第13話 迷宮管理委員会



「で、なぜFランク冒険者であるにもかかわらず冒険者立入禁止と書いてある看板が立てられていた迷宮に入ったんですか?」


 場所は冒険者ギルド、ギルドマスターの部屋。

 目の前に座っている女は、迫力のある目つきで問いかけてきた。

 

 まったく、女性だってこと忘れちゃうぐらい怖いよ。

 なんでこうなったかは少し前に遡ることになる。



 迷宮が崩壊し、なんとか逃げれた俺たちの前にいたのは彼女だった。


 話を聞くに、なんと彼女は迷宮のランク付けをする組織の人らしい。彼女がたまたま迷宮が崩壊しているところを見て、ギルドであれやこれやありいっそ一番上の人間同士で話そうということになり今こんな状況になっている。


 ちなみにキャシーとミラは外で待ってもらってる。もし、俺が処刑判決を受けられたら可愛そうだからな。それほど、彼女がいる迷宮のランク付けをする組織は強大なのだ。


 まぁ、俺は何がなんだかまだ理解できてないけど。なんか、やばい状況だってことはピリついた空気で察することができる。


「い、いやぁ〜たまたまなんじゃないですかねぇ〜」


 俺の隣に座っているギルドマスターは、少し茶化して許してもらおうとしてるんだな……。


 この人、結構考えてるんだな。見た目はムキムキでいかにも我が道を行くような人なのに。

 ちなみにこんなこと思ってるけど初対面。一度も話したことなんてない。


「たまたまで済む話ではありません。迷宮ランク特定不可能と書いてある迷宮は我々、迷宮管理委員会のものとなっています。その中に入った時点で処刑だということは確定しているのに、あまつさえ魔石を売るなんて……」


 ……え? 中に入っただけで処刑が確定してるの?

 じゃ、じゃあその中で手に入れた魔石を売って崩壊させちゃったかもしれない俺って処刑以上のものじゃん!! 


 この女、見た目はできる人っぽいけど言ってること怖ぁ〜……。


「……売っちゃたのぉ?」


 ギルドマスターはゆっくりと俺の方に顔を向けて聞いてきた。


「はい。めちゃくちゃ儲かりました」


 うん。儲かった儲かった。

 もう今、嘘ついてもしょうがないよな。うん。

 言い逃れなんてできないんだしいっそこういうときは、開き直ったほうががいいだろ。


「ちょっとすいません。こいつと二人で今後について話をしていいですか?」


 ギルドマスターは馴れ馴れしく俺の首に腕をかけて言った。


 何なんだこいつ。

 もしかして、魔石のおこぼれがほしいのか??


「どうやって嘘をつくのか考えても無駄ですよ? 迷宮管理委員会をなめないでください」


 女の目力がさっきよりいっそう強くなった。

 こっわ。やっぱこの女めちゃくちゃ怖いわ。首を傾げながら言ってくるから余計に怖い。


「ははは……なめるわけないじゃないですか……」


 ギルドマスターはそういって俺のことを立ち上がらせて、部屋の隅まで一緒に移動した。


「なんですか?」


「なんですか? じゃねぇよ!! お前まさか、開き直って何もかも言おうとしてないだろうな?」


 ギルドマスターは、俺の体にトントンと人差し指を当てながら聞いてきた。


 この動作、英雄譚に出てているワンシーンでみたことがある。師匠が弟子に言い聞かせるときのだ! 少しされるのを夢に見てたんだけど、こんな状況でされるとは………。

 

 あと意外と痛いし。力加減、考えてほしいな。


「いえ、しようとしてます。というかもう少し喋りました」


「おいおいおい。勘弁してくれよ……。お前、俺たちも一緒に道連れにする気かよ」


 道連れ……?

 俺は処刑になったとしても、スキルがあるから逃げることができるのでそんなに深く考えていなかった。


「……まじ?」


「まじのまじのまじだよ! もしお前が正直に全部言ったら、お前の冒険者ギルド管轄の俺の首まで跳ねられちゃうんだよ!」


 ギルドマスターは小声だけど、気迫のある声で俺に訴えかけてきた。 


 首……。まぁギルドマスターのことなんにも知らないし、尊い犠牲ってことにしとけばいいかな? いや、これってさすがに残酷すぎるか?


