最終章 決闘の行方
43話・ラシオス対ローガン 7
二人の決闘を邪魔する者はもういない。
捕縛された審判たちの代わりを務めるのはグナトゥスたち。打ち合わせもしていないのに各々持ち場に立つ。
既に決闘開始から十数分が経過している。
絶対に負けるわけにはいかない。この戦いの結果如何でフィーリアを獲るか、奪われるかが決まってしまうのだ。
ローガンが決闘を挑み、ここまで大掛かりなイベントに仕立て上げたのはメラリアを嵌めるためだけではない。フィーリアに惚れ、本気でアイデルベルド王国に連れ帰りたいと思ったから。
ラシオスが決闘を受けたのは、婚約者に言い寄る不届き者を合法的に叩きのめす機会を逃せなかったから。体力はないが、剣技には自信がある。さっさとカタをつければ楽勝だと考えていた。
しかし、決闘は思いのほか長引いている。
ラシオスは腕を上げるのも億劫なようで、先ほどから木剣を引きずったままだ。一方のローガンは、木剣を振り回す元気はあるが肩で息をしている。どちらも限界が近い。
「ほれ、しゃんとせんか!負けてしまうぞ!」
主審代わりのグナトゥスが側で野次を飛ばすが、二人の耳には届いていない。
「そろそろ終わりにしよう、ラシオス殿」
「そうですね、ローガン殿」
額から頬に流れる汗を乱暴に腕で拭う。
重い木剣を片手で振り回す力が残っていないのか、ラシオスは両手で柄をしっかりと握り、前方に掲げた。ローガンは片手で構えている。それだけで、観客はみなラシオスの劣勢を感じ取っていた。
「行くぞ!」
先に動いたのはローガンだった。
どこに余力を残していたのか、素早く前に踏み込むと、木剣を大きく振り回して襲い掛かる。ラシオスは構えた木剣で攻撃をいなすだけで精一杯で、ほとんど反撃していない。
「これはうちのローガン様の勝ちでしょう」
「さあ、どうでしょうね?」
貴賓席から闘技場を見下ろし、ヴァインは勝利を確信していたが、カラバスは何故か不敵に笑った。
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