第21話 救世主参上ッ!



 俺様は最近、獣人をとっ捕まえることに成功した。

 名前は、ジャル。なかなかいかした名前だろ? これは俺様のイニシャルから考えた名前なんだ。

 まぁ、そんことはどうでもいい。


 俺様は今、鉄格子の奥で歯ぎしりしながら睨みつけてくる獣人どものことを眺めに来たんだった。


「出してくれぇ〜!!」


 獣人は俺様のことを見て勘違いしたのか、そんなことを叫んできた。


「うるせぇんだよ!! もうすぐてめぇらは俺様の金に変わるんだ。今さら喚き始めても意味ねぇんだよッ!!」


 なんでこいつらは睨みつけてこねぇんだよ! 

 俺様にさらわれて、奴隷にもされて悔しくないないのか!?

 

「出せ〜!!!!」

 

 俺様が釘を差したにもかかわらず、まだ喚いてる。

 こいつらは奴隷という立場をまるっきりわかっちゃいねぇ。

 一回、見せしめに適当なやつ殺しとくか?

 そうしたら少しくらいは静かになるだろ。


「お頭!! 大変です!!」


 俺様がナイフを探そうとしていたとき、扉が急に開けられた。


 来たのは俺様の右腕、ラルク。なんでこいつ、そんなに慌てながらきたんだ? あっ、こいつらの喚き声がうるさかったりしたのか?


「どうした!?」


「見張りのものが倒れてました!」


「なんだって!?」


 なんでだ!? なんで倒れていたんだ!?

 ここは、俺様たちしか知らない秘密の場所のはずだ。まさか、俺様の奴隷がここいにいるのがバレたのか?

 まずい! 早くこんな場所から逃げねぇと。


「はっ! ざまぁみろ!」


「いい気味」


「お前らは黙ってろッ!!」


 クソっ! 奴隷のくせに生意気な……。 

 今すぐにでも喉を切り裂きてぇ!


「侵入されたってことか?」


「は、はいっ。おそらく、侵入者はもうこの建物の中にいる模様です!!」


 なんでだよ。

 この建物は小さい。入り口は迷路みたいになってるがそれ以降はただの建物。すぐにここに辿り着いてしまう。なにか手を打たなければ……。


「ギャミリオンと、シャミズリでそいつらのことを殺しに行かせろ!!」


「な……あの凶暴な奴らを解き放つのですか!? そんなことしたら、この建物ごと破壊されますよ!?」


「黙れぇ!! てめぇにそんなこと言われなくてもわかってんだよ……。俺様がそうしろっつってんだッ!! いいから言うとおりにしろ」


「はいっ!」


 クソっクソっ! 

 なんで俺様の思う通りに行かねぇんだよ! 


 でも大丈夫。ギャミリオンとシャミズリは性格こそ野蛮だがスキルが他の誰よりも、戦闘向けで侵入者をたやすく殺してくれるはずだ。

 侵入を許してしまった俺様たちはもうこの手しかない。


「ギャミリオンとシャミズリってこいつらのことか?」


 ラルクの後ろから知らねぇ男の声が聞こえてきた。

 まさかこいつが侵入者か!?


「誰だてめぇ!!」


 俺様は問いかけた。

 すると声の主は、問いかけに反応するかのようにラルクのことをチョップで気絶させ前に出てきた。


 俺様は手に持っているものを見て驚愕した。両手に持っていたのは、体から力が抜けているギャミリオンとシャミズリだ。


 ま、まさかやられたっていうのか??


「ん? 俺か? そうだな俺は……救世主様だッ!」


「救世主、だと……?」


 こいつは一体何を言ってるんだ……。まさか俺様が知らないだけで、そういうのが最近出てきたのか……? 


 俺様が、目の前で変なことを言い出した男をのことを見て考えていると……。


「ついに来てくださったのね!」


「救世主様ぁ〜! 大好きですぅ〜!」


 奴隷たちは鉄格子の間から手を出して、男のことを嬉しそうに見ていた。

 

「え? 何その反応……」


 若干、男は奴隷たちの反応に戸惑っているかのように見えるがおそらくこれは俺様のことを油断させる罠だ!


「どうやらお前はこの商品たちと知り合いみたいだな……。そうか、助けに来たんだな?」


「いやぁ〜、知り合いじゃないけどな……」


「そんな嘘信じられるか!! 敵なら容赦はしない!!」


 俺様はナイフで切りつけようとした!

