第10話 霊王ジャルデの経緯
「あの…なんかごめんな」
俺は皆んなに言う。
「あの霊王ジャルデの洞窟…? どう言う意味なんだ? 此処の洞窟がジャルデと何らかの関係が…」
「あ、あのジャルデの洞窟ー…こ、怖いよぉー…」
「な、何かあるかもしれない…」
「ギ…」
1人を除いて怯えている様で、ワームでさえプルプルと震えている様に見える。モンスターの勘という奴なのだろうか。
俺は皆んなの事を考えてから発言すれば良かったと後悔する。
そしてこれは、もう少し時間が経たないと話は出来ないと判断した俺は、目の前のボードに目を移す。
【この洞窟の滞在時間が規定に達しました。暖房(小)を北の山岳地帯アルベック、"霊王の洞窟"に設置します】
何度見ても霊王の洞窟である。
どうやって此処まで来れたのだろうか、それ以前にジャルデは此処で何を?
そんな事が思い浮かぶ。しかし今それを考えてもキリがなかった。
俺にはそれよりも、気になる一文があった。
「この洞窟の滞在時間が規定に達した、か…」
霊王の洞窟と書かれた前の一文を見つめる。
(……その後に霊王の洞窟と書かれているって事は、ダンジョンである場所に規定の時間滞在すると、その場所の詳細情報が得られる…そんなところか?)
まぁ、これも聞いてみれば分かるか。そう思った俺はダンジョンへと規定時間の事を聞くと…。
【その場がダンジョンである限り、規定時間に達すると、その場の詳細な情報が表示されます】
「やっぱりか…!」
俺は目を見開く。
「なら、この"霊王の洞窟"の詳細を教えてくれ」
【ダンジョン主からの命令を受託。霊王の洞窟の詳細情報を記します】
*****
霊王の洞窟
かつて霊王と呼ばれた凄腕の魔導師、ジャルデが死亡した洞窟。魔物、人間にも恐れられ、その奇異な視線に嫌気が差したジャルデは、死に際に魔法を使って自分の持っていた研究書、魔導書、古文書等と言った貴重な物を洞窟の隠し部屋へと隠し、自分の死体さえも隠し部屋に隠す事で何の証拠も残さずこの世を去った。
この実力と才能を持つ者は、これ以降生まれる事はないだろう。
*****
「……うわぁ」
思わず感嘆の溜息が出る。
全部の文がヤバいが、1番ヤバいのが最後の一文だ。
"この実力と才能を持つ者は、これ以降生まれる事はないだろう"
つまりこれは、もうこの世にジャルデ以上の魔導師が生まれてこない事を示している。
「…世界から恐れられ、1人でバレない様に死んでいった…最強の魔導師、か…」
何て残酷な世なのだろうか…。
その者が強者だとしても、その時代、環境によっては弱者に成り下がる。
だけど、そんな世界を変えられる程の力を持っていた人間の筈なんだ。
「ダンジョンにこれ以降は生まれないと言われた才能と実力…力でどうにか出来た筈なのに…何でお前は此処で死ぬ事を選んだんだ…」
俺はボードから洞窟に目を向け、見渡した。
『…』
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