超イケメン、イケメン達を召還しイケメン戦隊のようなものを造ってしまう!

齋藤 龍彦

第1話【我は召還士 鳳生神酒三郎】

【あらすじ】

 主人公鳳生神酒三郎ほうしょうみきさぶろうは自らが置かれている現状にまったく納得していなかった。顔はイケメンなのである。だがまるでモテない。「目立てないからモテねーんだ」「じゃあ目立つためにはどうすればいーか?」「そう言や〝男のアイドル〟って5人くらいのグループ作ってね?」という思考の末に、異世界からイケメン達を召喚しイケメングループを作ると決めた。かくして怪しげな術を使いイケメン達を集めたが、召還した本人に問題があるのか誰も彼もどこかマトモではない。しかしともかくも主人公の思惑通りイケメングループは結成された。後はイケメンっぽい活動をするのみ。「それにはやっぱり可哀想な女の子を助けることでしょ!」と主人公は一癖も二癖もあるイケメン達を率いて動き出す。




【主要キャラクターの概要・設定】


 主人公 鳳生神酒三郎(ほうしょう・みきさぶろう)


 とにかく女子達からモテたくてモテたくてしょうがないという性向を持つ。名門私立校『慶墺至塾けいおうしじゅく高校』一年で当該校が附属高のため難関大学慶墺至塾けいおうしじゅく大学への進学もほぼ確約されているのだが、それは周囲も全く同じなのでなんのアドバンテージにもなっていない。能力的には勉強も並、運動も並で、上背もイマイチ。残された取り柄は『顔』くらいしかなかった。かくして〝目立ちたい〟というただそれだけの目的で怪しげな術を使いイケメン達を召還するド素人な召還士となる。なお当然顔はイケメンで、チャラいのになぜかモテない不可思議系イケメンである。



 以下、主人公が召喚した脇役達


     方眼忠一(ほうがん・ちゅういち)


 主人公によって召還されてしまった第一の犠牲者。一見頭が良さそうに見えないが『大日本帝国陸軍・陸軍幼年学校』に在籍する将来の幹部軍人候補で、れっきとしたエリートである。が、成績はそのエリート達の中の下位に甘んじ、いささか挫折気味である。その髪はなぜか丸刈りなどではなくツーブロックのためどこの世界線の大日本帝国から来たのかまるで分からない。今現在は単なる学徒であり正式な軍人になどなっていないが、既に言動が軍人気取りのため主人公から内心で『候補』というあだ名をもらってしまっている。なお当然顔はイケメンで、主人公のチャラさとソリの合わない堅物系イケメンである。




     苑城円胤(おんじょう・えんいん)


 主人公によって召還されてしまった第二の犠牲者。上背もありガタイが良く法衣を身にまとい頭はツルツルに剃り上げられ、その上薙刀という武器を手にしている。その姿は正に僧兵スタイルとしか言い様がなかったが本人に言わせると『薙刀の師範』だという。彼は「薙刀は女子がたしなむ武道なのに女の弟子が一人も来ない」事を悩んでいた。そのナリから主人公から内心で『僧兵』というあだ名をもらってしまっている。なお当然顔はイケメンで、欠点を指摘されると少々キレ易い肉体派系イケメンである。




     氷室聚楽(ひむろ・じゅらく)


 主人公によって召還されてしまった第三の犠牲者(?)。彼は異能力系異世界から召還してしまったらしく手の平から光にしか見えない剣を造り出すことができた。しかも彼には別に彼だけの能力を行使できた。その光の剣が伸縮自在なのである。ここだけ聞けば無敵そうだがしかしその剣の攻撃力は自らの身体で剣を現出させる事のできる同種の相手にしか通用しなかった。しかもそうした相手であっても相手の剣が伸びないのをいいことに相手の攻撃が自身に届かないよう間合いの外まで剣を伸ばしアウトレンジ攻撃しようとするセコさもあった。根っからの〝厨弐病体質〟で自身の造り出す光の剣を『氷刀(ひょうとう)』と名付けている。髪の毛が銀色なので主人公から内心で『銀髪クン』というあだ名をもらってしまっている。なお当然顔はイケメンで、小柄・童顔系の言動残念系イケメンである。




     ピエトロ・ライフル(ぴえとろ・らいふる)


