第14話 おしゃけでいちゃいちゃ!



「SSSランク迷宮攻略おめでとう。あんど、俺は冒険者ランクAに昇進。キャシーとミラは冒険者ランクCに昇進したことに……」


「「「乾杯!!」」」


 迷宮管理委員会の女が帰り、すべてのことが片付いたので俺たち三人は祝賀会と称して酒場で乾杯をした。


 この酒場は女神の飲み物とかいう変な酒場。

 ちなみに俺もキャシーとミラと同じくここに来たのは初めて。ここは酒や食べ物が1000リースからしかないので、成功した冒険者が来る場所とも言われている。


「いやぁ〜。まさか一気にこんなにランクが上がるなんて思いもしなかったよ」


「ふふん! そんなことはないのれす! ロンベルト様だったらこれくらい当たり前なのれす!」


 顔を真っ赤に染めたミラが、ジョッキを勢いよく机に叩きつけながら言ってきた。


「いや、当たり前じゃないからね?」


 もし当たり前に、俺がこんなふうにトントンと冒険者ランクが上がったら一瞬でSSSランクになる。


 まぁ、ミラは今日仲間になったんだし俺が一ヶ月ずっと下積みだったこと知らないもんな。好きな人を、過大評価してそう思いたくなる気持ちもわからなくはない。けど、そんなこと大声でいったらニラーみたいな暇人冒険者が突っかかってきちゃう。


 よし! ここは俺がちゃんと言わないとな……。


「はっ! おバカな獣だこと」


 俺が注意しようとしたら、これまた顔が真っ赤に染まっているキャシーがミラのことをバカにするように言い放った。


「な、なんだってぇ〜なのれす! もう一回言ってみおなのれす!」


「何度でも言いますよ? おバカな獣だっこと!」


 あぁ〜……。こいつらって酔ったら面倒くさくなるんだな。これからは、あんまり酒を飲ませないようにしよう。

 俺は、今まさに喧嘩を始めようと睨み合っているキャシーとミラを見てそう決意した。


「ふがー!!」


「きゃ!! 何するのよ!!」


 ミラがキャシーの体に飛びかかった!

 それも、料理が置いてある机を飛び越えて。


 ま、まぁ女の子同士でイチャイチャするのも見たいんだけどそれ以上暴れられると、せっかくの美味しそうな料理が地面に落ちてしまう。


「そのへんにしてくれよ〜」


「おっ! あなたってまさか、で冒険者ランクAになったと噂になってるロンベルトさんですか!?」


「ん? そうだけど?」


 俺はそう言って後ろを振り返る。

 そこにいたのは、肌がよく焼けている男。右目に黒い布が被さっている。服は、ゴツい鎧を被っていていかにも冒険者っぽい見た目。


 俺はこんなやつ知らない。どこかの、変なギルドマスターみたいに初対面だ。


「握手してください! ファンです!」


「握手なんて別にいいけど……」

 

 俺がそう言って手を合わせると男は、その手を両手でねっとりと触りながら握手してきた。


 あ、あれ? これって本当に握手なんだよな?


 俺は疑問に思っていると……。


「ほわぁ〜……一生洗いません!」


 と言いながら走っていった。

 もう背中しか見えない。


 こいつ、一体何をしたかったんだ?


「いや、そんなことしたら手がバイ菌だらけになるからちゃんと洗えよ」


「はぁ〜い! ロンベルトさんの頼みなら喜んで洗います!!」


 男は振り返ることはせずに、走りながらそう言っていなくなった。


「何だったんだあいつ……」


 多少なりとも、最速で冒険者ランクAになったからそういったファンなるものが来てほしいとは思っていたけど来るのはこんな変人ばっかなのか?


 俺はてっきりもっと、女の子にちやほやしてくれるものだと思ってた。まぁ、まだ俺がAランクになったのは今さっきのこと。これからファンがたくさん増えると信じよう。


「ずるいでしゅ!」


 俺の目の前にミラの顔が出てきた。


 顔はさっきより赤くなっていて、体の重心がとれていないのか顔をフラフラと横に揺らしながら俺のことを見ている。

 

「酔ってないか?」


「酔ってなんかいましぇん! われはおしゃけが強い獣人なんれすよ! バカにしないれくらさいなのれす!!」


 ミラは俺の顔につばを吐き散らしながら言ってきた。


 まだ、飲み始めて少ししかたってないのになんでそんなに口の中が酒臭いんだよ。それにもう、滑舌も回らなくなってるじゃん。


「ミラぁ〜……。ロンベルトさんにくっつく過ぎですよぉ〜! 私もギュッするぅ〜!」


 キャシーはそう言って後ろから両手を回して抱きついてきた。


 いや別にミラはくっついてはないよ!          

 そう言おうとしたけど口が……口が開かない!! くそっ……。まさかこれは、サキュバスの呪か……?

 って、こんなことしてたら収集がつかなくなるな。 


 少し前のキャシーはこんなにデレデレしてなかった。って、ことは酔っているのか。

 かわいい! 酔ってデレてるキャシーかわよすぎる! 


「ちょっと二人とも……」


 今すぐに盛りたいところだけどここは酒場で、今は祝賀会の最中。それはまた後でいい。


「ほらここに美味しそうな肉があるぞぉ〜」


「肉!! われのにくなのれす!!」


 そう言ってミラは俺の前からいなくなって、肉にかぶりついた。


 ふぅ〜。なんとかうまくいった。あとは、後ろで背中に頭をスリスリしてるキャシーだけなんだが……。


「ロンベルトさぁん」


 キャシーは俺の体に抱きつきながら目の前に移動してきた。顔が近くて、鼻息が聞こえてくる。


 こ、こんなキャシーの前で冷静でいられそうにない。なんとか誤魔化さないと。


「なんだ? キャシーも肉食べたかったのか?」


「ふふふ……そんなんじゃありまぁせん!」


「――んッ」


 これは……キス。

 俺はされるがままに舌を受け入れた。


「うふふ。これでロンベルトさんは私のものです」


 キャシーは舌なめずりをしながら言ってきた。


 あ、あれぇ〜?? 酔ったキャシーって結構Sっ気強くなるのぉ〜?? まぁSっぽいキャシーもまた魅力的だな。


「んなぁー! われがにくを食べてるときにぬけらけするなんれ!? 許せないれす!」


 ミラはそう言いながら俺の横に来た。 

 そして顔を近づけていき、


「――ちゅ――ちゅ――ちゅ!」


 キャシーのキスに対抗するかのように、ほっぺに何度もキスをしてきた。尻尾がブンブンと振っていて、楽しそうのが見てとれる。


 キャシーみたいに一方的にされるのもいいけど、ミラのキスは俺のことが大好きだというのがよく伝わってきてこれもまたいい。


「何回してるんですか! 私は一回だけだったんですよ!」


「そんなことわれが知ったことらないのです!」


「はぁ〜!?!?」

「なぬ〜!?!?」


 俺が二人のキスの余韻に浸っていると、また喧嘩を始めるような勢いで睨め合い始めた。


 これはもうダメだな。


「二人とも、そろそろ部屋に戻ろうか?」


 そうして早くも祝賀会は終わり、続きは3人でベットの上で祝二次会を始めたのであった。

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