第15話 流石は幼馴染

「よし、じゃあ今日もワームの散歩をするか」

「私は此処にいるー!」


 エンペルが結界の中を跳ねる。

 折角出来た結界、遊び場だ。そこを使って遊びたいのだろう。


「分かった。2人はどうする?」

「俺はついて行く」

「私は結界に残るわ。寝たいし」


 聞くと、ガギルは一緒について来て、ルイエは結界の中で寝るらしい。

 耳栓もあるからエンペルが遊んでいても問題なく寝れるんだと思っている事が、ルイエのルンルンとした表情から読み取れる。


 最近はこの時間はずっと散歩してたからな。


「じゃあ俺達は行くか」

「おぅ」

「ギ」


 俺達はエンペル、ルイエと久しぶりに分かれると洞窟から離れた。




「アノム」

「ん? どうした?」


 暫くし、洞窟から距離が離れた所でガギルが歩きながら話しかけて来る。


「…お前が何を考えているのか、俺には分からない」

「え? どうしたんだ? いきなり…」


 珍しいな…何か用があるか、次は研究施設を設置してくれとでも言って来るのかと思ったんだが…。


 ガギルは真面目な表情で此方を見つめる。


「聞いてくれ…お前が俺達の事を気にしてくれているのは分かっているつもりだ」

「…」

「ただ、俺達はパーティーだ。仲間で、友達で…何より幼馴染だ。全部を全部抱えなくても良い」


 ガギルは此方から目を離さずに言う。

 言い終わった後も暫く此方を見つめる。


「1人じゃ無理があるだろ。アイツらに無理に言わなくても良いだろうが、俺には言っても良いんじゃないか?」


 ガギルは訴えかける様に言う。


 ガギルからこんな事を言われるとは思わなかった。ガギルが言ってる事は恐らくジャルデの事だ。俺が、ジャルデの事を皆んなに言うか迷った時の顔で、もしかしたら分かられたのかもしれない。


 いつも研究研究で、皆んなの事なんて見てないと思っていた。

 しかし、小さな頃から魔王城で育って来たからだろうか。


 大人の力を使わずに生きて行く事に、少しでも協力の意を見せていきたいとでも思ったのか…。このガギルの気持ち…受け取らざるを得ないな。


 俺は少し口角を上げながら、ジャルデの過去、そしてそのジャルデが先程のレイスだったかもしれない事を言った。




「ーーーって事なんだ」

「…」


 俺達は歩きながらそう言い終わると、ガギルは頭を掻きながら遠くを見つめる。


 そして数秒、空を見ながら考えて。


「流石に過保護過ぎないか? 俺達はもう親の元を離れて過ごしているんだ。それぐらい言っても…」

「そ、そうか? お、怒られたりするかもしれないぞ…カスイさんとか…アリシャさんとか…」

「……言わない方が良いかもな」


 俺達の親も大概だが…どっちも過保護だからな…。

 俺とガギルは共に青褪めながら、そんな会話を続ける。


「ギギ」

「お、そろそろ良いか?」


 そんな事を思いながら歩いている内に随分時間が経ち、辺りが暗くなっている。そしてワームの食事も終わり、俺達はあっという間に山岳の麓まで来ていた。


「大分来たな」

「あぁ、これは早く帰ってやらないとアイツらが心配するかもしれないな」

「そうか? 案外呑気にしていると思うが…」


 そんな軽口を叩きながら、中腹まで戻ろうと踵を返そうとした時。


「ギギギギギッ!!」


 ワームが最初に会った時の様な、威嚇音を発した。

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