 主人公によって召還されてしまったが、この人物は犠牲者ではないのかもしれない。彼は異世界の紛争地帯から召還してしまった傭兵で、しかも少年兵だった。彼は凄腕の狙撃兵だったため狙撃対象が撃たれ崩れ落ちる瞬間を常にライフルスコープで目撃し続けてきた。その結果、精神崩壊寸前に陥っていたのであった。そのためその世界から逃れさせてくれた主人公にたいへんに感謝している。本名が『ライフル』なので主人公から『ライフルちゃん』と呼ばれるが主人公はどこか鈍感力の持ち主である。だから内心で「ライフルの使い手だからピッタリだ」などと思っている。なお当然顔はイケメンで、精神が少々不安定且つ唯一の外国人顔系イケメンである。




     敷島一刀(しきしま・いっとう)


 主人公によって召還されてしまったがこの人物も犠牲者ではないのかもしれない。彼は『居合』を極めんとして、いずくかの道場へ通っていたところを召喚されてしまった。召還時に抜き身の日本刀を手にしたまま現れたため主人公と他四名からかなりドン引きされ怖がられる。しかしなぜか召還者の主人公に謎の好意を抱きまとわりつこうとする。体型は華奢で髪型はポニーテールそのもの。正真正銘男の筈なのに外見は美少女。なので主人公から内心で『美少女ちゃん』というあだ名をもらってしまっている。なお当然顔はイケメンで、美少女系のイケメンである。(イケメン美少女ではない)






(以下本文——)


 右三十度、同四十五度、同七十度。

 正面。今度は左。

 左三十度、同四十五度、同七十度。


 全身映し出す姿見。足の立ち位置、細かく角度を刻みながら己の姿を確認していく。チェック、チェック、チェック。


 悪くねえ。つーか、どー考えても、どー見てもいい。俺に敢えて欠点らしい欠点があるとするなら身長が一七五に2センチ足りないくらいだ。まだ高一だしせめてあと2センチくらいの可能性はあってもらわないと困る。本当は一八〇は欲しいところだが、ま、アイドルだって全員が全員一八〇を超えてるわけじゃねえ。事実上欠点らしい欠点は無いはず。

 とまれ重要なのは顔で、顔については完璧だ。完璧すぎる。この俺、いや、この僕ぁどう客観的に見ても超イケメンだぜぃ! この鳳生神酒三郎(ほうしょう・みきさぶろう)はな!


 んなのに、なぜ俺、じゃねーや、僕ぁいまひとつモテねーんだ? 世の中どっかおかしーだろ。

 頭だってバカじゃねー。高校は慶墺至塾けいおうしじゅく。そして幼稚舎からの完全なる慶墺ボーイ。むろん附属高だから慶墺至塾大学への進学が確約されている。

 まあ周りも同じだからこれは何のアドバンテージにもなってないとも言えるケドよ、クラスの中の順位が最低ってわけじゃねえ。ただ医学部は無理そうだが……


 いや、だからと言ってここまで女っ気が無いってのがおかしいだろ。医者になれなきゃモテないなんて事はねーよ。


 ……ま、本質的な原因は解っている。おおむね見当がつく。

 俺はいまひとつスポーツ野郎じゃねーからだ。とは言ってもぜってー運動オンチってわけじゃねーぞ。並にしかできねー。並にしかできねーから全然目立たねー。サッカーだろうがバスケだろうがスポーツ野郎の引き立て役になってばかりだ。とかくスポーツ野郎は目立ちすぎる。


 そうなんだよ、もう〝答え〟は出てんだよ。要はどう目立つかだ。

 俺の場合素材に申し分はねえ。だが学力も並、スポーツも並じゃあウチの高校の意識高い系の女どもはぜんぜんっ騒ぎやしねえ。

 既にこうして問題点は把握してある。そして俺には〝どう目立つか〟そのための策も既にこの頭の中にあんだよ。

 そりゃもうイケメン集団を造るに限る!

 アイドルとか見てりゃすぐ解る。ピンでアイドルやってる奴なんざいねー。

 イケメンがグループを造る。そこには乗数効果ってモンがある! 間違いなくある! そしてこの俺がイケメン集団のリーダーを務める。俺以外の他の奴の方が女を集めてしまう危険性はあるが、少なくともグループを仕切ってるとなりゃ注目度は群を抜く。一目も二目も置くってのが普通だろ。間違いねぇ、絶対間違いねぇ。


 ジャア何処からイケメンを連れてくるかと言えば召還よ、召還するしかねぇ。

 〝召還〟なんて言ってると真性のイカレ野郎としか思われないだろうけどよ、現にここにいるんだよ、召還したばかりの第一のイケメンが。




 鏡の前に立ちっぱなしの召還士な一人のイケメン。そのすぐ横に憮然とした顔つきのまま微動だにせず立ち尽くす軍服姿のイケメンがいた。ただ眉が非常に濃い。その彼もまた先ほどからずっと鏡に姿が映りっぱなしになっている——

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