まさに清き祈りの物語

県庁で働く祈の夫、吉継が怪しげな教えに傾倒したことで始まる、物語です。
始まる、と躊躇うのは拝読してこそ分かります。
この物語はとにかく主人公である祈が強いです。冷静で頭が切れ、何をするべきかの道筋を見極めることの出来る女性です。
ある時を境として事件が起き始めるのですが、これがまた巧妙です。私は拝読しながら騙されてしまいました。
次から次へと起きる出来事に翻弄されながら真実が明らかになった時、手が震えると共に大きく息を吐いておりました。
ああ、清き祈りだ……と息を吐くと共に、無知であることのおそろしさを改めて突きつけられる物語でした。
人間模様に翻弄され、とある人物の言動に苛々させられ、正体の分からない恐怖に息を呑みながらもどうなるのだろうと読み進める手が止まらない物語です。
清き祈りを知った時、ふと、見上げた先にあったならば、見るのが少し怖くなってしまうような、読後感です。
私は同時に安堵しつつ、すごい物語を読み終えたと放心しております。
人間模様に翻弄されながらも、是非、清き祈りを拝読してください。とてもおすすめです。