戦争について

僕は思うよ。

なぜ人が人を傷つけなければならないんだろう。

みんなが仲良くできないくらいのことはわかる。

でも話し合えばいいじゃないか。


考えても答えが出なかったので、僕は町の歯医者さん、白瀬先生に聞いた。

先生は悲しげにつぶやく。


「争いがなくなるのは、無理なんだよ」


僕まで悲しくなった。

先生は続ける。


「戦争っていうのは嫌いあって起こるんじゃない。どちらかが勝つことでどちらかが得をする。そんな理由もあるんだよ」


僕は戦争が複雑なものなのだと思った。

先生は最後まで悲しげだ。


「だから戦争は終わらないんだ」


僕は先生を眺めた。

戦争が起きたら先生みたいな人も殺されてしまうのだろうか。

そう思うと涙が止まらない。


先生は診察室のカーテンを開いた。

窓をのぞくと、となりに歯医者さんのクリニックが見える。


「ごらん」


となり歯医者さんは患者さんであふれている。

無人の白瀬歯科医院とは対照的だ。

先生は歯ぎしりをしている。


「あの野郎!俺の手でぶっ潰してやる!!」


先生の眉間のしわは深い。


〜戦争が終わるということは、敗者が根絶やしにされたということだ〜

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