○○○

緑のキツネ

第1話 ○○○

2月14日、バレンタイン。この日は女子にとって最高の日だ。好きな人にチョコを渡す。

そして1ヶ月後に返してもらう。

そんな楽しい日は1年に1回しか無いだろう。

でも、今年のバレンタインは今までとは

違った。全てはTwitterの一件の私のツイートから始まった。



明日はバレンタインだからチョコ恋占いを

やった笑笑

彼氏に明日送るわ!!

#チョコ恋占い #バレンタイン

#明日はバレンタイン#リア充


このコメント欄には大量の???があった。

それもそのはず、チョコ恋占いって何だよ!?そんなコメントが大量に届いていた。私はチョコ恋占いのルールを書いて投稿した。



みんな知らないの?

ルールは簡単だからやってみて。

①○と□のチョコを10個ずつそれぞれ作る。

②◯と□のチョコを1つしか入らない小さな箱に詰める。※これで◯と□の区別がつかないようになる。

②チョコが3つ入る箱に目を隠して

入れていく。

③その結果であなたの気持ちがわかる。

※自分はその結果を見てはいけない。

相手にあげてから確認する。


○が0個・・・大嫌い

○が1個・・・友達

○が2個・・・好き

○が3個・・・大好き


そこからこのチョコ恋占いが瞬く間に

広がっていった。私が考えたチョコ恋占い。やらないわけにはいかない。そんな思いからチョコレートをコンビニに買いに行った。でも、私はバレンタインのチョコなんて作った事がない。どのチョコを使えば良いかも分からなかった。どうしよう……。


「バレンタインのチョコですか?」


後ろから爽やかな声が聞こえた。

振り返るとそこには1人の青年が立っていた。


「やっぱりチョコはミルクチョコレートが

良いと思いますよ」


「ありがとうございます……」


「頑張ってくださいね」


「はい」


そう言って彼はレジに戻っていった。

カッコ良かったな……。名札には太田俊おおたしゅんと書かれていた。

チョコレートを買って家に帰り、

早速作ることにした。まずはチョコレートを溶かすことから始めないと……。

試行錯誤して2時間、ようやく○と□のチョコを

作ることに成功した。後は目隠しをしてチョコを入れるだけだ。神様……お願いします。

彼氏ともっと仲良くなりたい。

そう願いながら3つ入れて箱に入れた。





次の日、私は朝早く学校に行った。

私の彼氏は三上亮太みかみりょうた

同じ高校の1年2組だ。

去年の12月から付き合っている。付き合った最初の頃は毎週デートに行っていたのに……。最近は話すことすら減ってきた。


「亮太ー」


教室に入ると亮太は端の席で

静かに本を読んでいた。


「おーー美優!!おはよう」


「おはよう。これ……」


亮太の机の上には本命チョコと書かれた袋が置いてあった。それでも、私は持っていたチョコを亮太に渡した。


「ありがとう。嬉しいよ」


「最近流行りのチョコ恋占いをやってみたの。

まだ自分も見てないの……」


「そうか……。良いか開けるよ」


亮太は楽しそうに箱を開けた。

しかし、それは地獄の始まりだった。


「何だよ!!これは!?」


□□□


「お前、俺の事嫌いなのか?」


「いや、これは占いだから……」


彼は黙って教室を出て行った。

何で私っていつも運が無いんだろ……。

初詣のおみくじも大凶……。宝くじも当たらない……。もうだめなんだ……。このまま彼氏にフラれるのか。待てよ……。

彼と何で付き合ったんだろう?

そもそも、私は本当に彼のことを好きなの?

彼と付き合ったきっかけは些細な事だった。





12月25日の朝、彼から突然電話が来た。


「今日の夜、公園で会わないか?」


そう言われた。

私は行くかどうか迷ったけど……。

暇だったし……。


「良いよ」


と返事をした。

そして、夜になり、多くのカップルが歩くのが見えた。街はイルミネーションで彩り初めた。

そうだ……。今日はクリスマスだった……。私はクリスマスであることをすっかり忘れていた。そんな日に私は彼と会うことを決意した。

心臓の音が少しだけ速くなった。こんなリア充しか集まらない日に私たちは集まっても良いのか?


