第14話 美少女二人とスポーツ



 夏休みになってからちょうど十日が過ぎ、ついに待ちに待った優菜と雪ちゃんと遊ぶ日がやってきた。


 この日のために毎日プランを練ったが、結局大していい案も浮かばず、みんな運動が好きということで近くのトレーニングセンターでスポーツをして遊ぶことになった。

 小学生のうちは小遣いも少ないし、当然バイトなんかも出来ないので常に金欠のような状態だ。そんな中で金を使わずにできる遊びなんて公園で遊ぶかトレセンで遊ぶか、もしくは家で遊ぶかといった少ない選択肢から選ぶことになる。

 俺は金を持っているので、俺が金を全て出せば遊びの幅は広がるだろう。しかし、小学生の初デート(仮)で金持ちをちらつかせるってよくよく考えれば嫌な奴にも見えかねないので自重することにした。

 そういう部分は追々さりげなくアピールすることにする。


 そんなわけで現地集合となり、昼飯を済ませて午後一時過ぎに家を出た俺は集合時間の三十分前に目的地に到着した。小学生相手とはいえ、ここで遅刻や遅れて到着するよりは印章が良くなるだろうとの判断である。

 そんな思惑の中待つこと二十分、彼女達がついに現れた。


「おはよう凛。もうついてたんだね」

「えっと、一応初めましてになるよね。宮原雪だよ。今日は無理言って中に入れちゃってもらってごめんね?」


 練習試合の時は気づかなかったが、雪ちゃんは小学生の頃からやはり美少女と言っても過言ではない容姿をしていた。

 高校の頃には更なる成長を遂げて巨乳美女になるのだが、その頃には既に中学の頃から付き合っている彼氏がいたらしい。もっともそれは前世の話だ。

 今の彼女が気になっているのは多分俺。でなければ態々親戚に頼んでまで俺と遊ぼうとはしないだろう。それはまだ恋愛感情ではないだろうが、それについては追々好きになってもらうということで、今は友達から始める。


「全然気にしないでいいよ。知ってるだろうけど俺は古城凛。よろしく宮原さん!」

「うん、よろしくね! 後、うちのことも下の名前で呼んでくれていいよ! 私も凛君って呼ぶから!」

「そういうことなら、雪ちゃんって呼ばせてもらうよ」


 握手とまではいかないが、互いに笑顔で自己紹介をし終わったところで、早速受付を済ませて遊ぶことになった。

 優菜はバレーボールクラブに通っているスポーツ少女であり、運動神経はかなり高い。

 雪ちゃんは言わずもがなバスケをしているスポーツ少女で、ベストメンバーには選ばれていないものの、優菜と同じくらい身体能力があるとのこと。

 そんな運動神経抜群の美少女二人とスポーツをして遊ぶなんて、前世の俺では到底考えられなかった。


「凛君相変わらずドリブル上手いなー」

「聞いてはいたけど、凛ってバスケ上手すぎしゃない?」

「そりゃ地区で一、二を争ううちの男子チームにほとんど一人で勝ったような選手だからね。むしろこれくらい当然なのかも?」

「なんで雪まで疑問系なのさ?」

「まあ、何となく?」


 二人の美少女が俺についての話題で盛り上がっている様子を横目に見つつ、軽く遊ぶように色んなドリブルテクニックを練習する。

 残念ながらこのトレセンのバスケゴールは大人用の高さなので、今の俺には高すぎてシュート練習には向かない。

 そもそも三人で遊びに来てるのに一人で練習しているのも可笑しな状況である。

 二人が俺がバスケをしているところを見たいとか可愛いことを言うので、その要望に答えた結果だから仕方ない。

 後でバトミントンに誘って楽しむつもりなので、それを励みに巧みなハンドリングテクニックを練習して見せつける。


 今の俺はプレイ中、無意識化で常時未来知を発動できるようになっている。それに加えて射精による基礎スペック向上で、バスケの技術も練習試合の時から比べてかなり成長した状態だ。