「あと、外で待ってるお前の女も一緒にだ」


「それはいけないな」

 

 それはだめだな。

 ギルドマスターが処刑になる分は全然かまわないんだけど、キャシーとミラが処刑されるなんて許せない。


 彼女たちは俺の「生きる伝説最速計画」の中にあるハーレムメンバーの二人だ。絶対に失うわけにはいかない。


「あぁ、いけねぇな。そこで俺は、あの女のことを欺くあることを思いついた。ちょっと耳かせ」


「おう」



  *



 私は迷宮管理委員会、ランク特定不可能迷宮の監視役タリッザ。今、二人の男に責任追及をしている。


 ランク特定不可能迷宮。それは迷宮管理委員会の偉い人が見てもランクが未知数の迷宮。これを冒険者の中では、人類では到達不可能と言われている冒険者ランクに称しSSSランク迷宮と言っている者もいる。まぁ、言い方はそれぞれある。



 私は、新しくできたそんなランク特定不可能迷宮が

たまたま近くにあったので部下を連れてどんなものかと見に来た。だが、見に行ったときにはもうなくなっていた。

 崩壊していた。崩壊というのは、迷宮が攻略されたということ。なので、ランク特定不可能迷宮が攻略されたことにより私は未だかつてない状況に混乱していた。


 迷宮の崩壊時にいたのは、男一人と女二人。迷宮から逃げてきたかのように横たわっていた。必然的にこの者たちが迷宮を攻略したと言うことになる。

 もし、見つけたのが業務時間外だったら称賛したと思う。だけど今は仕事できていた。彼らがしたことは確実に歴史に残ることだと思うのだが、ルールはルール。


 もし、ルールを破ったりして上司にバレたから私はクビになってしまう。そんなのはゴメンだ!


 私はそう思って、彼が所属する冒険者のギルドマスターを同席させて話をすることにした。ギルドマスターに一緒になって責任を取ってもらおうと。だけど、それはうまくいかずにギルドマスターと、彼はなぜか小声で話してる。

 

 はぁ〜……。この状況、どうしたらいいんだろう。


「んん……いいかな?」


「はい。どうぞ」


「俺は勝手に、ランク特定不可能迷宮に入ったことを認めます!」


 迷宮から逃げてきたかのような男が頭を下げて言ってきた。


「な!?」


 やった! やった! 

 認めてくれた! これで、私はクビにならないで済む。


「すみません。全ては俺の身勝手な言葉のせいです」


「どういうことですか?」


 ギルドマスターが変なことを言い出した。


 身勝手な言葉……。ということは、迷宮から逃げてきたかのような彼は自分の意志で迷宮に行ったのではなく、ギルドマスターに何らしかの言葉に惑わされていて行ったということになる。


 むむむ?

 状況がよくわからなくなってきたぞ?


「俺はさっきまであなたに彼、ロンベルトのことなんて知らないと嘘をついていました」


 ギルドマスターは私よ顔を伺うような顔をしながら

なし始めた。


「……続けて」


「俺は彼のを買って、力を試すということであの迷宮をおすすめしたんです。なので、責任は俺にあります! どうか! どうかスキルに恵まれているロンベルトだけは勘弁してください!!」


 ギルドマスターは机に何度も、頭を打ち付けながら懇願してきた。


 スキル……? いくらスキルが優秀だったといえ、勝手に迷宮に入って力試しなんてしたらだめ。でも、ギルドマスターが自分の命をかけるほどのスキルとはどんなものなのだろうか?


「そのスキルはどんなものなんですか?」


「俺のスキルは闇です。自分の体や周りのものを闇に変えることができたり、闇を使って攻撃することもできます」


「それはっ……!」


 スキルはもともと人間の力を引き出すためにあるとされている。もしそれが本当だとしたら彼のスキルはとてつもなく強大なものとなる気がする。


 私に、未来有望な冒険者を裁くことができるのだろうか。もしここで処刑と言い渡したら、逆に私が上から処刑を言い渡される気がする。処刑なんて、そんなリスクを犯してまでするものじゃない。


 ランク特定不可能迷宮に勝手に入って、魔石を売ったことは重罪なのだけど……。


「そういうことなら、今回は見逃してあげます」


「「ありがとうございます!」」


「ただし、彼の冒険者ランクはそれ相応に上げなさい」


「はっ! かしこましました!!」


 私はその言葉を聞いて、冒険者ギルドから出ていった。


 はぁ〜……。これから、ランク特定不可能迷宮についての後処理をしないと……。

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