 だがそれは急になにかに止められた。


「ちょっとまて。お前が獣人たちを襲って奴隷にしようとしている親玉だよな?」


「あぁそうだ。俺様がこのくせぇ野蛮人を奴隷にした親玉さッ!!」


 はっ! 言ってやったぞ!

 さぁ、俺様のことを恐れろ。


「そうか……なら俺も容赦はしない」


 男は何もなかったかのように言ってきた。


 なぜだ! なぜ恐れないんだ!!

 てめぇみたいな奴隷みたいなクソ生意気なやつ、殺してやる。


「ハァッ!!」


闇底ダークリア


「な、なんなんだ!?」


 地面が少しずつ沈んでいき、体に黒い物体が絡みついて動けなくなった。


 か!

 クソっ……これだから人間は嫌いなんだよ!


「どうだ? 自分より下だと思っている人たちに見下される気分は?」


「クソっクソっクソっ! 離れやがれッ!」


「やぁ。小悪党、ジャルくん。ようやく会えて嬉しいよ」


「誰だてめぇ……」


 俺様の前に立ったのはゴツい男。

 こんなやつ、見たことがねぇ。なんなんだ? それに今こいつ俺様たちのことを、って言いやがったな!


「俺はこの国のギルドマスター。なんで、ギルドマスターがお前のような者の前に来ているのか疑問だろう? 実はな、国からお前のような小悪党の始末も頼まれてんだわ」


 ギルドマスター……? 

 そんなことよりも……。


「小悪党と言うなッ! 俺様は悪党様だッ!」


「どうする?」


「まだ少し抑えておいてくれ」


「はいよ」


 男たちは俺様の言葉なんて聞く耳を持っていない。

 クソっ! なんなんだよこいつら!!


「これから、お前がしてしまった罪について言い渡す」


「はっ! いつもふんぞり返ってるギルドマスター様が自警団の真似事かよ」


「まず奴隷売買、計5回。そして住居侵入、計11回。窃盗、計6回。こんだけだ」


「……え? それだけなのか?」


 ギルドマスターじゃないほうの男は、間抜けな顔をしながら俺様のことをことを見てきた。


 はっ! そんだけのわけないだろ! 俺様は小悪党じゃなくて悪党様だぞッ!


「あぁ。今、確認ができているものはこれだけだ。というよりかは本当にこいつはただの小悪党だからな」


「小悪党、言うなッ!!」


「さぁ一緒に行こうか」



  *



「いやぁ〜……これにて一件落着。今日も濃い一日だったなぁ〜」


 あれから捕まえられていた獣人たちに移動費や、買い物のため200万リースを渡して馬車に乗せて故郷に帰らせた。


 お金だけあげてあとは面倒をみないのは不誠実だと思うけど、獣人たちに大丈夫だと言われたので渋々宿に戻ってきた。


 そして水浴びを済ませ、あとは寝るだけという状況になっている俺はベットの上で寝そべっていた。


「ロンベルト様の立ち回り、完璧でした!」


 ミラが俺の体をまたいで見下ろしながらそう言ってきた。


「そ、そう?」


 俺そういうこと言われると勘違いしちゃうのに……。


「ロンベルトしゃん! ぎゅ〜する!」


「はいはい……」


 急にキャシーが俺の横に寝転んで抱きついてきた。


 一体どうしたというのだろうか。今日は獣人の人たちにかまりっきりで、二人のことを構えなかったので甘えてきているだろうか?


 俺がそう思うことにしようとしたら、この前みたいなアルコールの匂いが鼻に入ってきた。


「って、なんで酔ってんだ?」


「うへへ……私もぎゅ〜するの!」


「シアも酔ってるじゃん……」


 シアも酔っていて同調したのか、キャシーの逆サイドから寝転んで抱き向いてきた。

 なんかこの子も酔うとキャラ変わるんだな。もっとクールで一匹狼みたいなイメージがあったんだけど。


「な!? 二人ともずるいのです! 私もぎゅ〜なのです!」

 

 キャシーとシアが抱きついたところを見たミラは嫉妬したのか、正面から抱きついてきた。

 耳が嬉しそうにピコピコ動いていてかわいい。


 あぁ〜……ハーレム最高!

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