』


 そう言うとジャルデはルイエへと手を翳した。

 あれはサーナの魔力病を治した時と似ている。何をする気だ?


 そんな事を思っていると、それはすぐに終わった。


『うむ。これは使える』


 ジャルデが笑う。それにルイエが眉を顰める。


 何を言ってるんだ?


「どう言う事よ?」

『いや、ガギル作成の目処が立ったぞ』

「本当か!?」


 ジャルデが言ったと同時に、ガギルが奥の部屋から走り出て来る。


『サーナは攻撃系統、ルイエは回復系統、何れはこれが作れるぞ』

「おぉっ!!!」

『まぁまだ魔法を使えない此奴らでは無理だがな』


 ガギルはジャルデと魔法工学の教科書Ⅰを見て、ニヤニヤと盛り上がりを見せている。


 本当に何なんだ…。


 俺はその2人の不気味さから距離を取るのだった。

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