第12話 エンペルの遊び場

 それから何もなく2週間が経ち、朝方に俺達は貯めに貯めた141 Pをどう使おうと相談をしていた。


「研究施設があった方がこれからの生活をもっと豊かにだな…」

「高級羽毛布団しかないわ!」


 まぁ、見事にその意見が割れている訳だが…。


 因みにガギルは自分が研究をしたいが為の研究施設を、ルイエは睡眠用の高級羽毛布団を欲している。


 欲望に忠実で何より…しかしもっと直ぐに皆んなが使え、役立つ物を俺は作りたい。


「んー…」


 2人が我先にと言い争いをしている中、エンペルだけ唸り声を上げているのを見た俺は、エンペルへと問いかける。


「どうしたんだ?」


 問いかけると、エンペルは大きく息を吸い込んだ。


 そして。


「遊びたーーーいっ!!!」


 エンペルの声は洞窟中に鳴り響き、耳の奥からキーンという耳鳴りがする。


 そして俺、ガギル、ルイエ、全員が耳を押さえて跪く。


「遊びたい遊びたい遊びたい遊びたい遊びたーーーいっ!!!!!」


 そうか…。


 俺は騒ぎ立てるエンペルを尻目にしながら思う。



 エンペルは縛られる事を極端に嫌う。


 俺達が何をするにしても、俺がこれをしてはいけないと言うと、好奇心からかしてしまうし、戦闘をしている時でも、エンペルが綺麗な花を見つけたりするとフラフラと吸い込まれる様に其方に行ってしまう。


 言うなれば、エンペルは少し子供っぽい所がある。


 まだ俺達は大人と言える歳では無いが、その中でもエンペルはダントツだ。



 魔王城から出てずっと移動を強いられ、この北の山岳地帯アルベックに来てからも、暖房を付けてからも、皆んなでワームを連れて散歩をしているし、それ以外は霊王の洞窟でボーッと過ごす日々。


 それにこの2週間は何も無く、同じ様な日常が過ぎた。


 あまりの縛りと変わらない毎日によっぽどストレスが溜まっていたのだろう。


「あーそーびーたーいーっ!! あーそーびーたーいっ!!」


 エンペルの遊びたいコールは止まらずに、何度も洞窟内に響き渡る。


 それを聞いている俺以外の2人は、もう勘弁してくれと言わんばかりに目を回している。


 これだとずっと叫び続けているし、2人にもキツイ、そう判断した俺はエンペルに話し掛ける。


「分かった分かった!! 今回はエンペルが遊べる様な物を作ってやるっ!!!」


 そう叫んだ瞬間、エンペルが叫ぶのを止める。


「…ほんとー?」

「ほ、本当だ! だから少し落ち着け…」


 俺は汗を流しながら、大人しくなり小首を傾けるエンペルを鎮めると、ボードを操作してエンペルが望みそうな物を探す。


(エンペルが1番ストレスを感じている事は、全部が全部、皆んなと同じ行動をしなければならない事だ…)


 遊ぶ場所が欲しい…洞窟の中にもう1つ暖房(小)を付ければ今度から二手に分かれる事は出来るだろう、けど…。


(外に出て自由に遊びたいんだろうなー…)


 エンペルの方をチラッと見る。

 そこにはエンペルを慰めるガギルとルイエの姿。


 2人もそれなりに我慢してるのは確実、1人になる時間がないってのは少しストレスかもな。


(んー…探したところでいっぱいあるし…俺だけじゃ詳しくも分からない所もある。いっそダンジョンに聞いてみるか?)


 そう思った俺は、ダンジョンへと聞く。


「どうにかして外で遊べる様に出来る建築物はないか?」


 どうせなら驚かせた方がエンペルが盛り上がりそうだからと、小声を心掛ける。


【あります。現在のDPで建築する事が出来る、また外で遊べる様になる建築物を表示しますか?】


「あるのか……頼む」


【…ダンジョン主からの懇願を受託。表示します】


 俺は目の前の半透明のボードに目を向ける。


「おぉ…」


 *****


 結界(極小) 120 P


 *****


 そこにはとんでもない物が表示されていた。

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