「おーい美優」


彼の声が聞こえてきた。


「今日は来てくれてありがとう」


「うん……」


「これクリスマスプレゼント」


袋に包まれた大きな箱をもらった。


「開けてみてよ」


「うん」


開けてみるとそこには

ウサギのぬいぐるみがあった。

これは今流行りでどこに行っても

置いてないぬいぐるみだった。

そして、私の大好きな物だ。


「ありがとう!!」


「それとその手紙が俺の気持ち……」


ウサギのぬいぐるみの耳の部分に手紙が付いていた。私はそれを取ってゆっくり中を開いた。

その手紙に書かれていたのは、



大好きだよ



彼の想いが表れていた4文字だけだった。


「俺、お前の事が好きだ。

付き合ってください」


私は人生で初めて告られた。恋も知らない私に……。もしこのチャンスを逃したら……。

次は無いかもしれない。私を好きになってくれる人なんてこの世界にもういない。

このまま振ったら彼はどんだけ悲しむんだろう。こんなに頑張ってぬいぐるみを探してくれた。きっといろんな店を回ったに違いない。

どうしよう……。考えようと思ったその時、


「はい」


口が先に出てしまった。それから毎日遊ぶようになり、私も彼のことを好きになったと

思い込んでいた。でもこれは……。





学校が終わり、

家に帰りながら振り返っていた。

今思えば、全て嘘だったのかもしれない。

私は彼のことを好きだって事も……。

気づくのが遅かった……。私の涙が雪のように溶けて消えていく。どうしよう……。あの日、告白された公園のベンチに座り、頭を抱えた。このまま彼と別れたら良いのかな。でも、『俺、お前の事が好きだ』と言う言葉が頭から離れない。チョコ恋占いなんてしなければ……。私はずっと彼と楽しく過ごせたかも知れないのに。


「何してるの?そんな所で」


どこかで聞いた事がある声がした。

前を見るとそこにはあの時の店員の太田さんがいた。


「私、彼の事を好きじゃ無いのに……

付き合ってしまって……。

どうすれば良いかわからないの」


「それに気づけただけでも良いと思うよ。

でも、彼は本当に君の事を

好きだったのかもしれない。

人の恋で弄ぶのは人として1番良くないと思う」


「そうだよね……」


「まずは謝らないと……」


「分かった。ありがとう」


私は彼の家に走り出した。

ごめん……。涙を流しながら走って行った。


ピンポン


「何だよ!!

俺に本当の気持ちを伝えに来たのか?」


「ごめん……。あのチョコ占いは本当だよ」


「え……」


「私、涼太のことそんなに

好きじゃなかったの……」


「今更、何言ってんだよ!!」


「今更でごめん……。これお詫びの……」


コンビニで買った1000円ぐらいのチョコレートを渡した。


パチン


私の頬と心に深く刺さる1発だった。

物で補えるわけが無いよね。私の事を本気で好きだったんだよね。ごめんね。私は友達としてずっと好きだよ。でも、私も1つ言わせてほしい。


「ねえ、私よりももっと好きな人がいるんでしょ?」


私は薄々気づいていた。ずっと授業中、私じゃなくて私の隣の席を見ていた事を。


「いや……お前の方が好きだよ」


「もう嘘はつかなくて良いよ。自分に正直になってよ」


「ごめん……」


扉を閉められた。チョコだけは彼の元に届いていた。これで良いんだ……。これで……。


『今日の夜、公園で会わない?』


『俺、お前の事が好きだ』


別れたら別れたで今までの思い出が

フィードバックしてくる。ごめん……。何回も謝りながら自分の家に帰った。





次の日も私は泣いていた。

学校も病気だと仮病を使って休んだ。

私の心は罪悪感と振られた悲しみで心はボロボロだった。気晴らしにコンビニに向かうと

いつもの店員が待っていた。


「いらっしゃいませ」


彼の笑顔に私の悩みは飛んでいった。





翌年のバレンタインデー。

恋占いをする人は1人もいなくなった。

それもそのはず、それが原因で私のように別れた人が増えたからだ。でも、私は今年も挑戦することにした。今年こそは……大丈夫。

おみくじは大吉だった。

チョコをランダムに3つ選び

コンビニに向かった。


「俊、持ってきたよ」


「ありがとう」


俊は目を輝かせながら箱を開けた。


○○○

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○○○ 緑のキツネ @midori-myfriend

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