 そんな俺がフルパフォーマンスでバスケのテクニックを披露すれば、高感度アップ間違いなし! そんな思惑の元表情は真剣にドリブルスキルを遺憾なく発揮。


 ちらっと横目で二人を見れば、顔を赤らめながらぽけーっとした表情でこちらを熱心に見つめているのが見えた。


 意識させるくらいには至っていると見ていいよな? これで何も思っていなかったらそれはもはや詐欺と同義だろう。


「ねえねえ、凛君って学校ではどんな感じなの?」

「どんな感じって?」

「いや、勉強とかできるのかとか、女の子にモテるのかとかだよ」

「勉強は凄くできるよ。私と同じクラスになってからしか知らないけど百点以外取ってるの見たことないし」

「運動もできて頭もいいとか完璧すぎない?」

「うん、カッコいいよね。だから学校でも結構女の子にモテてるよ。結構凛のこと好きって言ってる人知ってるし」

「うわー、ウカウカしてらんないねこれは」



 途端に小声で話し始めたので何を言っているのかわからないが、表情や楽しげな声色から悪いことではないと思う。

 あわよくばどんなところが好き? とかそういう甘酸っぱい会話であることを切に願う。



「ねえ、そろそろみんなで遊ばない? バドミントンとかで」


 彼此三十分ほど一人でバスケの練習をするという謎時間に興じていたが、流石にこのままでは三人で遊びにきた意味がなくなるので、こちらから提案する。


「そうだねー、うちらもそろそろ身体動かしたくなってきてたし、やろっか!」

「おっけー! じゃあ準備しよう!」


 ポールとネットを用具室から運び出しセットする。

 ラケットとシャトルを受付で貸してもらい、早速バドミントンを興じる。


「とりあえず俺は一旦休むね!」

「わかったよ。じゃあ雪、ジュースでもかけて勝負する?」

「いいね! じゃあ十点先取で!」


 そこから女の子同士のバドミントン対決がスタートした。

 格好がラフなので、スマッシュしたりした時に腹チラしたりして、目の保養には十分。一言言うなら眼福です。

 スポーツ美少女の汗を流す姿をこんなに間近で見られて感無量だ。

 このまま仲良くなれれば、こんな姿がいつでも見れるようになるんだから、もっと積極的に仲を深めていこう。


 そんな邪なことを考えながら二人の勝負の審判もどきをして、結構な接戦の末に最後に勝利を手にしたのは雪ちゃんだった。


 よほど勝てたのが嬉しかったのか、飛び跳ねて喜び、俺の方に駆け寄ってきたハイタッチ。キャッキャと喜ぶショートカート美少女、最高だぜ。


 その後、悔しそうにしている優菜を慰めつつ、一対一を交代交代で三十分くらいやり続け、最後に女子二人と俺のハンデマッチをやって大人気なく勝利してバドミントンを終えた。


「あー楽しかったー」

「結局凛には一回も勝てなかったけどね」

「それね! 凛君強すぎ!」


 全ての試合である程度力をセーブしつつも勝利した俺は多少の恨みがましい視線を浴びる羽目になったが、美少女のジト目はご褒美以外の何物でもないので計算の上だったりする。

 その後もバレーや卓球をしたりと遊べるだけ遊び尽くし、結局四時過ぎまでスポーツで汗を流し続けた。


「じゃあ、また遊ぼうね凛君!」

「次は夏休み明けかな? またね、凛!」

「うん、優菜も雪ちゃんも気をつけて帰ってね! それじゃあバイバイ!」


 二人が迎えきてきてくれた親の車に乗って帰るのを見送り終え、俺もチャリンコに跨り帰路に着く。


 今日だけでも雪ちゃんとはかなり仲良くなれたと思う。

 最初に多少あった距離もほとんどなくなり、呼び方こそ変わっていないが最後には距離感がバグってるのではないかと錯覚するほど物理的に近すぎるような気もした。

 それに対抗して優菜の距離感もおかしくなるものだから、最後の方はもはや擬似的なハーレム状態と言える状況だった。


 そんな距離感で二人が接してくるものだから、俺は今日一つの真理を見つけた。



 美少女の汗の匂いはフローラル。


 嘘だと思うだろうが、本当の話だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る